池萬元氏との問答(予定)
 前回触れた 池萬元(チ・マンウォン)氏のwebサイトの文章と ,それに対する回答のつもりで書いた私の投稿とを訳出しておきます.昨04/12夜に載せるつもりだったのですが,寝床でぽつぽつ書いているうちに寝てしまったよ :D ごめんなさい.
日本の友人ならびに知識人の方々へ

 私が格別親しくお付き合いさせて頂いている日本人の学者や言論人の方々が何名かいらっしゃいます.本ホームページにしばしばお立ち寄りの日本人知識人の方々もかなりいらっしゃると伺っています.2002年末,私が光州に閉じ込められて(訳註:どういう事態を指すのかは訳者には分からないが)いた時,私に肌着を送って下さった友人,それに私を慰めようと様々な話を書いてはE-mailで送って下さった方もいらっしゃいます.これら全ての方々は私の心の友であります.こうした友情によって あらゆる問題を解決して行ったなら,韓国と日本が今回のように顔を赤くする(訳註:感情的に激しく対立するの意)必要は無かっただろうという気がします.
 ここ数週間は,日本と韓国,そして中国全てが 勝者の無いゲームを行なったように思えます.日本がアジア地域に於いて維持役をしていたならば,今回 国連安保理常任理事国入りすることが出来ただろうと私は信じます.報道に接するにそれが些か難しくなったようで残念です.
 日本国はいまや世界第2の経済大国となり,韓国や中国に比べ 生活水準が何倍も高いです.日本は今なお発展している国です.そして世界の平和を主導する理事国にまで進出しようとしている先進国です.日本国民一般の礼節と信用,そして日本企業の品質は世界の人々の羨望を浴びるほど進んでいます.なのに,私的な席で虚心坦懐に意見を交わしたように(訳註:どうやら上述の「日本人の学者や言論人」らとそういう話をする機会があったらしい),一部政治家らの品質は日本国全体の国力にそぐわず低い面があるようです.
 私の出会った日本の知識人たちはまことに礼儀正しい人々でした.農村で農機械(訳註:耕運機の類か)が遠くから現れれば全ての乗用車が農村の人々に感謝の意を表する意味で農機具が道を使い終えるまで10分でも20分でも敬虔な気持ちで待ってあげるのを見て,大いに驚きました.ソウルのそれよりも混雑した電車の中で静かに読書する姿を見て感嘆したこともあります.コーヒーショップの狭いテーブルに本とコーヒーを載せ,辞書を引いていてコーヒーをこぼす姿も見ました.
 こんなにも進んだ日本国民,礼儀正しい日本人であるのに,どうして日本の政治家たちが徒らに隣国の国民の過去の古傷を暴き出しては感情を刺戟するのか分かりません.取るに足りない岩島一つをめぐってなぜ近隣諸国と反目しなくてはならないのか,理解に苦しみます(訳註:「取るに足りない岩島」とは竹島を指すのだろうが,この箇所,原文では「隣国」が複数になっている.どうやら筆者は日本が竹島以外にも領土問題を抱えていることを念頭に置いて書いているらしい).
 私は日本にはアジアの隣国と和睦し,温かく暮らして欲しいと望んでいます.その為には,進んだ国,裕福な国が率先して「大きな考え」を持たなくてはならないと考えます.日本が笑えば隣国も笑うのです.日本が真摯な気持ちで「済まなかった」と言えば,近隣諸国は「不幸な過去は水に流そう(訳註:原文では「覆い隠そう,蓋をしよう」くらいの表現)と応えるのです.(訳註:ところが実際には)そうは出来ずにいるばかりか,発展線上にある日本国がどうして古臭い過去史を持ち出して歴史の針を逆に進めようとするのか,私には分かりません.
 時が経つほど世界はますます相互依存的な,ともに生きて行かざるを得ない,そうした環境に向かっています.今後 アジアの近隣諸国は,好むと好まざるとに関らず運命的に,繁栄と幸福を分かち合わなくてはならないでしょう.日本国がここに多くの寄与と先導的役割をしてくれるのを待ち焦がれている国々がたくさんあります.日本国がこうした期待に応えてさえくれるなら,日本国は近隣諸国の推薦により晴れて世界平和を主導する(訳註:国連安保理常任)理事国になることでしょう.世界で2番目に強い経済力を持つ日本が 今後も国連(訳註:安保理)常任理事国になれないとすれば,それまた日本国の不名誉となるでしょう.こうした点を重視し,より良い地球村を培って行く上で先導的役割を果たしてくださるよう,日本の知識人の皆さんに敢えて切望します.

