【黄禹錫】MBCの捨て身の戦術 vs. 黄一味のアカデミック乙巳勒約論

韓国国内の輿論の動向について触れたついでに,今回の黄禹錫糾弾の一方の立役者である民労党のことを少し書いておきたかったのですが,後回しにします.
今朝読んだニュースで ちょっと気になるやつがあります.
昨夜遅く上がって来ていたらしいもの.
PD手帳のプロデューサが以前発言したところでは,さる12/06放映予定だったPD手帳の黄禹錫(ほゎん・うそく)編・第2弾では 例のニセ写真疑惑を扱う予定だったらしいのですが,その内容の一部が何処からかリークしたということのようです.
その件そのものは既に日本でも幾つかのblogで採り上げているようですが,これには以下のようなオチが付きます.




[記事差し替え:12月11日午前1時]


黄禹錫教授の〈Science〉論文操作疑惑論乱が重大転換局面を迎えている.
幹細胞腫写真操作疑惑に関連して「重大証言」を行ったことで知られる金ソンジョン研究員のインタビュー記録がメディアに公開された
(訳註:「記録」の箇所,原文では「録取録」となっており,録音テープそのものなのかテキストに落としたものなのかは不詳).


インターネット新聞〈PRESSian〉は10日午後,
米・ピッツバーグ大学に派遣されている金ソンジョン研究員にMBC〈PD手帳〉が10月20日に会って行ったインタビュー記録の全文を,
匿名の情報提供者を通じて入手したとして掲載した.


MBC関係者はこの日,〈オーマイニュース〉との電話インタビューで「この取材記録はPD手帳チームが取材した内容と同じだ」と語った.


取材記録によると,金研究員は「(原文註:幹細胞写真の数を)水増しして撮った」と述べた.
彼はまた「黄教授が(原文註:指示)した」として「(原文註:黄教授が)写真をたくさん作れと言った」と付け加えた.


〈PD手帳〉取材チームが「黄教授が2個を11個に増やせ,そう仰ったのですか」と問うと,
金研究員は「写真をたくさん作っておこうと…」と認めた.
このことは,黄教授チームが患者の体細胞を用いた幹細胞腫2個を〈Science〉論文に11個だとして発表したのではないかという疑惑をもたらすものだ.


金研究員は続けて,黄教授から全ての指示を受けていたとして,この席には姜成根(かん・そんぐん)教授も一緒にいたと証言した.
彼は「(原文註:黄教授が写真を撮れと指示した時)姜成根教授や別の人を通さずに黄教授が直接言ったのか」という〈PD手帳〉チームの質問に
「姜教授も横にいらっしゃった」と語った.


以下は取材記録の関連部分.



韓ハクス(訳註:PD手帳プロデューサ.以下「Q」とする):ライン3個でもって写真を幾つも撮って,11個の写真ということにした,と? それは誰がそうさせたんですか? (訳註:この箇所,原文では質問を2度繰り返している)セルライン3個を与えてステイニング(訳註:標本の細胞を写真撮影用に蛍光色素などで染色すること,だろう)せよと指示したのは,誰が言ったんですか?
金ソンジョン(訳註:以下「A」とする):黄教授が仰ったんです.
Q: 黄教授が 直接仰ったんですか?
A: ええ.
Q: 姜成根教授や他の人を通さず,黄教授が直接仰ったんですか?
A: 姜教授も横にいらしてですね.
Q: 姜教授も一緒にいらして? それは,いつそういう話があったんですか? 11個に増やせというのは いつの?
A: ペーパーの準備をしている最中に.
Q: ペーパーの準備をしている最中に.ということは4月頃ですか?
A: それくらいだったと思います.
Q: その時には,このことが心に負担にはなりませんでしたか? (訳註:疚しさは覚えなかったか,の意)
A: 負担が無いわけがないじゃないですか.
Q: 負担は大いにあったんでしょうか?
A: ….
Q: 黄教授は 何と言ってそうしようと?
A: 写真を多く作れ,と そう….
Q: そうして それを11個として発表すると仰ったんですか?
A: それはペーパーを見る前には分かりませんよ.
Q: 黄教授が2個を11個に増やせ,とそう仰ったんですか?
A: 写真をたくさん作っておこうと….

金ソンジョン「世界的に(波長)拡大するだろう…私の人生は終わりらしい」


このように黄教授から写真を水増しして撮れという指示を受け実行したという金ソンジョン研究員は,
人間としての悩みに陥ったものと見られる.
彼は「やれと言われた通りにやったのか」という質問に「言われた通りにするしか無かった」と打ち明けた.


彼は「私はグレード(原文註:地位)がまだあまり高くないし,そんなことすら言いにくいので…」と答え,
事実上黄教授の指示によって写真操作が行われたことを認めた.
以下は関連部分.



