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【東シナ海ガス田】各紙社説読み比べ

本当は東京大空襲の日に支那ネタなど書いている場合ではないのでしょうし、ガス田の話題なら既にあちこちのblogで扱っていますので屋上屋を架すのもどうかとは思いますが、昨夜書きかけで寝てしまったので勿体無いから上げてしまいます。


昨9日の時点で東シナ海ガス田についての各紙の社説が出揃ったので(但し朝日については本日10日付でもう一度ガス田の話題に触れていますが、これについては別エントリで扱います)、幾つかの論点について各紙社説の読み比べをしておきます。今回用いるのは以下の6本:



讀賣・産経・朝日が8日付で出ていることに一応注意しておくことにします。




支那「尖閣海域共同開発」逆提案への言及の仕方


まず、今回支那が尖閣周辺海域まで含めた共同開発を逆提案して来たわけですが、そのことに言及していないのは朝日と讀賣だけ。両紙から尖閣に関係ありそうな箇所を抜粋すると、


中国は新たな提案を示したが、その内容は明らかにされていない。日本案とはかなりの開きがあったとされる。(讀賣)


どの海域を共同開発の対象にするか、基本的なところで対立がある問題だ。合意点を見つけるのは簡単ではない。ねばり強く交渉を続けてもらいたい。(朝日)

と、せいぜいこの辺り。両紙とも8日付と毎日・日経・東京新聞より1日早いせいかとも考えてみたのですが、それにしては同じ8日付の産経に

中国は日中中間線付近で一方的に開発を進める「白樺」(中国名・春暁)ガス田などについて、共同開発の対象としない方針を堅持し、一方で、尖閣諸島などを共同開発の対象とするよう求めた。妥協の余地はない。

とはっきり言及がある。特に朝日の場合、「どの海域を共同開発の対象にするか、基本的なところで対立がある」という表現からして尖閣の件を掴んでいながら意図的に伏せたものと見たほうがよさそう。どうせ1日経てば他紙が報じるのだから余計な小細工はしなければいいのにとも思いますが、それをせずにはいられないのは つい先日の幼児殺害事件の折に犯人の気違い支那女を通名で報じたあの体質の然らしめる所でしょうK.Y.。しかも本日10日付の社説でわざわざこの問題を改めて取り上げ「びっくり」して見せる芸の細かさ。




支那が協議に臨む姿勢への言及の仕方


当然ながら、一紙を除いてあとは皆支那の対応の不真面目さを非難する論調。あの東京新聞までが今回に限って讀賣や産経以上に気合を入れているのが寧ろ微笑ましいほど。



だが、今回の協議でも中国は開発中止要求を拒否した。前回協議の後、ガス田とガス田をつなぐパイプラインの敷設を完了させるなど、着々と開発を進めている。宥和(ゆうわ)的な姿勢だけでは、事態の打開は期待できない。 / 主権と権益を守る日本の意志を明確に示すことが、国際ルールに反した行動を中国に自制させることにつながる。(讀賣)


中国は東シナ海を平和の海にしようとしているというより、係争の海にしようとしているのではないか。中間線付近の海域に軍艦が出動し、日本の防空識別圏には中国機が侵入して自衛隊の電子情報を収集している。「白樺」ガス田では試運転が始まり、月内にも生産を開始する予定だ。(産経)


わざわざ領土問題をからませてきた中国の対応は問題をこじらせるだけだ。日本は中国提案に乗る必要はない。 / 中国があえて領土問題をからめてきたのには、問題を複雑化させることによって時間を稼ぎ、ガス田開発の既成事実化を図ろうとする意図を感じる。中国が開発未着手の海域についての共同開発を新たに提案しながら、開発に着手済みの「春暁」や「天外天」については日本の共同開発要求を拒否したことがそれを表している。(毎日)


中国の対応に誠意が感じられないのは残念だ。中国案は「日本が受け入れられないのを承知で出してきた時間稼ぎの提案」(外務省幹部)とみられても仕方がない。(日経)


尖閣諸島では領有権棚上げを言いながら、一方的に自国領にし、ガス田は対話解決と言いながら、開発の既成事実を積み上げていく。これでは中国は本気で話し合い解決を考えているのか疑わしい。結局は時間稼ぎかと批判されても仕方がない。(東京新聞)


さてその問題の一紙だけが



昨年10月、小泉首相が5回目の靖国神社参拝をしたことで中断されていた協議だ。冷え込んでいた日中の政治関係が徐々にではあるけれど、再び動き始めた。 / この対話再開の機運を大事にしてもらいたい。(朝日)

と評価しています。朝日にとっての「対話再開の気運」なるものが如何なる性質のものであるかは一目瞭然でしょう。しかも此処でもお得意の「日『中』関係の冷え込みは靖国参拝のせい」論が出て来ますが、数えてみますと朝日だけがさして長くもない社説中に靖國を3度も登場させているという、もはや健気と言ってやりたいほどの中南海への忠誠ぶり。他に靖國に言及しているのは讀賣の