 以下は私の考えた甚だ疏薄(訳註:「素朴」かも知れない)な改善案です.これについてお互いに虚心坦懐な意見交換ができればと存じます.


1. 歴史教科書について

 「韓国は長い間中国に朝貢を行なって来た辺境国だった」なる趣旨の教科書内容があるやに伺っております.歴史書を通じて多くの韓国人たちはこれが事実であると習って来ました.ですが,事実であるとしても,教科書に現れる短い文章を通じてこれを日本国の幼い学生(訳註:韓国語では一般に「学生」は児童生徒を含む.以下同様)たちに教えることは,両国の学生の間の交流と友情の為に望ましくないと思います.勿論,歴史を専攻する成熟した青年学徒向けの参考書であれば幾らでも学問の自由の面で許容されるべき問題だと思います.


2. 慰安婦問題に関して

 慰安婦問題についても,幼い学生たちに教科書を通じて断片的に教えるのは両国双方の為に望ましくないと思います.


3. 独島(訳註:竹島のこと)問題について

 独島問題について,私は日本にそれこそ友人としての忠告を申し上げようと思います.独島は客観的に見ればとても小さな不毛の岩島に見えます.しかしここには韓国国民の自尊心が掛かっており,韓日間の感情的対立が激突する,火花を散らすスパーク地点です.これを日本領だと主張することは,韓国人たちの自尊心を無惨に踏みにじり(訳註:原文では「重圧を加える」といった意の動詞),心にしこりを残した韓国人たちの民族感情を極度に刺戟する行ないに等しいのです.独島は実際韓国が占領しており,韓国人たちが思い通りに行き来できる 韓国領です.今更これを日本領だと主張する限り,韓日間の感情は対立せざるを得ません.
 アジア地域に於いて韓国と日本がこうした問題によって地域社会に不和を増大させる限り,日本は日本との間に苦痛の歴史をもつ数多くのアジア諸国から歓迎されるのは難しく,こうした国々から維持役として遇されない限り日本は国連(訳註:安保理)常任理事国となる資格が無いと私は考えます.
 1810年代のデンマークの精神的指導者「グルントビラン」という方(訳註:正しくは「グルントヴィ (Nikolai Frederik Severin Grundtvig) 」だろう)のことが思い出されます.「外で失ったものを内に求めよう」.日本は既に内に於いて多くのものを創り出し得る国家となりました.天然資源の全く無い状態でも世界第2の経済大国となりました.日本の経営能力は世界的な資産なのです.独島なしでも日本は無限に繁栄することができます.独島のことをきれいさっぱり忘れてくれるなら,日本国は国際的に一層尊敬される国,名誉ある国となるでしょう.
 日本がどんなに領有権を主張しても,独島は日本領にはなりません.日本の国際的地位を下落させるばかりです.経済力にふさわしく心の面でも太っ腹であってほしいものです.
 私は何か考え違いをしているかも知れませんが,以上が私の甚だ小さな所見です.日本においでの友人の方々が私よりも一層多くお考えになり,韓日間に互いに役立つ美しいパートナーシップを拓いて行ければと思います.過去が痛ましかった分だけ私たちはより幸福になれることでしょう.

