【靖國】「個人の信条」「不戦の誓い」はもう聞き飽きた
 小泉首相が靖國参拝をめぐって 相も変わらず「一人の人間として参拝」などの発言を繰り返しているというお話.
小泉首相:靖国参拝は私的との認識 参院予算委で答弁 ─毎日 05/20
「なぜ靖国参拝をすることが憲法違反で、私が被告人になるのか、不思議でしょうがない。個人の信条を他人が憲法違反だと言うのは理解に苦しんでいる」
首相の職務として参拝しているものではない。個人として参拝しているものだ
 こういうところで安易に「個人の信条」などを持ち出して問題を先送りするのは そろそろやめていただきたいものです.こんなもの,裏を返せば首相自らが「さすがに公式参拝は憲法上マズイかも」と公言しているようなものです.参拝するならあくまで堂々と公式参拝すればよいし,そうでなくては首相としての任期中に参拝する意味が無い.それを違憲とする判決が最高裁で出たなら 弾劾裁判をやるまでのこと.そこまで腹を括らずに こうやって逃げてばかりいるから,「せめて任期中は参拝は控えるべき」だとか何とか言い出す者が与野党を問わずあとを絶たないのです.
 誤解の無いように予め言っておくと,私自身も閣僚や国会議員などの公式参拝が憲法の定める政教分離の原則に抵触しないかどうかという点については国内で十分な議論があって然るべきだと考えています.
 更に付け加えるなら,私は「問題なし」の側に立ちます.靖國公式参拝がマズイというなら,その前にもっとマズそうなものがいくらでもあるでしょう.宗教系私学に国が助成金を出していることとか,少なからぬ神社仏閣を国宝として国民の税金で保護していることとか,極めつけは公明党が法禁されないどころか連立与党の一角を担っていることとか.
 さて,小泉首相の心構えの程は斟酌してみるだけ虚しいので これくらいにして,上の「私人」発言は当然海外にも直ちに伝わり,新華社あたりは案に違わずこうやって鬼の首でも取ったように「私人としての参拝」を対外的にも喧伝していました.特に以下のくだり:

"I pay a visit as a person and not as duty of the prime minister," Koizumi was quoted as saying at a House of Councillors Budget Committee session.

"Junichiro Koizumi, who is prime minister, is paying a visit as an individual," he reiterated.

 「内閣総理大臣である○○が…」というのは,20年前に当時の中曽根首相も記者団の「公人か,私人か」という問いをはぐらかす際に頻繁に用いた言い回しです.が,靖國を見る国民の目にせよ歴史認識の問題にせよ支那との関係の問題にせよ,朝日イズムが幅を利かせていた20年前と今とでは状況は大きく変わっています.今どき中曽根発言の焼き直しなど芸が無さすぎる.
 こういうやり方を今また支那や朝鮮に向けて使ってみようとする首相は,まさか中共が「個人としての参拝ですか,では問題ありませんね」などと折れるとでも思っているのでしょうか.日本側が中途半端に「これは私人としての参拝ですから」などと「周辺諸国への配慮」を示してみせれば,中共あたりは寧ろそれを
「小泉首相が公式参拝を明言できずにいるのは,日本の侵略の被害者であるアジア諸国への疚しさがあるからだ」
といった類の反靖國キャンペーンの足掛かりとして目一杯利用しに掛かるのがオチでしょう.実際,次のようなニュースもありました:
中国前外相、靖国参拝中止求める・与党幹事長と会談 ─日経 05/21
 この席で胡錦涛は
「(日本には)近年目にしたくない動きがある。具体的にはA級戦犯が祭られている靖国神社への日本の指導者の参拝教科書問題、台湾問題だ」
と3つを挙げたという.しかも
「昨年のチリでの首脳会談などで、今年は(戦後六十年の)敏感な年だと伝えた。約束を守っていない
とも言ったという.去年のAPECの折に具体的に何をどう「約束」したのか明らかにして戴きたい所ですが,「敏感な年」云々は日本とは関係ないことです.支那国内の反日輿論を制御可能な線まで抑えておけるかどうかは あくまで中共の執政能力の問題にすぎません(早い話が,ロシア人は対独戦勝60周年の「敏感な年」に反独暴動など起こしているか?).
 それにしても,今回北京詣でに出掛けた武部・冬柴の両名の腑甲斐無さにも困ったものです.上の産経の記事によれば,唐家璇との会談では
 武部、冬柴両氏は、「過去の政策に誤りがあり、中国に損害と苦痛を与えたことをおわびする」としながらも、靖国参拝は「一般的に戦没者の慰霊と不戦の誓いということであり、軍国主義の美化にはつながらない。日本は戦争を放棄し、国際社会に貢献している。戦後六十年の平和国家としての道のりをみてもらいたい」
とあり,また胡錦涛との会談中には
 これに対して、武部氏は「戦後日本は反省のうえに平和国家の道を歩んだことを自負しており、少しは評価してほしい」と主張、歴史問題について「過去の過ちを二度と繰り返さないよう、歴史を風化させてはならない。こうした考えを若い人たちに伝えたい」との考えを示した。

