【黄禹錫】こいつだけは許せん (2) 盧武鉉には政・官の膿を出し切る覚悟は無いらしい.


今回の一連の黄疑惑をどうやって「一件落着」させるのかについて,
青瓦台は未だ何らの具体的な指針も示せていません.
盧武鉉が今までやって来た事といえば,昨年11/27に自ら青瓦台のwebサイトに載せた文章で国内のMBC叩きムードを憂慮してみせたことと,
12/05に「論乱はもうこれくらいで収まれば」なるコメントをスポークスマンを通じて発表したことだけ.
どちらも盧武鉉本人は良かれと思っていっているのでしょうが(笑),「大統領がそんなことでどうするの」という脱力感たっぷりの仕上がり.
ああいうヌルい態度が 官の一部にはびこる黄疑惑揉み消しムードを助長して来た.



既にご紹介しましたように さる12/23にソウル大調査委の中間発表(2005年Science論文を捏造と断定するもの)がありましたが,
実はその発表の前日に呉明(お・みょん:副総理 兼 科技部長官)がソウル大総長に電話し,調査委の最終結論が出るまで発表を繰り延べるよう要請していたらしい.
呉自身は「自分とソウル大総長とは旧知の仲なので,2005年論文以外の調査もやって まとめて発表してはどうかと勧めただけであり,決して政治圧力をかけたのではない」と釈明しているのだそうです.


一方で,さる4日には 国家生命倫理審議委の委員長を務めていたヤン・サムスンの辞任という事態もありました.
どうやら,昨年11/22のPD手帳「卵子疑惑」報道直前に 黄らに会って対策を協議していた──「弁護士としての資格で」という言い訳付きではありましたが──のが明るみに出たためらしい.



その他,以前からたびたびご紹介した朴基栄(ぱく・きよん)のように官邸内部に溜まった膿についてもお咎め無しでは輿論が納得しないでしょうし,ついでに安圭里・尹賢洙・YTNによる金ソンジョン懐柔に国家情報院(=昔のKCIA)が関わっているとかいった憶測報道(例のカネも国情院から出ているといった類)も飛び交っていたようですが,その辺も含めてどうなるやら.




で,その盧武鉉ですが,黄疑惑についての3度目の意見表明を昨5日に行ったとのこと.
普段は日本語メディアで読める記事は載せないのですが,今回は比較の為に全文転載します.以下:



盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が黄禹錫(ファン・ウソック)教授事態に関連し、「責任がある人には徹底して責任を問うが、その周辺で熱心に働いた罪しかない人には、もっと熱心に研究できるような雰囲気を作ってあげなければならない」と述べた。


盧大統領は5日、ソウル駅三洞(ヨクサムドン)科学技術会館で開かれた科学技術人新年あいさつ会に出席し、このように明らかにした。


盧大統領は「一つひとつ事実に基づき明確に責任を問うべきであり、漠然とした社会の雰囲気で責任を問う形になってはならない」と強調した。


また「政府責任者らも生命工学分野への投資に消極的になることが考えられ、その分野にいる人々の士気が低下しないか心配だ」とし「科学技術分野の発展のためにできる限りの支援をする」と語った。




いかにも盧武鉉が関係者に対する徹底した責任追及を考えていそうな標題のつけ方ですが,中身を読めば「黄本人および姜成根や盧聖一など特に責任の重い数名を処罰して あとはなるべくお咎め無しで済まそう」という意図がありありと見えます.
こういう「標題と本文で丸っきり逆の事を言っている記事」って,日本の新聞や通信社もよく書きますね.


同じ盧武鉉発言が,オーマイでは以下の様に報じられます.
ただでさえ盧武鉉という人の語り口は同語反復が多い上に,それを更にオーマイにありがちな冗漫な文体で書くものですから,「これならいっそ盧武鉉のスピーチ全文をそのまま載せてくれればいいのに」と文句の一つも言いたくなりますが──.



脱線.
念の為説明しておきますと,オーマイというのは大勢の素人が所謂「市民記者」の資格で書いている,韓国には非常にたくさんあるネット新聞の一つで,論調としては全体的にかなり左寄りというか「市民」寄り.もともと民主化運動当時に学生運動をやっていた世代が運営をやっているので どうしてもそうなるのでしょう.
盧武鉉が大統領選に勝利できたことや,一昨年の弾劾後に大統領職に復帰できたことは,こうした「市民」寄りメディアの力に非常に多くを負っています.紙媒体の新聞で言ったら一番近いのがハンギョレ.


実際,私の周囲に何人かいる韓国人留学生などを見ていても 最もよく読むのは大抵が上のオーマイやらノーカットニュースやらといった左寄りネットメディア,およびハンギョレ・京郷新聞といった左寄り新聞のサイトで,保守三大紙(朝鮮・東亜・中央.しばしばこの3紙の頭文字を並べて「チョ・ドンジュン」と人名みたいに呼んだりする)は全くといってよいほど読まない.
理由を訊いても
「チョセンニポはジャイバチュ系ですから」
の一言で片付けられてしまったり(笑).
兵役を済ませてシャバに出て来たばかりの,民主化運動当時にはまだ子供だった世代の中にも,こうした空気は濃厚に見られます.
脱線終わり.





