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【李登輝前総統訪日】 勝ったのは日本ではない
 昨夜のニュースで,中共がまたも小笠原近海での海洋調査を日本に申し入れて来ているというのがありました.沖ノ鳥島周辺の海域を中共が日本のEEZと認めていないため,石原都知事は調査を許可しないよう主張している由.今日はこの話に深入りしていられそうにありませんので,近日中に再度取り上げるとして─

中国 李登輝氏訪日への対日報復見合わせ 外務省局長示唆 (毎日 01/07)
【北京・上村幸治】中国外務省の孔泉報道局長は6日、日本訪問を終えた台湾の李登輝前総統について「台湾独立を急ぐ人物は、あらゆる正義感を持つ人に唾棄(だき)されるだろう」と批判した。しかし、李氏の日本での行動には言及しなかった。
 また査証(ビザ)を出した日本政府への報復措置にも触れず、報復を見送ることを示唆した。李氏が日本で注意深く政治活動を避けたため、追及するとっかかりを得られなかった模様だ。
 李氏の訪日問題は中国外務省が激しく反発し騒ぎを大きくした。しかし報道局長はこの日の会見で「一部のメディアが関心を持っているらしい」と人ごとのように述べ、記者団の失笑を買った。中国外務省としては、これ以上問題を引きずりたくない模様だ。
 報道局長は、今月9日に予定されていた自民、公明両党議員団の訪中を中国側が延期にした問題について「内容が多く、しっかり準備する必要があるので延期にした」と述べ、李氏訪日に対する報復措置だという見方を否定した。
 あららら….記者にまで笑われてしまいましたか.合掌.
01/08追記.私が最近読み始めた「日々是チナヲチ。」というblogの こちらの記事で知ったのですが,原文では「一部日本メディアが…」と言っているのですね.原文を探してみると,こんなのが:
孔泉就印尼灾区华人被抢、李登辉访日等答问实录 ─中国日報 01/06
问:中方是否了解李登辉在日本期间是否进行了分裂中国的活动?

答:个别日本媒体对此人的事情好像很“关心”。你的提问使我想起了中国唐朝著名诗人杜甫的诗句:(後略)
と まぁ,確かに「李登輝氏訪日で騒いでいるのは一部の日本メディアだけ」とでも言いたげな口ぶり.これまでの中共外交部自身による反李登輝キャンペーンやら対日恫喝やらは言うに及ばず,中国国民がびっくりしてみたり「華僑」だの日本在住台湾人団体を持ち出して捏造記事をでっち上げてまで ビザ発給取り消し要求をさせてみたりといった所業についても,既にきれいさっぱりお忘れの御様子.かの大陸の方々は脳みその方もシンプルに出来ていらっしゃるようで羨ましい限り.
 で,その挙句の果てが日本の与党議員訪中延期ですか.「報復ではない」のくだりは昨日も書いた「銀20両」の故事を思い出していただきたいところ.その逆の中共高官の訪日取り止めにしても そうで,こんなものが「報復」になり得ると思っているらしいあたりが「中華」なるものの救い難いところ.石原慎太郎の真似をするわけではないけれど,来たくないと言うものを無理に来ていただく必要は無い.そういうバカップルの痴話喧嘩みたいな腹いせ外交に日本が付き合う義理はもとよりありません.
 上の記事のような中共当局の態度を見ると,次のような事が分かります:
  1. 他でもない,日本叩き・李登輝叩きを鼓吹して来た張本人が,事成らずと見るや平気で知らぬ顔を決め込む.中共外交の広告塔ともあろう男にして なお,こういうやり方を恥と思わないらしい.こういうところに支那人の国民性が如実に現れる.記者団も笑っている場合ではない.いや まぁ,笑うしかないのは分かるが.
  2. 李登輝前総統訪日は,支那の圧力・日本の弱腰による不自由・不本意な状況が多々あったにせよ,それでもやはり《実現することに意義があった》と言ってよい.中共としても とうとう因縁付けの出来ないまま終わってしまった今回の件については,さっさと忘れてしまいたい外交上の汚点になったことだろう.
  3. こうした中共の「はじめにハッタリありき」という対日外交を,日本政府は不必要に恐れて来た.むろん 相手を刺戟するばかりが外交ではないのは分かるが,相手のヒステリーじみた反発を巧くイナしながらでも十分に筋を通すことは出来るのだという見本を,李登輝氏の態度は示している.
 もっとも,昨年12/21にも書いた通り,今回の訪日の件で中共から一本取ったのは あくまで李登輝氏であって日本政府ではないのですから,日本人としては喜んでばかりもいられないのは事実.李登輝氏を何度日本に招いたところで,それだけで終わってしまっていては日本政府の対中弱腰姿勢が改まるわけではないのです.今度は日本側が台湾の好意に応え,同時に中共への抑えとして台湾の立ち位置を利用すべく外交的イニシアティブを取る番です.悲しい哉,現在の官邸や外務省にそんな外交的主体性は望むべくも無いでしょうが….

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 それにしても この記者さん,あの毎日にこんな記事を載せて大丈夫なのだろうか,いまに国外退去を食らったり本社から干されたりするんじゃないか,などと 他人事ながら心配になったりもしますが,どうも 前からこれくらいのことは書いていた人らしい.つい先日も次のようなコラムがありました.
記者の目:戦後60年 日本の対中姿勢=上村幸治(中国総局)(毎日 01/05)
 是々非々でいくなら、中国から民主主義や平和に逆行する対応を求められた場合は、拒む必要があるし、注文もつけないといけない。そうすればきっと、摩擦はさらに増えるだろうが、それも仕方ないのではないだろうか。
 日本は戦後60年、摩擦や対立を過度に恐れ、避けよう避けようと懸命になってきた。そろそろ、対立すべき時は対立し、その上でそれを乗り越えるための努力をする時期が来ているように思う。
などのくだり,当たり前の事しか書いていないのですが「せめてこれくらいの事を朝日の記者にも書いて見せてもらいたいものだ」と思わせるものがあります.ちなみに この記者さん,「発信箱」というコラムも担当しているらしく,支那関連の稿を探してみますと 新しいところでは「海賊版王国」(2004/12/23)とか,先のAPECでの日中首脳会談を風刺めかせて描いた「地球の裏側から」(2004/12/02),あるいは紅の傭兵河野洋平が中共当局に手玉に取られる様子を些か滑稽に憂えて見せる「中国の交渉術」(2004/11/11) などがあるようですが,取り立てて辛口というわけではないものの なかなか機智に富んだ文章を書く方のようですよ.
by xrxkx | 2005-01-08 18:26 | 台湾建国によせて