【黄禹錫】YTN報道の言う「MBC・PD手帳スタッフによる脅迫取材」とはどういうものだったか

土日(12/03~12/04)に起きた一連の「反撃」により黄禹錫疑惑の勢力図は一変し,それまで一応は五分と五分の勝負をしていたMBCが今では四面楚歌の状態にあることを,前回ざっと見ておきました.


5日以降,MBC-黄の両サイド関係者らによる直接の目立った動きは無く (夜追記:上は大うそでしたT-T 5日に他ならぬ黄禹錫御大が記者会見をやっています),一旦 国会議員やら京畿道知事やら医療関係者やら宗教人やら「イナゴの群れ」やらといった外野にバトンが渡った状態に現在はあるようですので,今のうちに「週末に何があったのか」の全体像を描いてしまおうと思います.


まず,4日のYTN報道の概要を朝鮮日報が伝えていたので見てみます.どうやらYTN報道が流れた直後に大急ぎで原稿を起こしたものらしく,朝鮮日報にしては文章が些か乱れていますが──




「PD手帳,黄禹錫を殺しに来たと言った」 ──研究員ら,YTNインタビュー「論文が贋物だと言ったこと無い」 (朝鮮日報 12/04)

米・ピッツバーグ大の金ソンジョン研究員が口を開いた.ピッツバーグ医大(訳註:ピ大医学部だろう)のシャッテン教授の研究室に派遣され活動中の金氏はYTNとのインタビューを通じ「PD手帳チームは黄禹錫教授の論文が取り消され(訳註:黄が)検察に拘束されるだろうと何度も語った」として「論文が贋物だと言ったことは無い」と述べた.また研究員らは「(原文註:PD手帳チームが)我々は黄教授を殺しに来た」と述べたとも証言した.


4日,YTNによれば金氏はPD手帳が研究員らに検察捜査の件を何度となく持ち出し,研究員らの滞米生活を保障すると述べたと証言した.


金ソンジョン研究員は「(原文註:取材陣が)『我々は黄禹錫教授を静かに引き摺り下ろしに来た』と言った」と放送を通じて述べた.別の研究員は「取材チームが『黄教授を殺しに来た.他の人を傷付けたくはない』と言った」と証言した.


金ソンジョン研究員は「私はその時(原文註:初めてPD手帳側のインタビューを受けてこうした言葉を聴いて)気が動顛していたし,朴チョンヒョク博士もそうした話を聞いた後はとても動顛していた」と述べた.朴チョンヒョク博士もまた,シャッテン教授チーム派遣研究員でPD手帳取材時にインタビューに応じた一人だ.


朴氏は金氏の発言について「(原文註:PD手帳チームは)セルラインが贋物と判明した,その関係で論文は2本とも取り消され,黄教授も拘束されるだろうし,そのあと世の中が変わるだろう,と言った」と放送を通じて補足説明した.


2名はともに「(原文註:黄教授が)検察捜査を受けることになればアメリカでも捜査が行われるかも知れない.知っている事をありのままに話してくれ,と言われた」と放送インタビューを通じて明らかにした.PD手帳取材陣が「黄禹錫教授の論文は贋物だったし,黄教授は拘束されるだろう,一緒に研究をやった研究員らにも累が及びかねない」と語ったというものだ.


YTNはPD手帳取材陣が「金ソンジョン博士の進路について『ソリューション』(原文註:滞米生活についての保障)も出す」と述べたとも伝えた.PD手帳のアメリカ取材が研究員らに対する脅迫と懐柔によって行われたという疑惑を生まざるを得ない説明だ.


金氏は「あの方たち(原文註:取材陣)はずっとセル(訳註:Science論文のときに使った幹細胞のことだろう)が無いと思っておいでだからそういうことを言ったのだろう.そんなわけが無いと私ははっきり申し上げたし,黄教授がテラトーマ4番を撮った(訳註:要するにES細胞製造の成功を実験で確かめたということ)のは事実で写真も再び作業したし(訳註:意味不明)セルラインもあるのは事実だと私が韓プロデューサ(訳註:担当プロデューサの韓ハクスのことだと思うが或いは「あるプロデューサ」かも知れない.判別不能)に電話で詳しく説明したこともある」と明らかにした.


PD手帳チームは取材意図を伏せ,隠しカメラ撮影も行った.PD手帳チームが「生命ドキュメンタリー撮影中」とだけ明かし,金氏が「もしかして今撮影しているのか」と尋ねたところ何の返事もしなかったというのだ.


