【資料】 韓国核開発疑惑: 韓国国内各紙の論調
 先日の韓国の「濃縮ウラン分離実験」をめぐる核開発疑惑に関連して,本日(6日)までに上がって来ている韓国国内各紙の社説を訳出しておきます.
(朝鮮・中央・東亜の3紙については 日本語版をwebで読めるはずなのですが,朝鮮・東亜2紙に関しては日本語版の社説の更新が3日以前で止まったままになっていることもあり,敢えて自分で訳出しておくことにしました)

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[社説] ウラン分離実験 誤解無きように ──文化日報 2004/09/03 12:46 (原文)
 国際原子力機構(IAEA)が 2000年に国内で実施されたウラン分離実験について査察作業を行なっていることがわかり,波紋が広がっている.IAEAは 国内の原子力発電所については定期査察を行なって来たが,研究施設について調査を行なうのは今回が初めてだという.
 科学技術部は2日,この実験について,国内の少数の科学者が ごく少量(0.2g)のウランを分離する科学実験を行なったものと発表した.政府はこの実験が今年2月に批准したIAEA安全措置追加議定書で新たに申告対象に含まれるため既に申告済みであり,これに伴いIAEAの確認査察を受けていると説明した.今回の実験は実験当時には何ら問題なかったというのだ.
 外交通商部も「今回の事案は 一部科学者の一過性の実験であり,関連装置も全て廃棄済みの状態であって非核化共同宣言違反ではない」とする立場を堅持している.国内の科学者らも,研究過程に於いて抽出した0.2gのウランは核兵器開発には全く足りない量であり,特別な意味を持ち得ないという分析だ.核開発とは全く関係ない実験だというのが政府の結論だ.
 かと言って,今回の事態がすんなり収まると見るのはまだ早い.北韓の核開発プログラムが世界の憂慮を生んでいる状況に於いて,様々な推測が惹き起こされかねない.政府はこうした問題点を把握し,IAEAおよび国際社会との協力を通じて事態解決に向かえるようにすべきだ.特に今回の事を契機に南北関係や韓半島の安定に悪影響があってはなるまい.こうした点を踏まえ,政府は可能なあらゆる努力を尽くす必要がある.
 実際,平和的利用の為の核再処理およびウラン濃縮は 国際法上合法的に行ない得ることになってはいる.しかしわが国の場合,「韓半島非核化宣言」によって 発電用核燃料も輸入によらなくてはならない.わが国の科学者らが行なった今回の分離実験も,国産化研究レベルで行なわれたものと明らかにされた.政府は今後発生し得る様々な状況を点検し,生じ得る国際社会の誤解を払拭するよう望む.

[社説] ウラン濃縮 明快な糾明を ──京郷新聞 2004/09/03 18:29 (原文)
 政府が ごく少量ではあるが核兵器の原料となり得るウランを濃縮した事実を公開した.政府は核兵器開発の意図の無い偶発的なできごとだと説明した.関連施設も既に廃棄されており,国際原子力機構(IAEA)に申告,査察も受けるという.核兵器を製造し得るウラン濃縮および再処理施設を保有しないというのが政府の政策だ.従って政府の説明は政府政策と一致する.違っている点は無さそうだ.ウラン濃縮もずっと以前の事でもある.事件は既に終わったと言える.
 しかし,政府の説明があらゆる情況を,あらゆる人々を納得させ得るわけではない.政府傘下の原子力研究所の科学者が単に学問的好奇心でウラン濃縮実験を行なったという点が特にそうだ.冷戦後,核不拡散は全地球的議題となった.ましてや東アジアは核開発ドミノの憂慮が提起されている地域であり,世界が注目して来た.北韓の濃縮ウラン核兵器プログラムが第2の北核事態を招き,韓半島,ひいては東北アジア全体の不安要因となった事実を改めて挙げるまでもない.そして一部の外国では,統一が実現すれば北の核が南韓の物となるものと考え,南韓政府が北韓に断固たる対処をしない(訳註:のはそのためだ)という誤解をしたこともある.
 ところで 研究所の科学者がこうした敏感さを意識せず,政府の承認なしに恣意的に実験を行なった,という説明は明快とはいえない.ウラン濃縮の事実を6ヶ月間IAEAに申告せずにいたことも疑いの素地となりかねない.ひとたび疑惑の目で見れば,あらゆるものが疑惑の対象となっても無理は無い.政府が渋々解明しているという印象を与えてはならない.国際社会が政府の非核化意志・北核解決努力を疑う材料として今回の事件を活用するとしたら これほど不幸なことは無い.政府は説得力ある説明に積極的に乗り出すべきだ.