有難うございます

2005.4.11
韓国にて 池萬元 拝
 さて,上の文章に私がついつい反応してしまったのは,同文章がかつての盧武鉉政権の対日外交姿勢に酷似した表現や論法を多数含んでいるのが 奇異に見えたからです.
 「親日派狩り」の件を扱う途中で何度と無く触れたように,池氏は政治的には盧武鉉政権とは正反対の立場に立っており,また以前にも触れたように「いつまでも徒らに日本を恨んでばかりいないで,日本から積極的に学べ」という持論の持ち主だった筈です.
 そういう人物が,日本の国連安保理常任理事国入りを謂わば人質に取る形で日本にまたしても「心からのお詫び」を促す論法を用いたり,「進んだ国が率先して度量の大きさを示すべき」といった盧武鉉の甘えた対日要求をそのまま踏襲したかのような表現を用いてみたりする真意が何処にあるのか量りかねると思いました.
 一方で,「どうして古臭い過去史を持ち出して歴史の針を逆に進めようとするのか」などのくだりを見るに,見方によっては日本に仮託して韓国を批判しているように見える箇所があちこちに見受けられます.何せ「古臭い過去史を持ち出して」いるのは韓国側ですから.
 そんなこんなで,ひとつ探りを入れてみようかな,と思って投稿したのが 以下の文章です.
池萬元所長へのお答え

 私は さる3月初頭の所謂「親日擁護発言」騒ぎ以来 貴サイトを興味深く読ませて戴いている日本人です.
 さる4月11日に掲載なさった「日本の友人ならびに知識人の方々へ」 (No. 1644) と題した文章を拝読いたしました.
 池萬元所長が日本の「礼節と信用」を高く評価して下さっていることは,一人の日本国民である私にとっても非常に喜ばしい事ですが,ここで「礼節」とは決して相手に対する無条件/一方的な譲歩を意味しないということを 今更ではありますが申し上げておこうと思います.
 池萬元所長は同文章の中で「進んだ国,裕福な国がまず率先して『大きな考え』を持たなくてはならない」という主張──これは昨年7月に済州島で行なわれた日韓首脳会談の記者会見の席での盧武鉉大統領の発言と非常に似ていますが──を行なっていらっしゃいますが,その「大きな考え」にしても日本自身の譲歩だけで成り立つものではありません.
 ともあれ,日韓関係をめぐって韓国国内の輿論が過激化の一途を辿り,挙句は政府指導者までが「外交戦争」なる不穏当な発言を行なうに至った中で,敢えてこうして両国間の対話の道を模索しようとする文章を公開なさることが 大変な勇気を要するであろうことは 想像に難くありません.民主社会に於ける言論の自由を守る為の こうした勇気に,私は無限の敬意を表するものです.

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 以下は池萬元所長が1644番の文章中で提起なさった3つの事項に対する私の持論です.


1. 歴史教科書について

 韓国が長い間支那の属邦であったということをはっきりと教えることは,近代日韓関係の歴史の意味を正しく理解する上で 必ず知っておかなければならない基本的事項であると考えます.
 韓国をはじめ,東アジアの様々な国が「中華」という虚構のもとで維持されて来た冊封体制を脱し,近代的な意味での独立主権国家として生まれ変わろうとする過程について 充分に理解しない限り,近代日韓関係の歴史的意味を功罪両面から客観的に理解することは出来ないからです.
 19951897年まで韓国が清国の属邦だったという事実については 池萬元所長も当然お認めのところですが,これについて歴史教科書中で言及することが もしも「両国の学生たちの間の交流と友情の為に望ましくない」のであれば,それは寧ろこれまでの「両国の学生たちの間の交流と友情」の存立の様式そのものに問題があるということではないかと思います.歴史を正しく教えるという行為は,いかなる政治的意図によっても影響を受けてはならないのです.


