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李登輝氏にビザ発給,だが…
李登輝氏にビザ発給,だが…_a0026107_21422534.jpg かねてより来日を希望していた台湾の李登輝前総統に,日本政府がビザを発給する方針を決めた由,昨12/16に報じられました.このこと自体は まずは祝着.

 が,当然ながら これで一件落着というわけには行きません.言うまでもなく,中共の内政干渉があるからです.
 外国人へのビザ発給は完全に日本の内政問題です.これに中共が異を唱えることは,日中共同声明 (1972) の第6項
 日本国政府及び中華人民共和国政府は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に両国間の恒久的な平和友好関係を確立することに合意する。
に反するものであり,日本政府はこうした破廉恥な内政干渉を断乎突っ撥ねるべきなのです.

 中共当局者らの露骨な内政干渉,或いはそれどころか対日恫喝と呼んでよい不埒極まる発言の数々が 昨日から日本でも盛んに報道されていますが(more欄参照),中共ごときから こうした侮りを受ける 最大の原因は 他ならぬ日本政府の 中共に対する過度の配慮にあることを,日本政府当局には十分に認識していただきたいものです.
 そもそも,上述のように純然たる日本の内政問題であるビザ発給について 一々中共にお伺いを立てる態度からして既に正気の沙汰ではないのです.無論,「私人だから」「観光目的だから」などという釈明をする必要も無い.
 こうした切れ味の悪い外交を余儀なくされているのも,元を質せば 中共の謂う「ひとつの中国」という虚構,「中国の平和的統一」なる欺瞞に 日本政府がいつまでも付き合わされているのが原因です.何処かでこれをリセットすべきです.それには「台湾は中国ではない」という立場に立つことがどうしても必要.その為には 何より 当の台湾人らに そろそろ腹を括ってもらうしかない.
 以下 やや脱線気味ですが 補足.
 上述の日中共同声明の第2項・第3項には次のように記されています:
2. 日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。

3. 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基く立場を堅持する。
 第2項については,要するに
「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを,日本政府は承認するに吝かでない.が,現在の国際通念上,また国際法上,台湾は『中国』ではない
とすればよいだけの話.また第3項については,
「日本政府は中華人民共和国政府の立場を十分理解し,尊重するが,台湾は『中国』ではないとする国際通念および台湾住民の意思をも同様に理解し尊重すべきであると考える」
でよい.

 が,それには何より先に 当の台湾人たちが全世界に向けて
「台湾は中華民国とは違う」
「台湾は中国の一部ではない」
「台湾は中華人民共和国との統一を望まない」
という確固たる意思表示をしてくれないことには 話が始まりません.

 李登輝氏の執政下に台湾は「中華民国在台湾」「台湾中華民国」と少しずつ《本土化》を進めており,現在では陳水扁総統の「中華民国=台湾」発言を李登輝氏が否定するまでになっていますが,さる12/11の立法委選で与党連合が敗北したのを初め 今年3月の総統選に合わせて行われた住民投票が不成立に終わるなど,台湾の民意の赴く所が未だ不透明さを拭いきれずにいるのは,外国人である私から見ても非常に残念なことです.
 今後,李登輝前総統へのビザ発給取り消しを求める中共の干渉・恫喝は日を追って激しさを増すでしょうが,如何なることがあろうとも 李登輝前総統の訪日は 予定通り 年内に実現すべきです.
 今回のことが もし 本当に中共の主張するように「日中関係に新たな影響」を及ぼすというなら 面白いから国交断絶でも何でもやって見せてもらえばよいのです.歴史問題や領土問題などをめぐる日本国内の反中感情や 対中ODA停止論にとっては,そうした一つ一つが貴重な火種であり大義名分であり得るでしょう.

 ついでながら,今回の一件は 来春に相次いで訪中を予定している与党議員の皆さん(産経 12/15,および毎日 12/14 などを参照)への重要な踏み絵になることは想像に難くありません.上記の記事によれば 訪中する議員は
  • 安倍幹事長代理ら (訪中予定日:2005/01/09)
  • 額賀福志郎(前政調会長),福島豊(公明党政調副会長)ら12名 (2005/01/10)
  • 中川秀直(国対委員長),古賀誠(元幹事長),二階俊博(総務局長) (2005/01/11)
の三派に分かれるようですが,安倍氏以外は 中共にまんまと篭絡されて帰って来る可能性が極めて高そうなのが懸念されます.
(ちなみに,この二階氏というのは 先月の中共原潜の領海侵犯事件の際に 中共の駐日大使である王毅を和歌山くんだりに匿っていた張本人でしたね.お陰で中共は日本外務相との応対は程永華などというヒラの公使で済ませたのでした.)

