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【韓国核開発疑惑】 なほうさんくさきことども
 前回の記事で 韓国国内のメディアの論調を紹介しましたが,右・左を問わず火消しに必死なのがよく分かります.
 曰く,抽出された濃縮ウランはごく少量に過ぎない.曰く,兵器レベルの濃度には達していない.曰く,韓国政府は自発的にIAEAに実験内容を申告した.曰く,実験が行なわれた当時は違反ではなかった,etc, etc...

 私が今なお疑問に感じている点を整理しておきますと,
  1. 各紙ともさかんに「0.2g」を強調しているが,量が問題なのではない.高濃縮ウランを抽出する能力を持ったこと,それ自体が問題.
  2. 韓国がIAEAの追加議定書に批准したのは今年の2月.2000年のウラン分離実験の事実公表・IAEAの査察受け入れに踏み切るのに 何故半年も掛かったのか.
  3. 実験が行なわれた事実を公表するのに,なぜ実験設備の廃棄を行なっておく必要があったのか.
     朝鮮日報の社説では「核兵器技術を開発しようとしていたなら,原子力研究所が1回きりの実験を行なってから実験装備を廃棄処分する理由は無かったはずだ」と言っているが,これはむしろ逆.やましいことが無いなら,査察受け入れまで関連設備は手つかずのまま残しておくのが筋.廃棄するなら,査察の結果が出てIAEAから勧告を受けた後でも遅くはない.ましてや前述のような韓国報道によれば,今回の実験は「行なわれた当時は違反ではなかった」のではなかったのか.
     今回の韓国のやり方では「進んで申告」どころか むしろ証拠隠滅の疑いは免れない.
  4. 抽出されたウランの濃度について.科学技術部の発表では「平均10%」とのことだが,ここで平均値だけを発表することに何の意味があるか.こんなのは,喩えるなら いつぞやの連続殺人犯を称して「道ですれ違う人をことごとく殺害していたわけではないので危険人物とは呼べない」と言っているのと同じ程度の子供騙し.こういう時は「最高で何%まで達したのか」を併せて公表するのが常識.
  5. 実験が行なわれていたことを政府は本当に把握していなかったのか.実験計画に関する報告の有無については 原研と科技部との間で証言が食い違っているようだが(後日詳述).
 私としては やはり設備の廃棄の箇所が最も腑に落ちません.「実験室レベルでは可能でも これを産業レベルで大規模にやっても採算が合わないから 実験は打ち切ろう」と,そこまではまだ分からなくもない.ただ,それだけで実験装置そのものを廃棄処分する必要は無いはず.
 原研といえば国の機関だそうですから,実験装置の類は全て国の備品なわけで,よしんば老朽化していても 研究員の一存でおいそれと廃棄などできないはず.まして,今回の実験の場合,遠心ではなくレーザーだという.老朽化どころか 韓国全体で見ても何台も無い新型機のはず.それをなぜ廃棄したのか.
 上述の 追加議定書批准から査察受け入れまでの《空白の半年》と併せ,また 実際に設備の廃棄が行なわれた時期がいつなのかがはっきりしないこととも併せ,「査察受け入れは避け難い」という情勢になってから 慌てて泣く泣く廃棄したらしい匂いがプンプンする.

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 日本での報道のされ方に関しては 既に多くの方が書いていらっしゃるでしょうから ひとつだけ.今回 日本メディアとしては真っ先にこの一件を社説で取り上げたのが朝日だったのは 私には少々意外な感じもしましたが,内容を見てみれば「あぁ,結局そういうことね」の一言.
■核疑惑――まさか韓国で、とは ──朝日新聞 社説 2004/09/03
日本政府はこれまで核問題に関して透明性の高い対応をしてきた。ここはIAEAの枠組みをきちんと機能させるためにも、また、日米韓の結束を維持するためにも、積極的に動くべきだ。
 あの朝日新聞が 都合の良い時だけアメリカとの「結束」を持ち出すのは見苦しい,という話は措くとして,朝日が言う「積極的に動く」というのは 「韓国側が窮地に立たされないように 米韓間の仲裁に入ってやれ」という意味でしょう.それは一向に構いませんが,それで韓国にどういう恩を売れます?
 言うまでも無いことですが,日本にとって 今回の一件は 使い方次第ではまたと無い外交カードになり得る.ただでさえ韓国国外の報道では──あいにく日本では少々違うようですが──韓国のやり方を「イランと何ら変わらない」と批判する向きも多い.経済制裁を武器に いっぺん韓国政府にお灸を据えておくには良い機会.どうも朝日が言いたいのはそういうことではなさそうですが.
日本の一部には核保有論もちらつく。韓国の対応次第で、それをいたずらに刺激するのも心配だ。
と,お得意の朝日節に収斂してゆくわけですが,実際に「北だけでなく南までが核開発に手を染めている可能性がある」という事態まで持ち上がっているわけですが,この場合 核武装論は「いたずらに刺激」されたと言ってよいものでしょうか.