2. 慰安婦問題に関して

 ご存知のように,この問題を日本の歴史教科書中で扱うようにさせたのは,他ならぬ日本国内の「良心的」勢力が政府に対して加えた圧力の結果です.
 慰安婦問題の核心は「日本軍による強制」の事実があったのかどうかという点にあることについては,重ねて申し上げるまでも無いでしょう.しかしながら,この「強制性」については自称もと慰安婦ら自身の証言があるだけで,これを証明するに足る客観的根拠は 今日に至るまで何一つ提示されていないのが現状です.
 にも拘らず,その後 日本の歴史教科書には 慰安婦側の証言に基づいた一方的かつ独善的な記述があまりに多いのが現状です.まさにこうした文脈に於いて,先日の中山文科相の教科書発言──韓国人たちが「妄言」と呼ぶ あの発言──も行なわれているのです.
 こうした状況に於いて,これまで数多くの日本国民らが,あたかも自らの祖国が「性犯罪国家」であったかのような異常な歴史教育を受けて来たのです.もともと私もその一人です.
 また,最近では日本国民のこうした自虐的歴史観を政治的に利用しようとする勢力も少なくないだけに,慰安婦問題に関するこうした教育の現状は一日も早く是正すべき課題と言わざるを得ません.
 慰安婦問題が日韓関係に於いてこれほどまでに大きな懸案事項となっている事実を勘案すれば,これについて教科書中で全く触れないというのは現実的な選択ではないでしょう.従って当面は「強制性」があったかどうかについて是認/否認の両面から公正に掲載すべく記述を是正する以外に無いだろうと考えます.


3. 竹島領有権問題について (訳註:もちろん日本語式に「タケシマ」と書いてある)

 結論から先に申し上げるなら,領土問題に関してはあくまで国際法に従って平和的に解決するのが原則です.
 韓国メディアが日本の竹島領有権主張を「紛争地域化」と呼んでいる一方で,日本側でも多くの国民が韓国政府の態度を「実効支配の既成事実化」を意図したものと見ています.しかし,国際法に於いては,所謂無主地とは異なり 領有権対立のある地域をどんなに長い間占領しようとも それは「実効支配」とは認められません.不法占拠はあくまで不法占拠に過ぎません.
 従って,韓国政府および国民が「独島」を自らの領土だと主張するに足る国際法的正当性についての確信があるならば,彼らが為すべき事は その根拠を全世界に向けて堂々と主張することによって この領土問題を法的に完全に決着させること,まさにこれに尽きます.先日 馬山市議会が「テマド(訳註:対馬のこと)の日」を制定した時,これに抗議して自らの指を切ったり太極旗(訳註:韓国の国旗)を燃やしたりする日本人が ただの一人もいなかったのは,まさにツシマ(訳註:ここも日本語式に書いてある)が日本領であることに対する法的根拠と自信によるものです.
 法治に対する信頼と遵守の精神こそが「人類の普遍的価値観」であり,国際法を通じた国際紛争解決こそが その価値観に沿った道です.これに従うことの出来ない国こそ,隣国の国連安保理常任理事国入りの資格を云々する資格が無いのです.
 もしも韓国側が今後も国際司法裁判所に於ける竹島領有権問題決着に応じまいとし続けた場合,それは日本政府をしてこの問題を国連安保理に付託せざるを得ない事態に追い込み,ひいては日本国民らに「その日」に備える為の自国の防衛力強化に対する注意を喚起する結果を招くでしょう.
 もともと平和的に解決し得る国際的懸案事項を武力で解決せざるを得ない事態に至るのは,当事国双方にとって不幸な事です.韓国政府がこうした事態を望むのか,或いはより理性的な決断によって平和的解決の道を選択するのか,この点を数多くの日本国民は見守っています.

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 私の意見は以上の通りです.拙い韓国語でどこまで私の言わんとするところをお伝えできるか不安ではございますが,一人の日本国民の考えを知る上で些かなりともお役に立てばと存じます.

2005/04/12 すいか泥棒 拝
 何だよ「すいか泥棒 拝」って(笑).ふざけてると思われたかしら.けっこう真面目に書いたのになぁ.
 残念ながら 今日 (04/13) のお昼現在 池氏本人からは何ら反応がありません.代わりに韓国の一般読者たちのレスが多数あったようですが.しかも大半は例によって単なる罵詈雑言に終始するか,または本来の論点から大幅に逸脱するかのどちらかで,それらは既にあぼーんされているようです.

※その他のキーワード:池万元
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by xrxkx | 2005-04-13 12:23 | ◆ 池萬元 慰安婦発言