【黄禹錫】今さら「最高科学者」でもあるまいが

昨10日のソウル大調査委の「最終発表」が済んだのを受けて,今日あたりは検察が何か目立った動きを見せるかと思って待っていたのですが,11日夜現在 特にそれらしいニュースは入って来ていないようです.


今日流れたニュースで最も多く目についたのは「黄の最高科学者地位剥奪」と「明12日に黄が記者会見」の2本くらいでしょうか.
「最高科学者」云々について日本語報道が既に流れているでしょうが,国内報道を見ていますと これに関連したニュースには やたらとウリ党の名前が出て来るのが目立ちます.
以下はその一例:



「政府,黄禹錫博士 第1号最高科学者地位剥奪」 / ウリ党・科技部 11日党政協議「必要なら国政調査も」 (デイリーサプライズ 01/11)

[2報: 2006-01-11 14:42]


「必要なら国政調査も行う」


ソウル大調査委が さる10日,黄禹錫(ほゎん・うそく)教授の2004年《Science》論文も操作された(訳註:捏造だったの意)という事実を明らかにした直後の11日午後,科学技術部とヨルリン・ウリ党が統制党政協議を通じて下した結論だ.


チョン・ジャンソン ヨルリン・ウリ党第4政調委員長は,この日の午後国会で開かれた科技部党政協議の直後に行われた記者ブリーフィングを通じて,「ウリ党議員らは黄禹錫教授の論文操作に関連して政府が自らの役割と責任を果たさなかったことを指摘した」と述べた.



政府,黄禹錫博士 第1号最高科学者地位剥奪


党政はこの日の協議で,今後類似の論文操作事件の再発防止の為,研究倫理及び研究の真実性確保の為の国際的基準のガイドラインを作ることで合意した.


外国の大学の「研究倫理局」のように各大学や研究機関に △研究倫理確保 △研究の真実性検証 などの業務を遂行する「研究真実性委員会(原文註:Organization for Research Integrity: ORI)」を設置・運営する方案などだ.


チョン委員長は「政府が大綱のガイドラインを既に策定済みの状態」だとしつつ,「しかし科学界の自立性を侵害するおそれがあるため,これらの意見を収斂した上で完成・発表する計画」だと伝えた.


党政はこの日,黄禹錫事態が幹細胞研究そのものに打撃を与えてはならないという点で合意した.


チョン委員長は「党政は,幹細胞研究綜合推進計画の為の研究チームを構成し,(原文註:黄教授でなくとも)幹細胞研究を続けられるよう支援することで意見の一致を見た」ことを明らかにした.
党政はまた,科学徒を夢見る青少年らの士気沈滞や,今回の事件により地に堕ちた国家信認度の回復の為のプログラムも策定する計画だ.


政府はこの日,黄教授に付与した「第1号 最高科学者」の地位を 最高科学者審議委員会の審議を経て剥奪することを決定した.


チョン委員長は,「審議委が黄教授の最高科学者地位を取り消すことで最終決定した場合,これまで黄教授に支援された全ての研究事業費なども併せて取り消されるものと見られる」として,「結果次第では黄教授はこれまで任されて来た政府の全ての公職を辞任すべきだろう」と述べた.
党政はこの日,最高科学者制度そのものについての独自検証の必要性も併せて論議した.




ここで頻繁に出て来る「党政」というのは 初めは日本の自民党で謂う所の政務調査会みたいなものかと思って読んでいたのですが,それにしては行政の領分に顔を出しすぎ.ついでに こんな政府-輿党間の協議を国会でやるというのも どういう制度になっているのか,正直言ってよく分かりませんが,それはさておき.


「ウリ党議員らは黄禹錫教授の論文操作に関連して政府が自らの役割と責任を果たさなかったことを指摘した」


云々というのがありますが,そんなものはウリ党が党内で別途議論すればよい話であって,政府が真っ先にやるべき事は青瓦台や科技部などの内部にあって黄と結託していた面々に対する処断である筈.
その辺が上の記事などを見てもさっぱり伝わって来ない.
盧武鉉の「鶴(?)の一声」でそうなっているのか,政府内に叩けば埃の出まくる人物が多すぎてそうなるのかは分かりません.


政府内部の人物でかねてから特に槍玉に挙がっているのは


  • 金秉準(きむ・びょんじゅん:政策室長)

  • 朴基栄(ぱく・きよん:科学技術情報補佐官)

  • 陳大済(ちん・でじぇ:情報通信部長官)


の3名で,これに黄本人を加えた4人の名前の頭文字を取って黄金バットと呼ぶのだそうな.
この辺の面々へのそれなりの取り調べと処罰が無ければ政府責任論はかわし難いと思うのですが,どうなるやら.