金氏は自分のメディアに対する対処の未熟さが大きな混乱を呼んでしまったのではないかと思うと釈明した.金氏は放送を通じ「私どもは実験室で勉強ばかりしていたもので,正直に言えば記者の方々や大衆メディアの方々に接する機会が殆ど無かった.私の犯した最も大きな過ちは,その席を蹴って(訳註:PD手帳の取材を拒否して,の意)出て行けなかったことだ」と述べた.


YTNはシャッテンチームに派遣されている朴ウルスン研究員が現在行方不明だと伝えた.匿名で黄禹錫博士チームに卵子を提供したこともある朴氏は,黄禹錫教授側が先月21日に韓国行きの航空券を送ったが帰って来ていないと報じられた.


PD手帳側はYTNの報道について「全ては放送を通じて明らかにする」とだけ釈明した.



この金某なる研究員の言うことが振るっている.
「勉強ばかりして来たものでメディアの方々に接する機会が殆ど無かった」って,まぁ大部分の韓国人はインタビュー慣れなどしていないと思うのですがね.
おそらくまだ若いポスドクか何かなのでしょうが,どうもあまりアタマの良さそうな人物には見えない.


雲行きが怪しくなると急に態度を変える,旗色の良さそうな方に付く,というのは何も此処に登場する金某やら朴某に限らず朝鮮人一般の習性であるらしいというのは,他ならぬ私たち日本人が歴史認識をめぐる諸問題を通じてイヤというほど見せつけられて来ている事ですから今更驚くには当たらないでしょう.
「従軍」慰安婦にせよ「強制連行」にせよ元寇にせよベトナム派兵にせよ,どれ一つとしてこの口でないものは無い.
そもそも,席を蹴って立ち去ればよかったと後悔するほどメディア取材には懲り懲りしている筈のその人物が,同じメディアであるYTNとの取材では随分と饒舌でいらしたようですが,こういう所に彼らの保身に関するもはや本能と呼んでよいまでの小狡さを見てしまうのは「えくぼもあばた」の類でしょうかね.


で,以下はあくまでこういう人物の言うことがもしも事実だとすれば,という仮定の上での話に過ぎませんが,PD手帳取材班が取材中に言ったことが実際どこまで「脅迫」に当たるかというのは微妙でしょう.
「黄が検察に拘束されるだろう」などというくだりだけ見ても,前後の文脈が分からなければ判断のしてみようがありませんし.


ただ「セルラインが贋物だと判明した」というのは少なくとも取材に当たっていた夏から秋に掛けての時点ではあり得ない話ですから,この箇所は完全なハッタリというかカマ掛けだと見てよいと思います.
これについても別段驚くには当たらない.
「話が針小棒大」「ある事無い事言いまくり」というのも朝鮮人の習性ですから.
例えば朴チョルヒョンとか.
あぁ脱線しそうだ(笑).


上の朝鮮日報の記事では,疑惑発覚以来行方不明になっている朴某の件をさりげなく最後に付け加えていますが,この件はMBC側の取材の態度とは全く無関係な話の筈.
こういう安手の印象操作は韓国国内では有効なのかも知れませんが,それが外国人の目にどういう風に映るかを韓国メディアも少しは考えたほうがよい.
私たちから見れば,朴某が行方をくらましている理由なんぞは殆ど自明の事.
ここで韓国に帰るのが危険だからでしょう.
研究者生命云々以前に,下手をすれば本物の命まで取られかねないお国柄ですし.



さて,上のYTN報道の反響については どうやらMBC側は事前に予期していたようで,その日のうちに緊急役員会議まで開き,善後策を協議した模様.




MBCは4日,「PD手帳」が黄禹錫(ほゎん・うそく)教授の胚芽幹細胞(訳註:所謂ES細胞のこと)真偽論乱を取材する過程で PD手帳制作陣の不適切な取材過程(ママ)により苦痛を受けた方々と国民の皆様にお詫びするとして謝罪文を発表した.以下は謝罪文の全文.



文化放送(訳註:MBCのこと)は,PD手帳取材陣が 黄禹錫教授の胚芽幹細胞真偽論乱を取材する過程に於いて 取材倫理に著しく反した事実を確認し,これについて国民の皆様に心よりお詫び申し上げます.


国民の知る権利の為の取材に於いても,取材方法が正しくなかったならばその取材の結果物および正当性を認められ難いという点を,国民の皆様に向けて明らかにせざるを得ません.


文化放送 PD手帳チームは これまで,黄禹錫教授チームが卵子を確保する過程に於いて一部倫理的な問題があったという点を指摘し,また韓国の胚芽幹細胞研究が国際的な支持のもとでよりしっかりとした倫理的土台を備える上で多少なりとも寄与できればという立場から取材を行って来ました.