今回の協議も、本来なら昨年10月に開くはずだった。中国は、小泉首相の靖国神社参拝というまったく別の問題を持ち出し、協議をここまでずれ込ませた。

があるだけ。その他4紙の社説には靖國のヤの字も出て来ません。当たり前でしょう。




二階経産相の人物評


朝日だけがこうも事態を肯定的に評価している理由はと云えば、読者も既にお察しの通り、



…抜き差しならない空気が和らいできた背景には、日中双方の変化があった。一つは、昨秋の第3次小泉内閣で、ガス田問題を担当する経産相が、強硬派の中川昭一氏から中国とつながりの深い二階俊博氏に交代したことだ。


中国側も全面的な関係冷却は避けるため、対話再開へ動きだした。温家宝首相は先月、訪中した二階経産相と会い、関係改善の意向を伝えた。温首相が日本の閣僚と会うのは久しぶりのことで、中国側の対応の変化をうかがわせた。

とまぁ要は中共のおぼえの甚だめでたい二階さんの起用を手放しで歓迎する論調。こうまでお約束通りだと産経あたりはさぞかし仕事がし易かったことでしょう。「中国の分断策を警戒せよ」と題した産経社説などは謂わば朝日社説を読む前に朝日への反論を書いておいた形。




心配な点は、最近の二階俊博経済産業相の言動である。今年一月、地元和歌山県での意見交換会で、「国内には試掘をやったらいいと、元気のよい発言をする人もいるが、私はその道は取らない」と明確に試掘を否定した。


また、二階氏は二月に訪中して温家宝首相と会談した。同時期に訪中した中川秀直自民党政調会長とは対照的な歓待を受けた。温首相は二階氏との会談で、ガス田開発問題について「係争を棚上げし、平和の海として協力していく」と述べた。二階氏は「日中両国の経済協力に明るい見通しが立ったら、日本に来てもらいたい」と訪日を要請したといわれる。(産経)




二階氏はこの問題を所管する大臣として、国益を重視し、日本の立場を強く主張すべきだ。「試掘」は元気のいい人が言っているのでなく、主権国家として当然の権利である。中国に誤ったメッセージを与えてはならない。 / 中国の胡錦濤国家主席は、日本国際貿易促進協会会長の橋本龍太郎元首相ら日中友好団体の代表らと会談する方向で日程を調整している。親中派の取り込みを狙う中国の分断工作には、重ねて警戒が必要だ。(同じく産経)

産経のは明らかに初めから狙ってやっているのでしょうけれども、他にも



二階経済産業相は「試掘の道は取らない」と言う。二階経産相はかつて、中国の江沢民・前国家主席の講話を刻んだ石碑を地元に建てようとした親中派だ。二階経産相の就任を中国が好感し、日本に歩み寄る可能性もある、と期待する向きも国内にはあった。


だが、今回の協議でも中国は開発中止要求を拒否した。前回協議の後、ガス田とガス田をつなぐパイプラインの敷設を完了させるなど、着々と開発を進めている。宥和(ゆうわ)的な姿勢だけでは、事態の打開は期待できない。(讀賣)



と、二階さんの経産相としての資質そのものを問題視する立場では讀賣が産経と同様。日経はそこまで行かないまでも、



経済産業相が親中派の二階俊博氏に交代したことなどから、一部に協議進展への期待感も出ていた。しかし中国側の対応はこれを裏切るものだった。(日経)

と、結果としては二階さんの起用が失敗に終わったことは認める形。「一部に期待感」の「一部」って誰だ、くらいのツッコミは入れてやりたくなりますが。


面白いのは東京新聞で、



先月、訪中した二階俊博経済産業相に温家宝首相は、ガス田問題では「『平和の海』として係争を棚上げし、協力する」と述べた。李外相も「対話を通じて争いを解決することを希望する」と言った。


その言やよし。問題は行動だ。



この直後に上述の「尖閣諸島では領有権棚上げを言いながら、…」が続くのですが、基本的に二階さんの起用そのものを問題視はしていない立場。





協議継続の意義についての言及、「共同開発」への評価



中国が開発を中止せず、共同開発のめども立たないのなら、日本も、試掘に向けた環境を整えるしかない。協議の継続が開発の既成事実化につながってはならない。 / 日中両国は、対話による解決を図ることで一致した。だが、協議を重ねるだけで前進を図れるかどうか疑問である。(讀賣)


二階氏はこの問題を所管する大臣として、国益を重視し、日本の立場を強く主張すべきだ。 / 中国に誤ったメッセージを与えてはならない。(産経)