で,その中でも当blogでかねがね何度も取り上げて来た朴基栄のこと.昨日珍しく日本語でも報じられていたようですが,昨10日のソウル大調査委の「最終発表」に前後して 大統領補佐官辞任の意向を表明しているのだそうです.



朴基栄・青瓦台補佐官 辞意 (韓国日報 01/10 17:53)

朴基栄(ぱく・きよん)青瓦台情報科学技術補佐官は10日,黄禹錫教授チームの幹細胞操作波紋の責任を取って,李炳浣(い・びょんわん)青瓦台秘書室長に辞意を表明した.盧武鉉大統領は近く朴補佐官の辞表を受理するものと見られる.


金晩洙(きむ・まんす)青瓦台スポークスマンはこの日,黄教授事件についてのソウル大調査委の調査結果発表後「残念であり遺憾に思う」として「朴補佐官の辞表を受理するかどうかは人事権者である大統領が検討の上決定する」と述べた.




政府による懲戒を待たずに自発的に辞任の意向を表明していますが,引責辞職などという可愛げのあることを考えるタマであれば,遅くとも例の「カビ汚染報告握り潰し」の件が持ち上がった時点で相応の身の処し方があったはず.
今回の辞意表明も黄の教授職辞任表明のときと同じで 寧ろ責任逃れの為の遁甲の一種と見ておいたほうがよさそうです.
おおかた黄と同様,「辞意表明」だけして正式に辞表は出さずにおく肚でしょうし.


朴関連 もう一本.



朴基栄補佐官の役割は? (SBS 01/10 19:32)


アンカー: 2004年論文の共著者である朴基栄(ぱく・きよん)青瓦台補佐官は,論文への寄与が無かったとする結論が出ました.
朴補佐官は今日(原文註:10日)辞意を表明しました.
金ヨンテきしゃ記者です.


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記者: ソウル大調査委は最終報告書の中で,共著者らの役割を詳細に明らかにしました.


2004年論文の13番目の著者として名を連ねた朴基栄・青瓦台情報科学技術補佐官.


寄与なし」と明示されています.


植物学専攻の朴補佐官が幹細胞論文の共著者となったのは,多分に政治的考慮だったという分析です.


代価は,黄教授の研究に対する政府の全幅の支援として(訳註:朴を共著者に加えた黄のもとに)帰って来ました.


昨年1月のカビ汚染事故の際にも,黄教授は主務部署である科技部ではなく朴補佐官に連絡しました.


朴補佐官は大統領にこうした事実を報告すらしませんでした.


最小限の検証手続きや報告体系が無視されたとする批判を免れるのは困難です.


[朴基栄(原文註:12月中旬): 私も科学者として科学雑誌を全面的に信頼し信じるほか無かった](訳註:この部分,TVニュース放映時には おそらく12/15の黄による論文撤回意向表明当時の録画が挿入されたのだろう)


朴補佐官は今日辞意を表明しました.



朴の辞意表明そのものよりも こちらのほうが今後大きな意味を持ちそうです.
上のニュースにもある通り朴は2004年Science論文の共著者の一人であって,それが捏造と断定された以上 普通に考えれば朴も然るべき処分は免れ難い筈.
此処での「寄与なし」判定は裏を返せば「責任なし」判定に等しいわけですから,朴にとっては助け舟.
ソウル大が「寄与なし」判定を下した背景には,或いは青瓦台あたりから何か含めるところがあったか,或いはソウル大が青瓦台を敵に回すのを恐れて自発的にそうしたのか.


いずれにせよこうしたヌルい対応が大衆を「政府責任論」に傾かせる可能性は大いにあります.
前に少し触れましたが,かつて黄を熱烈支持していたメディアやら 人気取り目的で黄を担ぎ出しに掛かっていた諸政党にすれば,国民輿論の矛先が政府糾弾に向かうのは願ってもない事態の筈で,これから検察その他の調査が進むにつれ 政府への風当たりはますます強くなって行くことが予想されます.


