一番サボってはいけない時に3日もサボってしまいました.この件,今週一杯くらいがひとつの山場になりそうですので,面倒だけれど気合を入れて書かないと.
今回の一件が社会的イシューとなる発端を開いた卵子売買の件から 既に1ヵ月半くらいが過ぎていますので,ここらで一度経緯をまとめてみましょう.まず,黄禹錫(ほゎん・うそく)に懸かっている疑惑は大きく分けて
- ネット上で卵子を売買している韓国人ブローカーの件(これが後に,黄禹錫がそうした卵子を実験に用いていた疑惑へと飛び火)
- 黄が自分の部下の女性研究員から卵子の「寄贈」を受けていた疑惑
- 黄が2005年に「Science」に発表した論文の内容そのものが虚偽である疑惑
の3種類があるのでした.それぞれの疑惑に関する大まかな経緯ですが,
- 1について: 卵子入手元であるミズメディ産婦人科の盧聖一(の・そんいる)が卵子売買に関与していたことを自ら認める(盧・10/22記者会見)
- 2について: 「2003年頃申し出があったが断った」「後に寄贈の事実を知った」「Natureからの問い合わせに対し事実を答えなかったのは,提供者がプライバシー保護を求めたから」(黄・10/24記者会見)
- 3について: 黄がMBC側に共同検証を提案,契約書を交わす
→1次検証の結果に黄が納得せず,再検証を要求
→黄が突如態度を変え,今度は再検証に応じず
というもの.
1番については「売買された卵子であることを知りながら黄がそれを実験に使っていたこと」までは確実.倫理上の問題は措くとして,法的な問題としては「今年1月の生命倫理法施行以後にも売買卵子入手・使用の事実はあったのか」という点が残ったまま,他の問題に隠れて真相糾明の努力が些かなおざりにされている感があります.
2番については「卵子を『寄贈』したという研究員らが実際どこまで『自発的』だったか」という問題がありますが,おそらくこれについては白黒はっきりと決着がつくことは無いと思ったほうがよいでしょう.『寄贈者』本人の証言以外に何か有力な証拠でも出て来れば別ですが.
現段階での黄禹錫周辺のゴタゴタの大部分は 最後の3番をめぐるもので,これについてはこの週末の間に事態がめまぐるしく動いたようです.
- 12/03:「12/04に記者会見を行う」と予告していた盧聖一が その前日になって記者会見を突然キャンセル.「黄禹錫本人または研究チームのメンバーが直接釈明を行う可能性が高い」という理由.
- 12/03: 黄チームの姜成根(かん・そんぐん)がCBSとの電話取材に応じ,1次検証結果に対し黄チームとして初の反論.
- 12/03: 黄チームの安圭里(あん・ぎゅり)のアメリカ「潜入」が報じられる.
- 12/04: ピッツバーグ大のシャッテンの研究室にいる黄禹錫チームの研究者らが YTNのインタビューに答え,「PD手帳」取材班による「脅迫・懐柔」があったと証言.
- 12/04: MBCが「行きすぎ取材」について謝罪文を発表.
- 12/04:MBCが「PD手帳」黄禹錫疑惑特集第2弾を12/06に放映することを正式発表.
- 12/04: 国家生命倫理審議委員会,
13日の歓談会に続く正式全体会議の日程を16日と発表(12/13訂正:12/13予定の正式全体会議を16日に延期,歓談会そのものは11/29に行われたのを最後に行う予定なし,が正しいらしい).同会議で本件についての「最終判断」を下す意向を表明.
と,大体こういう流れになっているらしい.ともあれYTNの報道をきっかけに形勢は一挙に逆転したようです.
YTNが報じた研究員らの談話の詳細については後刻別途エントリを立てますが,朝鮮日報によれば
安教授グループの米国訪問には、YTNの記者一人が同行し、キム研究員を取材対象にMBC「PD手帳」の攻撃に対抗するための他の番組を準備していることが分かった。
となっているのを見ると,「盧聖一の記者会見ドタキャン→YTN報道→姜成根の反論」という一連の出来事が如何に計画的に進行されたかが窺えます.