もともと東シナ海ガス田の「共同開発」案なるものは支那が強引に採掘に踏み切った既成事実をなし崩し的に追認する形で生まれた代物なのですが、今やその「共同開発」案が日本政府内でもすっかり既定路線となってしまった感があります。最も強硬に「日本の立場の主張」を求める讀賣・産経あたりですら今では「共同開発」そのものへの異議は唱えていないのが情けない。もともと今回の協議で尖閣諸島の領有権問題を敢えて持ち出して来たのは支那の側です。讀賣・産経あたりは本来なら「共同開発」案など一回白紙の状態に戻してEEZ境界線確定から腰を据えてやれ(当然「係争中の海域」での一方的採掘などは国際法上も論外)とか、或いは天外天などのデータ開示を改めて支那サイドに強く迫れとかいった方向に行くべきでしょうに、それが言えないのは結局はアメリカがうんと言わないということでしょうか。ここをちゃんとしておかないと、ロイヤル・ダッチ・シェルとユノカルに手を引かせた一昨年の状態以前まで逆戻りしかねないのですが。



そんな中で今回いやに目を引いたのが毎日なのですが、



日本側も冷静に考えてみる必要がある。エネルギー確保の国家戦略から採算を度外視した開発を進める中国と共同開発を行うことが本当に日本の利益になるのかということだ。共同開発によって東シナ海が本当に「平和の海」になるのなら必ずしも否定するものではないが、埋蔵量やコスト面で採算が合うのかどうか。慎重に対応すべき問題である。(毎日)

意外な所から「共同開発案見直し」の声が出て来ましたが、毎日は基本的には



日中両政府は1カ月以内にも次回協議を開く方向で調整しているという。双方ともあまり熱くならず、じっくりと話し合ったらいい。(毎日)

と、「いつまでもダラダラと支那の時間稼ぎに付き合い続ける愚」についてはノータッチの筈。後述のように試掘にも言及していませんし。




政府は8日、提案を拒否することを確認した。日本は今後も粘り強く協議を続けるべきだが、中国が一方的に「白樺」の開発を強行する事態も想定して、日本側海域での試掘も視野に入れた対策を練るべきだ。 / 日中間で不測の事態が起きないよう、ガス田問題の話し合い解決に向けて協議の密度を上げるべきことは言うまでもない。(日経)

日経の場合は寧ろ協議を試掘とワンセットで考える論調のようです。試掘を進める際の支那との調整にウェイトを置いた書き方。…で、




今回の協議の唯一の合意は次回協議の早期開催だった。話し合い解決の道は残されている。中国の自制を促し、平和解決したい。東シナ海を「中国平和の海」ではなく、「日中平和の海」にすべきだ。(東京新聞)

今回えらく勇ましい語調で支那の態度を非難して見せた東京新聞ですが、おしまいまで読んでみれば結局「共同開発」に向けての協議を求めているだけというオチ。



この問題に打開策が見いだされれば、その効用は日中関係にとどまらない大きな意味を持つ。東南アジア諸国を巻き込んでエネルギーの地域協力を進める土台になりうるし、東アジア共同体の足がかりにもなる。(朝日)

例によって一紙だけ「大中華共栄圏」構想を垂れ流していますね。東京新聞でも此処までは書かない。




日本側の試掘の必要性についての言及



中国が開発を中止せず、共同開発のめども立たないのなら、日本も、試掘に向けた環境を整えるしかない。協議の継続が開発の既成事実化につながってはならない。 /  中国の姿勢に開発の既成事実化を図る意図がうかがえる。日本も、当然の主権の行使として、日本側海域で試掘に向けた準備を粛々と進めるべきだ。(讀賣)


二階氏はこの問題を所管する大臣として、国益を重視し、日本の立場を強く主張すべきだ。「試掘」は元気のいい人が言っているのでなく、主権国家として当然の権利である。中国に誤ったメッセージを与えてはならない。 / 中国の既成事実化を許さないためには、日本も海上保安庁や防衛庁などが協力し、万全の体制で試掘が行えるよう準備を急ぐべきである。(産経)


中国の既成事実化を防ぐためにも試掘に向けた準備を進め、国際司法裁判所に持ち込むことも考慮しておくべきだろう。(東京新聞)

と、讀賣・産経はもちろん東京新聞までが、どこまで本気で掘れと言いたいのかというニュアンスの違いこそあれ試掘の「準備」を主張しています。それに対し、



日本は今後も粘り強く協議を続けるべきだが、中国が一方的に「白樺」の開発を強行する事態も想定して、日本側海域での試掘も視野に入れた対策を練るべきだ。 / 白樺については、海底でガス田が中間線の日本側につながっていないかを調べるための試掘を具体的に検討する必要がある。(日経)

と、日経はあくまで「検討」どまり。朝日・毎日に至っては「試掘」なる語がそもそも登場しません。



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by xrxkx | 2006-03-10 12:46