 戦没者の慰霊であるとする靖国参拝の意義には積極的に触れなかった。四月に中国各地で起きた反日デモによる日本大使館などへの破壊行為についても「謝罪と賠償」などを提起しなかった。
とある.ヤメナサイおじさんごときを相手にまた「お詫び」しています.まぁ,日本側はトップがトップですから 他に何とも言ってみようが無いのでしょうけれども.
 ところで,上の唐家璇との会談・胡錦涛との会談ともに,どの記事を見ても冬柴が自分の口で発した言葉が一つも紹介されていないのはどういうわけでしょうね.曲がりなりにも連立与党の幹事長ともあろう御方が よもや中共の言い分を黙ってハイハイと聴いていたとは思いたくないものですが.
 話を戻します.胡錦涛が何を指して「約束が違う」と言っているのか分かりませんが,一方で支那の側からは具体的な約束らしい約束を何一つしようとしていないのは相変わらずです.一連の反日暴動による日本大使館・領事館損壊についても未だに謝罪ひとつしないのは言うに及ばず,また日支関係の「最大の障碍」と言っていた筈の靖國参拝をもしも日本側がやめるか もしくは所謂「A級戦犯」分祀を行なった場合についても 具体的にどうするという話を一切しない.下の共同の記事──外交部の孔泉の発言ですが──にも こうあります:
常任理入り支持は困難に 中国、首相靖国参拝で ─共同 05/19
小泉首相が参拝を中止すれば常任理事国入りを支持するかとの質問に対しては、回答を避けた。
…と,あくまで言質を取られることは避けている.中共に頭の上がらぬ かの阿南駐日大使ですら,「首相が靖國参拝を中止しても支那は日本の常任理事国入りを支持しないだろう」と いわば匙を投げています
 もっとも,これで支那を責めるのは筋違いで,当世の日本政府のヘタレぶりをよく知っている中共にすれば 自ら妥協案を示す理由が無い.何度でも「歴史を鑑とし…」なるおまじないを繰り返し,日本側から無限の譲歩を引き出せばよいと彼らが考えるのは当然でしょう.情けない話ですが,毅然とした外交態度を貫けない国が他国に侮られタカラレるのは謂わば自業自得です.
 結局のところ,上のように支那の対日外交の全ての尊大さ・図々しさの源泉は歴史認識の問題での対日優位にあるのですから,日本が支那人の言い立てる虚構の歴史を一切受け入れず,彼らの歴史認識と私たちのそれとの いずれがより真実に立脚しており妥当であるかを 全世界の見守る中で堂々と主張すればよいだけの話です.少なくとも小泉首相の任期中にはそんなことは無理でしょうが.




◇ 記事 控え ◇
小泉首相:靖国参拝は私的との認識 参院予算委で答弁 ─毎日 05/20
 参院予算委員会は20日午前、外交問題などに関する集中審議を行い、小泉純一郎首相は靖国神社参拝をめぐる違憲訴訟について「なぜ靖国参拝をすることが憲法違反で、私が被告人になるのか、不思議でしょうがない。個人の信条を他人が憲法違反だと言うのは理解に苦しんでいる」と提訴した原告を批判した。

 首相はさらに「首相の職務として参拝しているものではない。個人として参拝しているものだ」と述べ、事実上、私的参拝との認識を示した。辻泰弘氏(民主)の質問に答えた。

Koizumi says he visits shrine as a private individual ─新華社 05/20

TOKYO, May 20 (Xinhuanet) -- Japanese Prime Minister Junichiro Koizumi said Friday that when he visits the notorious Yasukuni Shrine he does so as a private individual andnot in his capacity as premier, Kyodo News reported.

