【黄禹錫】結局卵子売買にも関わっていたわけね

いつまでこの話題ばかり採り上げているつもりかとお叱りを受けそうですが,まだ当分決着がつきそうに無いのでもう暫くお付き合い下さい.日曜・月曜とサボっている間に 黄禹錫を取り巻く疑惑のほうもまた進展がありました.


まず 今回の一連の疑惑の出発点だった卵子不法売買の件について少し補足.
さる11/25の記事中,私は


これとても黄禹錫や盧ソンイルがシロ判定を受けたわけではありませんので

と書いたのですが,その後あれこれ探してみましたところ,一昨日(11/27)に京畿道民日報という地方紙に以下のような記事があるのを見つけました.
私が25日に引用した韓国経済新聞やKBSの報道には 不法売買されていた卵子のことについては全く書かれていなかったわけですが,
上の京畿道民日報の記事では 11/24の会見で黄は,自分の研究チームのスタッフから提供を受けたという卵子だけでなく不法売買されていた卵子をも実験に用いていたことをはっきり認めています.
例によって悪文の見本みたいな文章なのですが我慢して訳出しておくと以下の通り:



補足1.以下の記事,タイムスタンプは会見当日である11/24の15時すぎになっていますが,この記事がGoogleニュースのアラートに引っ掛かって来たのは何故か27日になってから.


補足2.以下,「盧ソンイル」の漢字標記についてはこちらの東亜日報の記事に従って「盧聖一」としておきます.



黄禹錫教授「売買卵子」使用認める (京畿道民日報 11/24)

ソウル大・黄禹錫教授は24日午後2時,獣医科学大学(訳註:ソウル大獣医学部)3階講堂で記者会見を行い,実験用卵子の入手経路などをめぐって最近挙がっている倫理問題などについて研究チームの立場を明らかにした.


黄教授は記者会見で,女性研究員の卵子提供の事実について認めた.黄教授は「女性研究員1名が卵子を提供しようと言ったが,教授としての立場からそれは出来ないと断った」と明らかにした.


ミズメディ病院の卵子提供に関連して,黄教授は「盧聖一氏が卵子を提供すると言って来て訝しくは思ったが,専ら盧氏を信じて研究に専念した」として「そうした(原文註:売買された)卵子を心ならずも使用したことについてお詫びする」と述べた.


黄教授は「現在の法規定や倫理項目に照らせば,深い洞察が欠けていた」としながらも「倫理と科学は人類文明を牽引する2つの車輪だ」と説明した.


黄教授はしかし「研究チームは我が国が患者由来の幹細胞@(訳註:??)確立に成功した唯一の国だとしながら今後も国民らの声援を送ってほしい」(訳註:この文,主語-述語が全く不整合)と訴えた.


黄教授はまた,「今日午後をもって世界幹細胞ハブの所長職をはじめ政府および社会各団体の全ての兼職を退く」として「これからは純粋な科学徒としての道を歩みたい」と表明した.


一方,この問題を公式調査したソウル大・研究倫理審議委員会(IRB)が「黄教授は卵子受け取り過程で法規定および倫理準則に違背した事実は無い」という結論を下した.


保健福祉部は24日,「ソウル大獣医大研究倫理審議委員会(IRB)の報告書の内容に基づけば,研究チームの卵子受け取り過程に於ける法規定および倫理準則違背の事実は無かったものと認める」と表明した.


福祉部はこの日午前,黄禹錫教授の研究チームの卵子受け取り調査結果についてのブリーフィングを行い,「黄禹錫教授が昨年5月,研究員の卵子提供の事実を知り,平均150万ウォンを支払った事実も最近になって認めたとするソウル大獣医大研究倫理審議委員会(IRB)の報告書内容を認める」と表明した.


IRBは,黄教授の研究チームが2004年のScience誌論文研究時にミズメディ病院から卵子の提供を受けており,このとき盧聖一理事長が卵子を提供した一部女性に平均150万ウォン相当を支払った事実を確認した.IRBは,黄教授の研究チーム内の女性研究員2名が卵子を寄贈し,彼女らは研究に進捗の無い状況で研究熱に基づいた自発性に基づいて(訳註:重複ママ)犠牲となったものと分析した.


卵子を提供した女性研究員は,昨年5月のNature誌の報道後,事案の重大性を悟って翻復インタビュー(訳註:Nature報道以前の何を覆したのか不明瞭)を行い,黄教授が研究員との面談を通じて卵子提供の事実を認めたのもこの時だったことが調べにより判明した.一部卵子提供者に対し実費などが支給されていた事実を黄教授が認めたのは最近の事だとIRBは明らかにした.


