「ほっ」と。キャンペーン
米下院慰安婦決議案のこと ─議員宛メールもよいけれど─

マイク・ホンダらの慰安婦決議案の件で、「決議案の採択に反対してくれそうな下院議員宛にメールを送る」よう呼び掛ける動きがあるというのを読んだ。日本という国の名誉を思う気持ちと努力はそれなりに評価したいが、残念ながら私は乗る気になれない。



事は単に同決議案の可決成立を阻止すればよいという性質のものではない。2/15の米下院外交委亜太小委では決議案に反対した議員もいたそうだが、こうした議員の主張する所とて所詮「日本は既に第2次大戦に於ける自らの過ちを認め何度も謝罪して来たのだからこれ以上叩くべきではない」という線を越えるものではない。日本を利するか害するかに関わり無く、それが「慰安婦とは職業売春婦であって断じて所謂『性奴隷』などではない」という基本認識を共有しない者である限り私はこれと手を結ぶことはできない。それでは我が先人らの無実を主張しその汚名を雪ぐことにならない。



なるほど「敵の敵は味方」という考え方もあろう。仮にこの問題を単なる外交マターとしてのみ見るならそれもよいかも知れない。しかし今問われているのは国家の利益ではなく名誉である。《日本という国家が組織的に婦女子を強制連行し性的奴隷状態に置いたという根拠無き嫌疑》そのものを晴らさなくては何の意味も無いばかりか、「日本は既に謝罪したのだから本件は解決済み」なる主張の持ち主に日本国民自ら声援を送るが如きは却ってアメリカ輿論に「誤ったシグナル」を送ることにすらなりかねない。



敢えて言うが国家の名誉は国家の利益に優先する。国家の利益を守る行為に於いてはさまざまな手練手管もあろうが、国家の名誉を守る戦いに於いて自らの原理原則を枉げることは断じてあってはならない。



まずは政府をして河野談話を公式に撤回せしめないことにはどうにもならない。つい先日も某報道番組がホンダとのインタビューを放映したそうだが、記事に曰く、



米下院に慰安婦問題をめぐる対日非難決議案を提出したマイク・ホンダ議員(民主)が25日、フジテレビの「報道2001」に中継で出演し、決議案が「日本軍による強制的な性奴隷化」などと軍による強制連行を一方的に断定している根拠について、「官房長官談話が出て、首相が謝っている。実際に(強制連行が)なければどうしてそういうことが起こるのか」と述べ、平成5年の河野洋平官房長官談話を挙げた。


米国民であれ第三国の人々であれ、河野談話の背景を知らぬ者がこの言い分を聴いてもっともだと思うのは無理も無いではないか。上の記事には続いて



これに対し、日本側の出演者は「日本政府に謝罪を求めながら、強制連行の根拠を『日本の首相が謝罪しているからだ』というのは論理矛盾だ」(山本一太参院議員)などと反論。日本政府の対応にも注文が相次いだ。


とある。記者氏には「『日本政府の対応にも』とは、ものごとの順序が逆ではないか」と申し上げたいが、ともあれ山本氏の指摘は有効とは言えないにせよ少なくとも示唆的である。即ちホンダが河野談話を根拠に日本国首相に「政府を代表して」謝罪するよう求めている以上、ホンダは河野談話を「政府を代表して」の謝罪とは見做していないのだから、日本政府が今から河野談話を撤回してもホンダ側はそれを以て「日本政府が見解を覆した」と言うことはできない筈である。あとは日本政府がその一歩を踏み出せるかどうかに全てが掛かっている。どうすればその一歩を踏み出させることが出来るかに心を砕いた方が健全だと私は思う。



以下 愚痴として


マイク・ホンダは単に「無知な正義漢」に過ぎないと私は今のところ思っているが、日本人の中に彼を「確信犯的な反日活動家」だと見做す向きもあろうことは想像に難くない。この点、果たしていずれであるかを問うてみてもさほど意味は無いと思う。



「反日」を云々するなら、もともとアメリカという国じたいがここ100年来ずっと反日である。かの国を反日たらしめるにあたって支那のプロパガンダなどは寧ろ副次的な要因でしかない。



日本人にしてポーツマス条約以来の日米関係史を省みて猶この点を理解できぬ自称「保守」の何と多いことか。「同盟国のアメリカがこんな決議案を」などと今更のように言い出す輩は大抵これである。彼らは畢竟GHQ史観の側に立つ者でありアメリカ的戦後民主主義の崇拝者であるという意味に於いてサヨク──いやこの場合は「左翼」と書いてもよいかも知れないが──と大同小異である。果たして彼らが大東亜戦争終結までのアメリカと現在のアメリカは別だと思っているのか、それとも逆に日本の側が大東亜戦争を境にそれまでとは正反対にアメリカと「自由と民主主義という価値観を共有」する国に生まれ変わったと思っているのかは私の知る由も無いが、そのいずれであるにせよ彼らの歴史観は1945年を境に捻じれている。或いは1945年の時点に断層を生じている。彼らにとって守るべき日本とは煎じ詰めれば戦後の日米「同盟」のもとでの日本だけである。かかる人々に大東亜戦争の大義や祖国の名誉を説いてみるだけ虚しい。せめて今回の一件が単なる親米を保守からふるい落とすきっかけになってくれることを願うばかりだ。



愚痴ついでにもう一つ


先の米下院議員宛メールの件を巡って、中には「マイク・ホンダの日系米人としての素性の怪しさ」みたいな話をしだす恥知らずな日本人までいたらしい



彼らのやっている事と、先日かの「竹の森遠く (So Far from the Bamboo Grove)」がアメリカで問題になった折にその著書の内容と全く無関係な人格攻撃──「著者の父は戦犯」といった類の──に明け暮れていた韓国人・韓国系米人のやり方とで、その品性に於いてどれほどの違いがあるか。しかも、「重要なのはマイク・ホンダの主張の誤りを糺すことであって彼の素性を暴くことではない」などと、よりにもよって日本側に好意的な日系米人に懇々と諭されている姿など見せられては、もはや大東亜戦争の大義どころではあるまい。日本人はかくも堕落したのだ。私も反反日キャンペーンは数多く見て来たし時に携わっても来たが、これほどの寂しさを味わったことは曾て無かった。


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by xrxkx | 2007-02-27 01:41 | 時事ネタ一般