Q: どうですか,今日私に話すことにしたのを悔やんでいますか? 心に負担があったのでは?
A: ええ,私には何の力もありっこないですから.
Q: それなら,やれと言われた通りにやったんですか?
A: 私は言われた通りにやるしか無いんですよ.
Q: それでも,これはあまりにもひどい操作だと,一度でも言ってみたりはなさらなかったんですか?
A: 私はグレードがまだそう大したことないですし,そんなことさえ言いにくいので.

金ソンジョン研究員は今後の波長(訳註:周囲に及ぼす影響のこと)を心配もしていた.
「私が思うに,おそらく論文に入っていた人たち全員が波長があるだろう(訳註:共同執筆者たちも只では済むまい,の意)」と憂慮した.
彼は〈PD手帳〉チームに「国家利益までもお考えにならないといけないだろうと思う」と述べた.
彼は最後に「私の人生はこれでお終いですね」と語った.


Q: どうですか,いま,黄教授の他,私どもは他の人が傷付くことは望んでいません.御本人のお考えはどうですか.
A: 私が思うに,おそらく論文に入っている人たち皆が波長があるでしょう.このまま行けば.先生方(訳註:PD手帳スタッフらのこと.一般に韓国語で「先生」という語だけでは必ずしも教職者や研究者を指さない)が私をカバーする(訳註:PD手帳側が黄「拘束」後の金ら若手研究員らの滞米資格など身分の保証をオファーしたことを指す)とか,そういう事は別の問題で,おそらく全般的に,黄教授のみならず全世界に,ものすごくこのことが拡がると,そのことは先生方が少しお考えになるべきだろうと思います.国家の利益までもお考えになるべきだろうと思いますが,おそらく今やっている事が大きくなりすぎて,そういったこともお考えになるべきではないかと…

(原文註:中略)

Q: 約束しましたように,黄教授はもはやかつての黄教授ではないのですから,これからはそちらにメールを出したり電話をしたりすることは隠蔽になります.どういう意味かお分かりですね?
A: よく分からないが.
Q: あちらと連絡を取ったりすればそれは隠蔽になるんです.
A: はい,仰る意味は分かりました.どうやらこれで私の人生もお終いですかね.


金ソンジョン研究員「拘束云々したので正常な判断難しかった」


一方YTNはこの日,夜のニュースを通じて「金ソンジョン研究員がインターネットを通じて〈PRESSian〉の公開したPD手帳の一部取材記録を見た後でYTNと行った電話インタビューで,PD手帳チームが『黄教授の論文は詐欺と判定され検察の捜査が云々』といった話をする状態で正常な判断が不可能だったと重ねて表明した」と報じた.
その上でYTNは次のように金ソンジョン研究員の音声を伝えた.


「黄教授は拘束されるだろう,論文はニセモノと判定された,多くの資料を持っている,と(訳註:PD手帳スタッフらが)仰って,そういう具合のお話をされまして,そのことはPD手帳チームでもお認めになった内容ですし,私も正確な返答は出来ませんでしたし…」


また,ピッツバーグ医大(訳註:ピ大医学部)の李ヒョンギ教授がYTNにEメールを送り「金ソンジョン研究員が幹細胞2個の写真を11個と操作した」と主張したことについて,金研究員は「一度も会ったことの無い人が何故そんな主張が出来るのか分からないと述べた」と報じた.


従って,金ソンジョン研究員は〈PD手帳〉取材記録の公開以後にも「インタビュー内容は脅迫的雰囲気のもとに行われたもので,論文についての故意の操作は無かった」とする立場を取っているものと見られる.


取材倫理違反を通じて得られたインタビューの取材記録…読者への注意要請


今回公開された金ソンジョン研究員のインタビューは,〈PD手帳〉の取材当時「検察捜査」などへの言及のある中で行われた「強圧取材」論乱を起こした経緯がある.
MBCはさる4日,こうした問題点を認め,国民への謝罪放送も行っている.


従って,この取材記録は一部不適切な取材行為の中で得られたインタビュー内容であるため,読者らの注意が求められる.


しかし,このことを考慮したとしても,金ソンジョン研究員が幹細胞腫2個の写真をどのようにしてたくさんに水増し操作したのかを具体的に扱っているという点で,
論文操作疑惑の実体に近づく上で重要な糸口を提供するものと見られる.


〈オーマイニュース〉はこの取材記録の内容に関連して黄禹錫教授チームの立場を聞く為に連絡を試みたが,連絡は取れなかった.