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 国際社会に於ける台湾の位置付けについて考えなくてはならないのですが,あまりに長くなりすぎましたので後日に譲りたいと思います.
  • 下関講和条約
  • カイロ宣言
  • ポツダム宣言
  • サンフランシスコ講和条約
  • 日華平和条約
  • アルバニア決議案
  • 日中共同声明
くらいを題材に,中共の言う「ひとつの中国」論が如何に重大な齟齬を来たしているかを考えることから手を付けたいと思っていますが…時間的余裕が….



◇ 関連発言 ◇
◇王毅(駐日大使) → 竹内(次官)
「一つの中国という政策に反する」
「(ビザ発給は)理解できないし、受け入れることはできない。(李氏は)退職した一老人ではない。中国を分裂する方向に狂奔している代表人物だ」 (以上 共同)


◇黄星原(駐日大使館 参事官) 朝日の取材に答え
「査証発給には断固として反対する。中日関係への影響は計り知れない」(朝日


◇劉建超(外交部副局長) 定例記者会見にて
「われわれは、日本が李氏の訪問を受け入れること自体、中国の統一に向けた努力に対する挑戦であると考える。これは台湾の独立勢力を支持し甘やかしていることを示す典型である」
「われわれは断固として反対であり、日本側に対しすみやかに決定を取り消すよう要請する。さもないと両国関係に新たな影響が生まれることは確実となるだろう」 (以上
ロイター


「日本での活動を許容した決定を直ちに取り消すよう求める」 (時事


「もしもそういうことがあれば理解できないし、受け入れることはできない」
「李登輝は退職した一老人ではない。中国を分裂する方向に狂奔している代表人物だ。その人物を日本に受け入れることは、日本政府が支持する『一つの中国』という政策に反する」 (以上 共同
外交部、日本に李登輝氏訪日許可の取り消し要求 ─人民網 12/17
――李登輝氏が年末、個人的な目的で日本を訪れる。日本政府は李氏に査証を発給する方針だという。中国はこれをどう見ているのか。

李登輝は急進的な「台湾独立」勢力の総代表だ。彼が訪日に向けて深謀遠慮をめぐらせるのは、後ろ盾を探して「台湾独立」分裂活動推進のための外的環境を整えようとしているのだ。

日本政府は中日関係を顧みず、李登輝の訪日に同意した。これは「台湾独立」勢力による分裂活動への黙認と支持であり、また中国の平和統一事業への挑発でもある。中国政府はすでに外交ルートを通して日本側に厳しい申し入れを行い、日本政府が李登輝の日本での活動を認めた決定を取り消すよう強く求めている。
(上記発言の原文は↓こちらでもお読みになれます:
中国反对日本为李登辉来日活动开绿灯 ─新華網 12/16)

◇ 小泉首相 16日午前
「(来日を)断る理由はない。(9月来日を希望するビザ発給を保留した時との違いは)諸情勢だ」
「日中友好を重視していく。(中国をけん制する意図は)全くない」 (以上 読売

「(申請を)断る理由ない」
「(今後の日中関係については)友好関係を重視していく」
「(中国への牽制の意味合いは)まったくない」
「(9月に同様の要請があった際に断ったのは)月が違う。諸情勢だ」(以上 産経

「断る理由がない。日中関係は重視している」 (朝日


◇ 細田官房長官 16日午前
「(李氏は)何ら政治活動を行うものではないと理解し、政府としてはビザを発給する方針だ」
「わが国の台湾に対する立場には何の変更もなく、台湾独立を支持しないことを改めて明確にしておきたい。本件が日中関係に大きな影響を与えるとは考えていない」 (以上 読売

「李氏から(日本政府の対台湾窓口である)台北の交流協会事務所に『年末年始、純粋な観光目的の家族旅行をしたい。何ら政治活動を行うものではない』と(連絡が)あった。観光目的の家族旅行と理解し、ビザを発給する方針だ」
「我が国は二つの中国の立場はとらず、台湾独立も支持しない。この問題が日中関係に大きな影響を与えるとは考えていない」 (以上 朝日


◇ 町村外相 16日
「今や一私人になった人が観光目的で来ることについて断る理由がないという単純簡明な理由だ」
「『一つの中国』という基本政策には何ら変わりはない」 (産経


◇ 細田官房長官 16日午後(中共の抗議声明発表後)
「李氏は完全な私人だ」
「(この件が日中関係の新たな火種になる可能性について)そのようなことはないものと考えている」 (以上 時事

by xrxkx | 2004-12-17 21:42 | 台湾建国によせて