盧武鉉大統領が5日,黄禹錫事態について口を開いた.


盧大統領はこの日ソウル科学技術会館で開かれた「科学技術人新年挨拶会」に参席し,
「(原文註:黄禹錫事態に関連して)漠然とした雰囲気で責任を問うことのないよう,大統領として最善を尽くしたい」
として
「具体的かつ明確な根拠を持って責任を問うて行く行政風土も必要だ」
と述べた.


これは,確実な根拠が無い限り 輿論煽り式の引責論を用いないという意味で,
結局 黄禹錫事態に関連して引責論が提起されている金ビョンジュン・政策室長と朴基栄・情報科学技術補佐官の更迭は考えていないと述べているように取れる.


「漠然と責任を問うてはならない」


盧大統領は「ただ事前から互いに『お前の責任だぞ』と睨み合う雰囲気よりは,事実と証拠に基づいて 責任ある人に はっきりと責任を問うべきだ」として,
「これまで政府の責任を問う幾度かの機会に,私はこの原則を守り努力して来た」と強調した.


続いて盧大統領は,「今後調査結果が出たら,きっと科学界以外にも責任を負うべき分野があるかも知れない(ママ)」とし,
「しかし,その責任も少し科学的に問わねばならない」と重ねて強調した.


盧大統領は
「責任のある人は責任を取ることになるにせよ,その周辺にいるというだけで漠然と罪人になる人々については,わが国民らが引き続き研究に専念し没頭できるよう励ましてほしい」
として
「責任の無い人々がもう一度勇気を奮い起こして研究に集中し没頭できるよう,我々が一度後押ししてあげよう」
と注文した.


また,盧大統領は
「アメリカは9・11事件についての責任を問うのに極めて消極的だった.
そのことが正しかったかどうか確信は持てないが,それにはそれなりの深い理由があったのだろう」
とし,
「我が社会ももう少し落ち着いて運営して行ってほしい」
と述べた.


盧大統領は
「多くの若い科学者らは熱情と希望を持って研究に参与した筈だが,
その中には一部責任のある人がいるだろうし,
一部はただ一生懸命に(原文註:研究を)やった罪しか無い人々もいるだろう」
として
「なのに国民らの視線は何処までが長いのかも分からずに(訳註:是々非々で物を見る術を知らず,くらいの意か)
生命工学界全体に対して疑いの眼差しを向けている」と憂慮した.


続いて盧大統領は「自ずと その方々の研究に対する国民的支援の雰囲気だとか 支援を行う政府の責任者らも その分野(原文註:BT(訳註:biotechnologyのつもりか))で萎縮してしまいかねない」(訳註:「だとか」前後の不整合ママ)として,
「そのことを通じて この分野の周辺領域で仕事をして来た人々の士気まで落ちてしまわないかと心配」だと述べた.


盧大統領は「誰しも麻疹(はしか)に罹りたいとは思わないが,子供を育てる父母らは子供が麻疹を済ませれば喜ぶもの」だとして
「今回の不幸な事も,我々が麻疹に罹るのと同じように前向きに受け止めれば,我々の科学技術が発達して行く上で良い元手となるだろう」と強調した.



ああ疲れた.「 」内だけ拾い読みして下されば結構です.どうせもともと要約にも何にもなっていませんし.


要するに,盧武鉉が最も憂慮しているのは
「黄疑惑に対する処断の線引きの仕方次第では韓国のバイオ産業関連分野に於ける研究活動を沈滞させてしまいかねない」という点であるらしいこと.
一方で,責任を問うべき範囲について盧武鉉本人が何処から何処までを想定しているのかについては,さすがに盧武鉉も口を滑らせなかったようで残念(笑).
上のオーマイの記者氏は「青瓦台内部への責任追及は無し」と見ているようで,この点が先の中央日報の記事の標題から受ける印象とは決定的に異なります.


今回の黄の事態に関して政府の責任を問う声は,MBCや周辺の左派系メディアが煽るまでも無く,これまで黄を擁護していた人々を中心に勝手に拡大して行くことになるでしょう.
黄の2005年Science論文撤回宣言直後から 保守系メディアでも「黄チームにこれまで研究費が何百億ウォン投入された」式の記事が急増したのは,これまで「黄禹錫神話」づくりのお先棒を担いで来た保守系メディアの保身の意味が大きいように思えます.
そうした「黄禹錫神話」づくりの尖兵としてYTNが盛んに槍玉に挙げられている当世,そうした保守メディアにとって 輿論が「カネ返せ」論・政府糾弾に傾くことは都合がよいわけです.


つまりあの狂気じみた黄擁護-MBC糾弾輿論の矛先が一転して政府に向けられ「カネ返せ」論に転化するのは時間の問題でしょう.
その時,政権内部にあって黄禹錫神格化の指揮をとって来た面々および「国民の税金をドブに捨てて来た」科学行政責任者らに対する責任追及と見せしめ的処罰なしで事態を収拾できるやらどうやら.
或いは,意地悪な言い方をさせてもらえば「寧ろこういう敗戦処理投手みたいな仕事こそ盧武鉉向けなのだ」と言えなくもないかも知れませんが.



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by xrxkx | 2006-01-06 13:05 | ◆ 黄禹錫 / 卵子売買