PD手帳のこうした取材記録をリークした「匿名の情報提供者」というのは,他ならぬPD手帳スタッフ内の人物だと見て 十中八九間違いないでしょう.
12/04のYTNによる「MBC強圧取材」報道以後 MBC内部も動揺し,12/06の「黄禹錫疑惑報道・第2弾」の放映も急遽取り止め,PD手帳そのものも番組打ち切り,といった八方塞がりの状況に追い詰められたPD手帳スタッフ側が 窮余の策に出ようとすれば それしか手が無いわけですから.


一応注意しておきたいのは,「写真はたくさん撮っておこう」だけなら実験系の論文執筆過程ではよくあることだという点.
というより寧ろ,1個のサンプルから1枚の写真しか撮らないなどということは通常あり得ない.
保険の意味でたくさん撮っておくのが普通.
論文ではその中で一番いいのを使うわけ.
だから この黄発言だけでは「水増し」の証拠にはならない.


但し 今回の黄論文の場合,それら複数の写真を別々のサンプルから撮った写真に見せかける細工があったらしい証拠が既に挙がっているので 話は別です.



12/12夜追記:上の「それら複数の写真を別々のサンプルから撮った写真に見せかける細工があったらしい」の箇所,アップしたての時点ではこちらのエントリにリンクを張ってあったのですが,これはマチガイでした.
いまここで問題になっているのは《同一の細胞の写真を何枚も撮って,それらを別々の細胞の写真であるかのように見せかけた例》ですが,リンク先の記事で触れたのは《もともと1枚の写真を別々の細胞の写真であるかのように見せかけた例》なので 意味が違います.
前者の例,どこかにあった筈ですので(2chでやったというのは それ? 見ていないのだけれど)後で見つけ次第追記します.以上お詫びと訂正デシタ

今回の記事の最大の見所は,黄に写真の水増しを直接指示されたらしい下っ端の証言が出て来ているにも拘らず,本人が「あれは脅迫取材の中で言ったことニダ」「どうかしていたニダ」の一点張りで通そうとしている点.
またYTNもまたその線に沿った報道の仕方をしている点.
上の内容は黄にとっては致命的に不利な証言である筈なのですが,それすらも無効にしてしまう切り札として,12/04のYTN報道にあった「脅迫取材」が生きて来るわけです.
「脅迫による証言なので無効ニダ」という言い分,100年前にもよく似たことを言っていたな.
進歩が無いなぁ,かの国の人々は.


なるほど,上の遣り取りにあるように,PD手帳側が金に「今後は黄と連絡を取るな」と釘を刺しているくだりなどは「脅迫取材」との謗りを免れないでしょう.
というより,PD手帳側としては そうやって黄一派同士の間の連絡を絶って断ってしまえば 金のごとき下っ端は各個撃破で陥とせると踏んだのだと見たほうがよいかも知れない.
ちょうど今年1月の朝日の「政治圧力」報道で,朝日が安倍氏には「中川が認めた」,中川氏には「安倍が認めた」とやったのと似た手口で,です.


なお,ニセ写真疑惑で最近新たな証言をしたというピ大教授(幾つかの日本語メディアで匿名で言及があった筈)がいましたが,上にちょっとだけ出て来る李ヒョンギというのが おそらくそれです.
この人物については近日中に少し触れることになるかと思います.



以下は蛇足.
「脅迫取材」にしては この金も負けずに随分あれやこれやと言い返しているように見えるのが面白い.
特に「国家の利益までお考えになるべき」などのくだり,これではどちらが「脅迫」しているのか分かりません.
実際いまやMBC側のほうが土俵際にいるわけですが.



面白いといえば もう1つ.
「そうやってたくさん撮った写真を11個分として論文に載せようと黄が言ったのか」というPD手帳側の質問に 金が「そんなことは論文を見なければ分からない」と答えていますね.
これを信用するなら,この金は論文執筆の過程には加わっておらず,黄に言われるままに実験だけやって,データだけせっせと取っていたということになる.
こういう《兵隊》というのが実験系の現場にはウヨウヨいるものらしい.
要するに自分の研究を宣伝する術に長け,研究予算をガッポリ貰って来て,兵隊をたくさん飼っている奴が勝つ,と,そういう分野というのが 自然科学の研究現場には結構あると.
例えばヒトゲノムなんかもそういう《人海戦術》でやるものらしいですね.
こういう単なる《兵隊》がアメリカの永住権を取るの取らないのといった話でいちいち「技術流出」を心配したり「シャッテンが黄教授の秘法を盗んだ」だのと逆切れしたりしている連中が韓国にも随分いるようですが,そんなのが杞憂に過ぎないのは誰より現場の研究者ら自身が一番よく分かっている筈.



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by xrxkx | 2005-12-11 21:54 | ◆ 黄禹錫 / 卵子売買