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北核処分のこと
 前回北核問題についてちょっと書いた後,またあれこれと動きが忙しくなって来ていて,正直言ってニュースを追いかけるのに手一杯です.これだけ報道内容が錯綜している時期に うかつなことは書きたくないのですが….

 北朝鮮が核実験断行の意思をちらつかせる中での 今回のアメリカによる空爆作戦の示唆は,どちらかというと北朝鮮そのものよりは中共への圧力になっている面が大きいでしょう.これで中共が北朝鮮を6者協議の席に引きずり出して来ることが出来るならよし,出来なければ今後北朝鮮の処分に関して中共には口出しさせないという意思表示のように見えます.北朝鮮にすれば もう この一手で押せるところまで押してから交渉に臨む以外に無いと観念して(?)いるだけ楽でしょうが,6者協議のホスト国として こういう国の処分を請け負ってしまった中共のほうが 寧ろ気が気でないのではないか.

 アメリカは中共が「もう朝鮮のことは面倒見切れないアルヨ」と言い出すのを待っているのでしょう.北が6者協議に出て来るにせよ 来ないにせよ,ここらで中共に従来の対北関係の始末を付けさせることを本気で考えている筈です.
 逆に言えば,このようにいつでも《次の段階》に進む用意があるという断乎たる意思表示を前提にしてこそ 6者協議などという枠組みが実質的な効力を持ち得るのであろうことは,かたや力というものの裏打ちを伴わない,専ら美辞麗句を並べ立て経済援助をばら撒くだけの外交に終始して来た何処かの国が現在どういう外交的立ち位置に置かれているかを見れば一目瞭然でしょう.

 アメリカにすれば,6者協議に先立っての両国間での調整──北朝鮮が働き掛けている「主権国家」としての体制保証の問題云々についての──などは無意味でしょう.
 北が単なるブラフでなく実際に核実験に踏み切ろうとした場合,アメリカは武力行使をためらわないでしょう.逆にアメリカがここで攻撃を思いとどまるような国であったなら,それこそイラク戦争の正当性が再度問われることになります.何せイラクの場合は大量破壊兵器など結局見つからずじまいだったのに比べ,今回の北朝鮮の場合は本人たちがはっきり核保有の意思表示をしているわけですから.

 7日付の日経によれば アメリカは既にB-2やF-15を待機させているそうですが,一方 地上軍の投入に必要な揚陸艦とかヘリ空母とかを準備しているという話は全然伝わって来ていませんから,今回のところはあくまで核施設への空爆が主体で,都市の制圧などは想定していないらしい.これでいざ武力行使という段になったとしても,アメリカの攻撃対象は少なくとも初動では咸鏡北道や両江道など北方に絞られるでしょう──むろん北朝鮮の応戦の仕方次第で事態がどう転ぶか分かりませんが.
 ともあれ,今回アメリカが北朝鮮の体制転覆までを視野に入れた作戦行動を考えているわけではないことは ほぼ確実でしょうから,ここでは「ポスト金正日」云々については深入りしません.

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 そんなことよりも,日本にとっては「その時日本はどうするのか」という微妙な問題が先立ちます.
 日本にとって,米軍が北核除去に乗り出すのを妨げる積極的な理由は当然何もありません.
 ただ,北には日本人拉致被害者がいます.それも,特定失踪者を含めれば何千人という規模で.もし金正日が北朝鮮にいる日本人拉致被害者を寧辺などに送って「人間の楯」に使おうとした場合,日本はどうするのか.北朝鮮の核という 東アジア地域の安全保障にとって最も危急の阻害要因の排除と,北で今も生きている日本国民の生命の安全とを,日本は秤に掛けなくてはならなくなる.「それでもやるべきだ」と日本はアメリカに言えるのかということです.
by xrxkx | 2005-05-11 00:22 | 時事ネタ一般