【靖國】野田佳彦氏の質問主意書に対する政府の答弁書について (1)

一昨日からあちこちで話題になっていた,首相の靖國参拝に関する野田佳彦議員(民主)の主意書の件.



 政府は二十五日の閣議で、さきの大戦後、連合国によって「戦犯」とされた軍人・軍属らが死刑や禁固刑などを受けたことについて、国内法上は戦犯は存在しないとの見解を明確にした答弁書を決定した。首相の靖国神社参拝に関しては「公式参拝」であっても、宗教上の目的ではないことが外観上も明らかな場合には、憲法に抵触しないとの見解を改めて示した。いずれも民主党の野田佳彦国対委員長の質問主意書に答えた。
 答弁書は「(極東国際軍事裁判所やその他の連合国戦争犯罪法廷が科した)刑は、わが国の国内法に基づいて言い渡された刑ではない」と指摘。A、B、C各級の「戦犯」は、国内では戦争犯罪人とはいえないことを明確にした。
 この問題で自民党の森岡正宏厚生労働政務官(当時)は今年五月、「(戦犯とされた人々は)罪を償っており、日本国内ではもう罪人ではない」と発言したが、細田博之官房長官は「政府見解と大いに異なっているので論評する必要もない」と述べていた。
 また、答弁書は首相の靖国参拝に関し、「戦没者の追悼を目的とする参拝であることを公にするとともに、神道儀式によることなく、宗教上の目的によるものでないことが外観上も明らかである場合は、憲法二〇条三項の禁じる国の宗教的活動に当たることはない」との見解を改めて表明した。
 靖国参拝について藤波孝生官房長官(当時)は昭和六十年、「首相、閣僚が国務大臣としての資格で戦没者の追悼を目的として、靖国神社の本殿、社頭で一礼する方式で参拝することは、憲法の規定に違反する疑いはない」との政府統一見解を発表している。
 首相の靖国参拝をめぐっては、大阪高裁が拘束力を持たない「傍論」で靖国参拝を「公的行為」と認定。憲法の禁止する宗教的活動に当たるとしたが、政府見解はこれを真っ向から否定した。
(産経新聞) - 10月26日2時47分更新



昨日 野田氏のwebサイトに同氏の主意書と政府の答弁書の全文が掲載されているのを見つけました
(snapshot保存済).


上の産経の記事で謂う所の「公式参拝であっても合憲」というのは,
このうち「一.『戦犯』の名誉回復について」の6番目の質問(以下「質問1.6」などのように標記)のことです.
質問に曰く,


すべての「A級戦犯」の名誉が国内的にも国際的にも回復されているとすれば、
東條英機以下十四名の「A級戦犯」を靖国神社が合祀していることにいかなる問題があるのか。
また、靖国神社に内閣総理大臣が参拝することにいかなる問題があるか。

これに対する政府の答弁は こう:

 靖国神社の行う合祀は、宗教法人である靖国神社の宗教上の事項であるから、
政府としては、合祀についていかなる問題があるのかお答えする立場にない。

 靖国神社に内閣総理大臣が参拝することにいかなる問題があるかとのお尋ねについては、
法的な観点から申し上げれば、かねて述べているとおり、
内閣総理大臣の地位にある者であっても、
私人の立場で靖国神社に参拝することは憲法との関係で問題を生じることはないと考える。
また、内閣総理大臣の靖国神社への公式参拝(内閣総理大臣が公的な資格で行う靖国神社への参拝をいう。)についても、
国民や遺族の多くが、靖国神社を我が国における戦没者追悼の中心的施設であるとし、
靖国神社において国を代表する立場にある者が追悼を行うことを望んでいる
という事情を踏まえて、
専ら戦没者の追悼という宗教とは関係のない目的で行うものであり、
かつ、その際、追悼を目的とする参拝であることを公にするとともに、
神道儀式によることなく追悼行為としてふさわしい方式によって追悼の意を表することによって、
宗教上の目的によるものでないことが外観上も明らかである場合には、
憲法第二十条第三項の禁じる国の宗教的活動に当たることはないと考える。


産経は「公式参拝であっても合憲」と威勢のよい見出しを付けているけれど,
中身を読んでみれば 案の定「こんなの,そもそも靖國参拝と呼べるのか」という代物.
何度でも言いますが「ただ行けばよいというものではない」のです.
例えば


国民や遺族の多くが、靖国神社を我が国における戦没者追悼の中心的施設であるとし、
靖国神社において国を代表する立場にある者が追悼を行うことを望んでいるという事情

などは その最たるもの.靖國は単に「戦没者追悼」の為にあるのではありません.
これについては,関連として
10/18に引用させて戴いた西尾幹二氏のご意見

靖国参拝は一旦緩急あるときに英霊の後を追って自分も国のために戦うという誓いのために行われるのであって、不戦の誓いのために行われるものではない

を改めて貼っておくことにしましょう.


さらに,政府の答弁はといえば,その「戦没者の追悼」を「宗教とは関係のない目的」なのだという.
亡くなった方の御冥福をお祈りする行為が宗教とは関係無いと謂うのは,
現在生きている人間の心の救いだとか現世利益だとか,そういったものだけで
宗教というのは成り立っているのだと謂っているのと変わりない.
そういう「あの世のことは考えない宗教」というのが実際に世界に幾つあるのか,
素人の私には皆目見当も付きませんが.


で,上の答弁の結論は「宗教とは関係のない目的」でやっているから憲法違反には当たらない,というもの.
現行憲法の第20条第3項には


国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

とありますが,政府としては首相の靖國参拝から宗教色を取り払うことばかり考えず,寧ろ

「内閣総理大臣たる個人──「公人」か「私人」か等という無意味な区別をするのではなく──が
何故『国及びその機関』に該当するのか」

を反問したほうが 余程分かり易くないか.


是非とも野田氏のwebサイトで全文を熟読して戴きたいのですが,
この答弁以外にも政府はスットコドッコイな主張をあちこちで行っています.
読んでみて「まぁ,こんなもんだろうな」というのが正直な感想.
それはそうでしょう.
かつて森岡正宏議員の「A級戦犯はもはや罪人ではない」発言を即刻揉み消した時と現在とで,
官邸の中の人は変わっていないのですから.


突っ込み所が多すぎるので以下次号.



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by xrxkx | 2005-10-28 12:08 | 時事ネタ一般