しかし,胚芽幹細胞そのものの真偽論乱へと取材が進展するうち,PD手帳制作陣が取材員らを相手に(訳註:「研究員らを相手に」の誤りと思われる)「検察捜査」に言及し,強圧と受け取られても仕方ない言行を行ったことは,公営放送従事者としての取材倫理に反する行いであることは勿論,本社の放送綱領に違反するものです.文化放送はこうした取材倫理違反行為について明確にその責任を問うつもりです.


PD手帳制作陣の不適切な取材過程により苦痛を受けた方々と 国民の皆様に,重ねて伏してお詫び申し上げます.


2005.12.4 文化放送



MBCがこういう速い対応に出たのは政界正解だったと私は見ます.
この点については,珍しくハンギョレが私と近い見方をしていました:




YTN報道直後 緊急役員会議 ──文化放送 謝罪放送まで行う(ハンギョレ 12/04)

文化放送が「PD手帳」の取材倫理論乱に関連して 4日夜,対国民謝罪放送を行ったことは,放送誌上極めて異例の事だ.文化放送はこの日の夜9時の「ニュースデスク」の冒頭記事として対国民謝罪文を発表したのに続き,YTNの画面を直接引用してPD手帳の取材倫理違反に関連したニュースを4編も相次いで報じた.表現方式も「重ねて伏してお詫びする」など極めて丁重な態度で一貫していた.


文化放送がこのようにYTN報道直後速やかに謝罪したのは,PD手帳の取材内容の真偽についての論争が起きている状況で 取材倫理問題でまで火の手が上がっては対処し難いと判断したものと見られる.文化放送はこの日午後3時,YTNが関連報道を行った直後に緊急役員会議を招集し,午後4時頃に謝罪文発表を決定した.


文化放送の高位関係者はこの日,謝罪文発表後「現在のような状況で放送(訳註:PD手帳の黄禹錫編・第2弾のことだろう)が流れれば我々がどういう目に遭うかは明らかだ」としつつ「真偽論乱を解決するのに時間が掛かるのも致し方ない状況で,残念ではあるが我々は一歩引いて,科学界など別の場で検証が為されるようにしようという意味」だと述べた.


文化放送内部では,先週火曜日のPD手帳の初報道以後ネティズンらの反発が続く中,後続報道を行うか否か,および収拾策について集中的な論議を行って来たことが知られている.この過程で,PD手帳側は後続報道を強行するという態度を固守したが,経営陣や報道局側はこれに対して否定的な意見を示したという.


こうした折,YTNがアメリカでの現地インタビューを通じて研究員らの口を借りて取材倫理問題を強く提起すると,(訳註:MBC内慎重派が,だろう)これに乗じて電撃的に謝罪文発表と併せて後続放送留保を決定した(訳註:本記事は「6日に続編放映」の発表以前に流れたものらしい)のではないかという分析も出ている.PD手帳の取材過程で無理があったという報道が初めて提起されたわけでもない(訳註:黄禹錫の一件以前から同番組にはそうした悪評があった,の意)という点で,こうした分析は一層説得力を持つ.


文化放送の謝罪放送以後,PD手帳制作陣側は外部との連絡を絶ったまま,一切の公式な反応を見せていない.



訳註にも書きましたが,この記事が流れた時点では どうやら「PD手帳」の続編放映決定の発表は出ていなかったようで,それだけにこの記事では続編を放映すべきか否かをめぐるMBC内部での意見対立にかなりウェイトを割いています.が,ともあれ実際にはその直後に「6日に第2弾放映」の正式発表が行われているのは前回のエントリで触れた通り.


余談: …というより「早ければ6日に第2弾放映」というところまでは社内では既に先週から方向が固まっていた筈で,その方針は先月29日に(先週の「PD手帳」番組中で)崔スンホが明らかにしているのも以前ご紹介した通り.もちろん先週末の事態の急変を受けて社内が再び動揺するということも無いとは言えませんが.


それはともかく,今回の謝罪文発表は 上の記事の太字部のように「MBC包囲網」側にこれ以上攻撃材料を与えない為の謂わば戦術的撤退という意味合いが強いと読んでおいた方がよさそうに思えます.何せ黄禹錫側はScience論文の真偽疑惑について未だに納得の行く説明が出来ていない(姜成根の「反論」については後刻別エントリにて)以上,論点をその一転に絞りに行くのは戦術としては理に適っているでしょう.朝日に譬えれば,かの「本田テープ」を出して「オフレコの約束は破りました,ゴメンナサイ,でもご覧の通りNHKへの政治圧力はありましたよね」とやるようなものですか.あぁまた脱線してしまいそうだ(笑).



(12/08 誤字訂正:「政界」→「正解」)
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by xrxkx | 2005-12-06 19:45 | ◆ 黄禹錫 / 卵子売買