[社説] 「ウラン濃縮疑惑」迅速に解消すべし ──東亜日報 2004/09/03 19:10 (原文)
 政府が4年前,ウラン濃縮実験を行なっていた事実を国際原子力機構(IAEA)に進んで申告し,集中的な査察を受けている.わずか0.2gのウラン分離実験だったとはいえ,政府が2月に批准したIAEA安全措置追加議定書に伴う申告対象である以上当然踏むべき手続きだ.政府自ら事実を明らかにした以上,これからは「核兵器開発を目指すものではないか」という疑惑を解消すべく最善を尽くすべきだ.
 核については発言権の大きいアメリカが わが国の政府の措置と解明をを肯定的に評価して「これ以上憂慮すべき事案ではない」と表明したのは幸いだったが,安心すべき段階ではない.「濃縮されたウランが微々たる量だったとはいえ,純度は兵器レベルに近い」「IAEAの申告義務に違反した以上,国連安保理に報告せざるを得ない」「責任者を処罰すべき」など,外信報道や原子力関連団体人士らの刺々しい発言が相次いでいるためだ.
 国際社会が「ウラン濃縮」に仰天し,誇張された反応が噴き出している状態だ.核拡散への警戒感が極度に強い昨今の雰囲気を考慮すれば,行き過ぎだと咎めるわけにもいかない.濃縮ウランを用いた核開発の疑惑ゆえに守勢に追い込まれている北韓がどういう反応を見せるかも気がかりなところだ.
 査察結果を待つだけの消極的な対応では,要らぬ誤解が広まる可能性が大きい.日本・中国・ロシアなど周辺国に実験内容を詳しく知らせ,「一部科学者の知的好奇心に端を発した一回きりのハプニング」だということを納得させなくてはならない.必要なら北韓にも関連情報を提供すべきだ.
 大韓民国は1992年「韓半島非核化南北共同宣言」を通じて公開的に核開発を放棄した.核武装を目指しているという後ろ指を指されるのは国家的侮辱に等しい.一刻も早く誤解から脱却すべきである.ウラン濃縮の自発的申告は核疑惑解消の為の模範事例ともなり得るのではないか.

[社説] ウラン分離実験 騒ぎ立てるほどの事ではない ──中央日報 2004/09/03 21:23 (原文)
 韓国原子力研究所が ウラン分離実験を通じて0.2gのウランを抽出したと明らかにし,波紋を呼んでいる.
 国際原子力機構(IAEA)が初めてこの研究所を査察した.
 アメリカ・日本のメディアは「韓国の核兵器開発の可能性」に焦点を当てて大々的に書き立てている.
 勿論,周辺国としては耳をそば立てたくもなるだろう.
 1992年に発効した「韓半島非核化共同宣言」に伴い,北韓は勿論 我々(訳註:南韓)もウラン濃縮施設を保有できないことになっているのに,少量とはいえ濃縮ウランを生産したのである故だ.
 しかし,今回の分離実験はそれほど騒ぎ立てるほどの事ではない.
 核拡散禁止条約などの国際法や非核化共同宣言に違反したわけではないからだ.
 政府および政界は,この点を十分わきまえて国内外的に対処すべきだ.
 国民もまた 過敏反応をするには及ばない.
 2000年初頭に実施された今回の実験は,当時国際法違反ではなかった.
 しかし政府が2月に「実験室での研究」をも申告すべしとした「IAEA安全措置追加議定書」に批准した.
 これに伴って政府が実験内容をIAEAに申告し,査察を受けたまでのことである.
 しかし我々としては,ウラン保有に関する透明性をめぐって周辺諸国が過敏反応しないよう,より細心の外交努力を傾けるべきだ.
 北韓の核問題に神経を尖らせている周辺諸国は,韓国の核プログラムについて敏感にならざるを得ないからだ.
 従って政府は,今回の実験の全貌について周辺諸国に迅速かつ説得力ある説明をすべきだ.
 米国務省スポークスマンが「これ以上憂慮すべき事案ではない」と言及したのは時宜適切だった.
 何より北韓は,今回の実験を口実に6者会談ボイコットなどの攻勢を展開しようとする考えを持つべきでない.
 今回の事件は,濃縮や再処理を行なえない状況を我々がどこまで受け入れねばならないのかという重大な課題を投げ掛けている.
 特に産業面で蒙っている損害くらいは補完し得るよう外交努力を傾けるべき時が来ていると思う.
 核燃料である低濃縮ウランの輸入に 毎年4000億ウォンを費やしている現状を,いつまで放置するのか.