"I pay a visit as a person and not as duty of the prime minister," Koizumi was quoted as saying at a House of Councillors Budget Committee session.

"Junichiro Koizumi, who is prime minister, is paying a visit as an individual," he reiterated.

Koizumi has paid four visits to the Tokyo-based Yasukuni Shrine, which honors 14 Class-A World War II criminals along with Japan's war dead, since he took office in April 2001, with the latest one on New Year's Day in 2004.

Whether Koizumi has done so in his official capacity has been subject to legal dispute as the country's Constitution keeps the state outside of religious activity.

On Monday, Koizumi suggested that he will visit Yasukuni Shrine again this year during questioning at the House of Representatives Budget Committee, saying "I don't understand why I should stop visiting Yasukuni Shrine."

"I will decide appropriately when to go," he said.

Koizumi's visits to the shrine have aroused strong protests from other Asian countries which suffered during Japan's past aggression.

China considers the shrine visits by Japanese leaders as one of the most difficult issues in current China-Japan political relations, saying the issue reflects what the Japanese government thinks about Japan's history of aggression against other Asian countries.


中国前外相、靖国参拝中止求める・与党幹事長と会談 ─日経 05/21
【北京=山田宏逸】自民党の武部勤幹事長と公明党の冬柴鉄三幹事長は21日、訪問先の北京市内で唐家セン国務委員(前外相)、王家瑞中国共産党対外連絡部長と相次いで会談した。唐前外相は小泉純一郎首相の靖国神社参拝について「信念や信仰の問題ではない。日本の将来にとって重要な問題と考えて対処してほしい」と述べ、改めて中止を求めた。

 武部氏が「戦後60年の平和国家としての道のりを評価してほしい」と答えたが、唐前外相は「心配だから言っている」と応じ、平行線だった。ただ唐前外相は「両国がこんな関係にあるときこそ、率直な意見交換をする必要がある」とも述べ、両国の関係改善に向けた対話を継続する姿勢も示した。

 武部氏らは王部長との会談で、中国人団体観光客向けの査証(ビザ)発給地域を恒久的に中国全土に拡大する日本政府の方針を伝えた。王部長も理解を示した。小泉首相が23日に来日中の呉儀中国副首相との会談で正式に提案する。

首相の靖国参拝中止を 中国・唐前外相 与党幹事長に要請 ─産経 05/22
【北京=佐々木美恵】自民党の武部勤幹事長、公明党の冬柴鉄三幹事長は二十一日夜、北京の釣魚台迎賓館で唐家●国務委員(前外相)と会談し、唐氏は小泉純一郎首相の靖国神社参拝の中止を改めて促した。
 会談で唐氏は「信念、信仰、伝統、文化の問題ではない。日本の将来にとって重大な問題として対応してもらいたい。歴史を鑑(かがみ)に未来へ向かっていくうえで極めて重要だ。アジア全体の今後にとっても重要だと、認識してもらいたい」と強調。同時に、「日中関係は十字路に差しかかっている。良い方向に進めるため双方が努力していかなければならない」と、改善に意欲を見せた。
 武部、冬柴両氏は、「過去の政策に誤りがあり、中国に損害と苦痛を与えたことをおわびする」としながらも、靖国参拝は「一般的に戦没者の慰霊と不戦の誓いということであり、軍国主義の美化にはつながらない。日本は戦争を放棄し、国際社会に貢献している。戦後六十年の平和国家としての道のりをみてもらいたい」と反論。反日デモに関し「日本人の心を和らげるメッセージがあってしかるべきだ」とも述べ、中国側に謝罪も求めた。唐氏は「ここ数年が心配だから言う」と付け加えた。
 これに先立つ中国共産党の王家瑞対外連絡部長との会談では中国共産党と自民、公明両党の幹事長レベルの会合を毎年一回程度、定期的に行うなど、政党間交流を強化していくことで一致した。
●=王へんに「旋」