IRBは,ヘルシンキ宣言など国際的倫理ガイド(訳註:ガイドラインか)にも反しておらず,黄教授が(訳註:卵子寄贈を)するなと勧めたにも拘わらず女性研究員らが自発的に(訳註:卵子を)提供したのには東洋と西洋の間の文化的な違いもあると説明した.



まずミズメディ産婦人科の盧聖一については,以前採り上げた11/08付の東亜日報の報道中では彼は「不妊患者たちを相手に客引き行為を行ったり,ブローカーたちに斡旋料を支払うなどの不法行為は決してやっていない」などと言っていたわけですが,まぁ実際そうだったのかも知れません.何しろブローカーに斡旋量を支払うどころか自分で卵子提供者らに報酬を払っていたことを白状したわけですから.これについては前述の東亜日報の11/22付記事も参照.


一方の黄禹錫ですが,盧聖一が卵子提供を申し出て来た際に疑いを持ったと言う以上,盧らのミズメディ産婦人科での卵子入手のやり方がどういうものであったかについて黄は少なくともある程度知っていたと考えざるを得ないでしょう.そのことを匂わせる発言は,疑惑が黄の身に及んだ初期から何度か見られます.以前採り上げた11/08付の東亜日報の報道中,黄自身が「不法に売買された卵子が不妊施術に用いられたことはあるかも知れないが」と語っていたのはその最たる例.


要するに黄は「心ならずも使用」どころか,特に問題は無いとタカを括っていたということ.
実際,黄は「お詫び」した舌の根も乾かぬうちに「現在の法規定や倫理項目に照らせば…」と述べていますが,これは裏を返せば「当時の法規定や倫理項目」に照らせば自分の取った行動にはなんら問題は無かったのだという弁明でしかない.その後に続く「車の両輪」発言などに至っては完全な開き直り.


そういえば11/25の記事に頂いたコメントの中に


今年になるまで韓国ではそれが非合法ではなかったという点は考慮しなければならないのではないか

というのがありましたが,なるほど「考慮」はすべきでしょう.極論すれば「殺人が非合法でない国」だって理屈の上ではあってよいわけです.文明人ならとてもそういう社会には住めたものではないというだけの話.こうやって韓国あたりの倫理問題など延々と観察し続けることに何らかの価値を見出すとすれば,それはとりもなおさず「日本はああならないようにしたいですね」という一点にあります.


保健福祉部が事態の幕引きを図っている件


そもそも韓国で卵子の売買を禁じる法律が施行されたのは今年1月のことらしいですが,同法律の施行以後に黄は例のES細胞製造など卵子を用いた実験をやったのかやらなかったのか.やったとしたらその実験に用いた卵子はいつどうやって入手したものなのか.もっと単刀直入に言えば「同法律の施行前に確保したものを冷凍保存でもして,その後何ヶ月にも亙って随時解凍しては使った」とでも言うわけか.こんなことが出来るなら それだけで幹細胞研究とは別個に論文の1本も書けそうなくらいの業績になる筈なのですが.


ともあれその辺を調べれば上の記事中の黄の「現在の法規定や倫理項目に照らせば…」などという言い逃れも容易にボロを出すのでしょうが,実際にはそこのところをはじめ外部からの徹底した調査が行われるどころか,上の記事に見られるように「調査」に当たったのはソウル大内部の審議委員会という謂わば内輪の組織.しかも保健福祉部は独自に外部点検・調査を行うでもなく,単に上の審議委員会の報告書を鵜呑みにする形で「法規定および倫理準則に違背した事実は無い」を繰り返しているだけ.こんなものが調査と呼べるか.


上述の以前採り上げた11/08付の東亜日報の記事にもあるように,卵子売買の事実について保健福祉部はどうやらかなり前から知っていたらしい.罷り間違えば自分たちにも火の粉が降って来かねないわけですから,彼らにすれば「何処で蜥蜴の尻尾切りをやるか」という問題に当然なる.これはあくまで憶測ですが,おそらく盧聖一を切って黄禹錫を生かす方向で保健福祉部は動いているのでしょう.


ところで保健福祉部のコメントは 黄に「自発的に」卵子寄贈を申し出たとされる女性研究者らのことにも言及していますが,もしも彼女らが後に記者会見なり何なりを通じてその「自発性」を否定でもしようものなら,彼女らは韓国政府を敵に回すことになります.その時に誰が彼女らの味方に付くかが一つの見所ではあります.



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by xrxkx | 2005-11-29 18:55 | ◆ 黄禹錫 / 卵子売買