[社説3] 「ウラン濃縮疑惑」早く払拭すべし ──朝鮮日報 2004/09/03 23:00 (原文)
 原子力研究所が4年前にウラン濃縮実験を行なっていた事実が明らかにされるや,一部外国メディアは韓国政府が核兵器技術開発を目指したのではないかと問題視している.
 しかし,レーザーによって放射性同位元素を濃縮する技術は 既に多くの国が保有している.原子力研究所も医療用物質などを分離する為に研究を行なっていたが,採算が合わないという判断が下され,研究を中断したという.ただ,実験装備を解体する以前に研究陣が科学的探究心からウランを対象としてもレーザを用いた濃縮が理論通り可能かどうかを実験してみたというに過ぎない.
 核兵器を製造するには,濃縮ウランが15kgは無くてはならないという.原子力研究所の実験に於いて抽出された濃縮ウランの量は0.2gに過ぎなかった.同じ実験を数十万回は行なわないと核兵器一個を作れないわけだから,この事をおおげさに膨らませて核兵器関連疑惑に飛び火させるのは論外だ.
 ましてや,韓国政府はこうした実験の内容を進んで申告している.実験当時は原子力研究施設は国際原子力機構(IAEA)の査察対象ではなく,申告の義務も無かった.しかし今年2月,わが国がIAEAの安全措置追加議定書に批准したのに伴い,研究用実験も申告対象に含まれ,4年前の実験内容を通報することとなったのである.アメリカ国務省のスポークスマンも「韓国が透明かつ自発的に適切な手続きに従った事実を公開したことにより,これ以上憂慮すべき理由は無いと考える」と述べている.
 何より北韓がこの問題を口実に北核解決の為の6者会談拒否に出ないかが心配だ.核兵器技術を開発しようとしていたなら,原子力研究所が1回きりの実験を行なってから実験装備を廃棄処分する理由は無かったはずだ.政府はIAEA査察チームにこうした経緯を包み隠さず明らかにし,国際社会に於いて提起されている疑問を早く払拭すべきだろう.

[社説] ウラン分離実験波紋 早期収拾を ──ソウル新聞 2004/09/04 00:27 (原文)
 さる2000年に原子力研究所で実施された濃縮ウラン分離実験は,まかり間違えば国内外に深刻な波紋を起こしかねない重大事案だ.政府は事態の深刻さを十分に認識し,迅速かつ効果的な対応を通じて波紋の拡散を防ぐべきだ.未確認報道を濫発する外国メディアに対しても効果的な対処をすべきである.また,疑惑は国際原子力機構(IAEA)の口を通じてしか完全解消し得ないということも念頭に置いておくべきだろう.
 当局の説明は「原子力研究所の研究員らが医療用同位元素であるガドリニウムを分離する過程で 純粋に知的好奇心から濃縮ウランを分離した」というものだ.分離されたウランの量も0.2gに過ぎず,濃度も濃縮とすら呼べないレベルだという説明だ.また,こうした事実をわが国がIAEAに提出する報告書の作成過程で認知し,進んで報告し,それに伴って査察団が訪韓したというのが当局の説明だ.
 それなら敢えて問題とするには当たらない単純事件だ.米国務省も,韓国の自発的申告の事実,および調査過程でわが国政府の協力が全面的かつ完璧だったという点を強調している.ましてやIAEAの訪韓調査が既に終わり,間もなく調査結果が公開される運びだ.こうした文脈に於いて,外信の疑惑提起は行き過ぎの感がある.当局の説明にも拘らず,国際社会に於いて(訳註:当局の釈明が,の意か)不十分と見たり誤解する向きもあり得よう.政府は如何なる疑惑や誤解もきれいさっぱり洗い落とし得るよう,あらゆる事柄を包み隠さず明らかにする姿勢を見せるべきだ.
 最も憂慮される点は,北韓の悪用可能性だ.韓半島非核化と核不拡散体制に対するわが国政府の意志は確固たる物である.また,純粋に知的好奇心の産物であるわが国のウラン分離実験と,核兵器開発にリンクした北韓の場合とは 根本的に異なる.従って,北韓が万に一つでも今回の事件を北核問題とリンクさせ,6者会談に支障を与えようとするようなことがあってはなるまい.同時に,政府は我々どうしで(訳註:韓国国内で,の意か)どんなに潔白を叫んでみても疑惑解消の助けにはならないということを踏まえ,IAEAを通じた公式解明を取り付けることに力を集中させる必要がある.

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by xrxkx | 2004-09-06 20:19 | ◆ 韓国核開発疑惑