靖国参拝、中止を要求 胡主席、与党幹事長に ─産経 05/23
【北京=佐々木美恵】中国訪問中の自民党の武部勤、公明党の冬柴鉄三両幹事長は二十二日、北京市内の人民大会堂で胡錦濤国家主席と会談した。胡主席は「(日本には)近年目にしたくない動きがある。具体的にはA級戦犯が祭られている靖国神社への日本の指導者の参拝と教科書問題、台湾問題だ」と述べ、小泉純一郎首相が靖国神社参拝を中止すべきだと重ねて要求した。

 胡主席は会談で「昨年のチリでの首脳会談などで、今年は(戦後六十年の)敏感な年だと伝えた。約束を守っていない」とし、参拝継続の考えを示している小泉首相の姿勢に強い不快感を示した。胡主席はさらに「大きなビルを建設するにはれんがをひとつひとつ積み上げないとできないが、ビルは一瞬にして壊すことができる」と指摘した。

 その一方で胡主席は日中関係について「最重要であり、アジアと世界の平和に貢献する。友好発展は両国の根本的利益にかなう」とも述べた。

 そのうえで、四月の小泉首相との日中首脳会談で胡主席が示した(1)日中共同声明、日中平和友好条約などの重視(2)歴史をかがみとして未来に向かう(3)台湾問題の適切な処理-など「五つの提案」に沿って、日中関係の改善を図るべきだとの考えを改めて示した。

 これに対して、武部氏は「戦後日本は反省のうえに平和国家の道を歩んだことを自負しており、少しは評価してほしい」と主張、歴史問題について「過去の過ちを二度と繰り返さないよう、歴史を風化させてはならない。こうした考えを若い人たちに伝えたい」との考えを示した。

 戦没者の慰霊であるとする靖国参拝の意義には積極的に触れなかった。四月に中国各地で起きた反日デモによる日本大使館などへの破壊行為についても「謝罪と賠償」などを提起しなかった。

 会談では胡主席が自民、公明両党と中国共産党の交流強化に期待感を表明した。また、現在は沿岸部に制限されている中国人団体観光客のビザの発給対象地域の拡大について、二十三日に東京で行われる小泉首相と呉儀副首相との会談で合意することも確認された。

常任理入り支持は困難に 中国、首相靖国参拝で ─共同 05/19
【北京19日共同】中国外務省の孔泉報道局長は19日の記者会見で、日本の国連安全保障理事会常任理事国入り問題に関連し「日中両国間の最も困難な政治問題は、A級戦犯が合祀(ごうし)されている靖国神社への日本の指導者の参拝問題だ」と強調した。
 孔局長の発言は、小泉純一郎首相が参拝をやめるか、A級戦犯を分祀しない限り、中国が日本の常任理事国入りを支持するのは困難との立場を示唆したものとみられる。
 小泉首相が参拝を中止すれば常任理事国入りを支持するかとの質問に対しては、回答を避けた。

首相が靖国参拝中止しても中国は賛成しない 常任理入りで阿南大使見解 ─産経 05/18
 阿南惟茂駐中国大使は十八日午前、自民党の外交関係合同会議で、日本の国連安全保障理事会常任理事国入りへの中国の対応について「中国は反対している。小泉純一郎首相が靖国神社を参拝しなくても、反対をやめて賛成に回るということにはならないと思う」と述べた。
 ただ、中国が常任理事国として拒否権を行使する可能性があるかなど、最終的な対応に関しては見解を示さなかった。出席議員の質問に答えた。
 また、加藤良三駐米大使は「米国は日本の常任理事国入りに賛成しているが、全体から見れば、自分たちの立場を維持することが重要だと思っているのではないか」と指摘。米国は常任理事国拡大を最小限にとどめたい意向で、日本がドイツなどと共同提案する予定の決議案への賛否は流動的との認識を示した。
(産経新聞) - 5月18日15時51分更新

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by xrxkx | 2005-05-23 12:00 | 時事ネタ一般