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 おまけ.

 今回 現地での記事を漁る傍ら ご近所のblogもあちこち読ませていただいたのですが,その中で 特に印象に残ったくだり ベスト3をを勝手に選んでみました.まだ全文を読んでいらっしゃらない方は 是非先方に飛んでご一読あれ.

◇ 第三位 ◇
日本人にとって都合のいいものだけを見せられ、韓国人にとっても都合のいいソフトしか入れない日韓両国の文化交流は贋物だし、本質を隠蔽する危険なプロパガンダであると言ってもいいだろう。韓国の核疑惑発覚でニューヨークタイムズが昨日の紙面で韓国で10年前に出版され、300万部を超えるベストセラーになった「ムクゲの花が咲きました」に言及していた。

この小説は在米韓国人の物理学者が核開発の秘密を握り殺されるが、韓国が北朝鮮と組んで日本を核攻撃する話。95年には映画化され大ヒット、数々の受賞をしている。こういう映画を紹介しないで韓流もヘッタクレもないのだが、今回の核疑惑の根底にあるものを示唆している。…

 ──「酔夢ing voice

◇ 第二位 ◇
面白いのは「核と聞いたら黙っちゃおれない」の広島・長崎の両被爆地市長が特に声明も出さずに事態を静観している、核反対の市民団体も表立った動きは全然聞こえてこない。
このままなんの声明も活動も起こさなければ「やっぱあの連中は単なる反米の為の反核だったのか」という評価をするしかない。本当の目的を隠す為に手段を目的が如く見せていただけなんだよね。

 ──"Irregular Expression"

◇ 第一位 ◇
実験が実行されたのは金大中政権時代で、
あの人、ノーベル平和賞をもらったけど、
これは返してもらわないとね。

 ──「娘通信♪




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上で引用した朝日の社説の全文控え
 一瞬耳を疑うようなニュースが飛び込んできた。
 韓国政府系の原子力研究機関がひそかにウランの高濃縮実験をしていた。そんな事実を韓国政府が国際原子力機関(IAEA)に通告した。IAEAの査察官が現地で緊急の調査に入った。
 実験はIAEAに全く申告されていない。核不拡散条約(NPT)をないがしろにする行為だ。発電用の低濃縮ウランと違い、80%という高い濃縮度は、核兵器開発を疑われても仕方がない。
 韓国政府は、実験は核燃料の国産化を狙ったもので、得られた高濃縮ウランは極めて微量だと説明した。政府は関与せず、少数の研究者が独断で行っていたとも釈明した。しかし、IAEAとの査察に関する協定に違反している疑いは濃く、この説明では納得できない。
 韓国政府は、速やかに事実関係を調査し、公表しなければならない。IAEAも徹底した究明と対応措置を早急に進める必要がある。
 今回の韓国の行為は、核不拡散体制を揺るがしかねない事態であり、北朝鮮と合意した朝鮮半島の非核化共同宣言にも反する。これでは、核保有を公言する北朝鮮に核の完全放棄を迫る正当性を失うことにもなりかねない。
 韓国ではかつて、朴正煕軍事政権の時に核開発に手を染め、米国の圧力で中止した経緯がある。今回の実験が行われたのは、北朝鮮に太陽政策で臨み、金正日総書記との首脳会談もした金大中前政権の時代だ。
 金政権が自ら核の能力を持とうとしたとは思いたくない。とはいえ、高度な設備や技術が必要な実験を一部の研究者だけで、できるのだろうか。
 心配なのは、北朝鮮の核開発問題を話し合う6者協議への影響だ。北朝鮮が強く求められている核開発の凍結や放棄について、この問題を理由に態度を硬化させるかもしれない。米朝間でわずかな歩み寄りが見られていたが、解決がさらに遠のく可能性もある。
 また、北朝鮮の核問題に結束して対応してきた日米韓の関係が揺らぐ恐れもある。特に北朝鮮に比較的柔軟な姿勢をとる韓国と米国との間には、これまでも距離があったが、今回の問題を機に不信感を強めることが懸念される。
 北朝鮮の核問題解決には日米韓の結束が不可欠である。日米韓政府はただちに協議に入るべきだ。韓国が事実関係を説明するとともに、今後、北朝鮮にどう対応するかの確認が必要だ。ここで3カ国の間に亀裂が入ることはなんとしても避けなければならない。
 日本の一部には核保有論もちらつく。韓国の対応次第で、それをいたずらに刺激するのも心配だ。
 日本政府はこれまで核問題に関して透明性の高い対応をしてきた。ここはIAEAの枠組みをきちんと機能させるためにも、また、日米韓の結束を維持するためにも、積極的に動くべきだ。

by xrxkx | 2004-09-06 21:36 | ◆ 韓国核開発疑惑