大衆の間で政府糾弾気運が形成される上での目玉商品となるのは,やはり何といっても「黄チームに支援した予算は回収できるのか」とかいった類の「カネ返せ論」になるでしょう.
そうした中でこれまでの支援金についての監査に来週明けから監査院が着手するとのニュースもありました.
先ほどの「最高科学者地位剥奪」の記事に,国政広報処長・金チャンホ(以下金C)と 科技部基礎研究局長・金ヨンシク(以下金Y)へのインタビューが載っていましたのでご紹介しておきます.



----科技部が検察に先んじて独自調査を行うという意向を表明したと伝えられたが.


金C: 科技部が監査するという話は公式に提起されたことは無い.科技部は支援体系を運営する一種の機構であり,場合により監査の対象になることもあり得る.そうした意味で,監査院がやるのが適切だと判断している.公式に監査を要請する法的資格は総理が持っている.ソウル大調査委が2004-2005年度幹細胞論文に操作があったと発表した.これに関する監査を要請する予定だ.


----検察捜査と重複する部分があるが.


金C: おそらく監査院とは随時 機関間の自立的な役割配分が為されるのではないかと考えている.監査院は政策執行過程についての監査を行い,研究費についても流用があれば@@(訳註:おそらく「摘発」のミスタイプ)するシステムが作動していたかどうかについて監査を行うだろうと思う.その過程で不正があったと告発すれば,検察が捜査をすることになる.監査院の監査は告発よりも制度改善を目的とする.


----政府レベルの支援総額はどれくらいにのぼるか.


金Y: 1998年から2005年までに,計289億6400万ウォンを支援した.その中には施設費175億円も含まれる.純粋研究費だけだと115億円を支援した.@@(訳註:おそらく「主に」のミスタイプ)科技部・教育部・農林部が支援した.その他の後援金は民間で自主運営していた.契約をする時,ソウル大を「乙」,黄禹錫教授を「丙」とした(訳註:意味不明).これに従い一部はソウル大が控除した.なぜなら施設費など各種間接費があったからだ.


----支援された研究費について,科技部は監査を行っていなかったのか.


金Y: 毎年 研究進度を管理する課題があり,3年に1度 段階評価を行う課題がある.黄禹錫教授の場合,毎年進度管理をやっている.今年もこういう事が無ければ4月頃に報告を行うことになっていた.


----研究費回収や損害賠償請求の計画は無いのか.


金Y: 研究費について(訳註:監査院が,だろう)報告すれば清算をする.この時は精密清算チームが確認する.その場合,研究外目的に使われたものは回収する.今回も(原文註:研究が)取り消されれば回収もあり得る.


----以前に黄教授チームから研究費を回収したことはあるか.


金Y: 別のチームからはあるが,黄教授チームからは無い.私どもの支援する研究チームは,該当分野で最高の研究者だ.そのため,基本的に信義の原則によって研究していたと思うが,(原文註:論文や特許など)発表内容についてグループで評価する手続きを経て来た.


金C: 研究費を支援すれば科学者らが(訳註:使途などを,か)評価するが,(原文註:政府は)彼らの判断に依存せざるを得ない.政府が科学的結果を判定したり審査したりできる独自の権限を持っていないという点は御理解願いたい.


----純粋研究費の外に,施設はどうする計画か.


金Y: ソウル大と水原(すうぉん:地名)に施設がある.ソウル大にある施設は地面を少し掘る段階(訳註:まだ着工間もない?)に,水原にある施設は地ならしの段階にある.初期進展段階にあるため,様々な状況を見ることになるだろう(訳註:今後どうするかについては未定,の意か)水原にある施設は京畿道と一緒に準備しているものだが,私の考えでは用途変更よりは縮小かと思う.


金C: 一部では既存施設を用途変更すべきだという話が出ている.だが,この施設は黄禹錫教授個人に対する支援ではない.従って,幹細胞全般に対するものとして活用するのが妥当ではないか.幹細胞綜合計画に含めるのが筋と考える.


----黄教授が公式辞任の意思を既に表明しているが,処理はされていないのか.


金Y: 現在,黄教授が任じられている科学技術関連職位は8つ,その他の部署所管の職位は5つほどあるようだ.代表的なのは基礎研究会理事,韓国科学財団理事などだ.今回の機会に辞任処理を行う.


金C: メディアによりさまざまな問題が提起されたが,ソウル大調査委の発表前に政府が強制辞職させるわけには行かなかった.特に私の知る限り黄教授は公式に辞退書(訳註:辞表)を提出していない状態だ.




※01/12 誤字訂正
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by xrxkx | 2006-01-11 21:17 | ◆ 黄禹錫 / 卵子売買