北核問題安保理行きのこと
 5月に入ってから北核問題周りの動きが何やら妙に忙しくなって来ているようです.アメリカがようやく6者協議に本気で見切りをつけようとしているらしいのは 日本にとってもよい兆候でしょう.
  1. 「6者」決裂なら安保理協議 北朝鮮の核、ロシアも同意 ─朝日 05/01
  2. 北朝鮮の安保理付託に中ロが拒否権発動も・前米国務副長官 ─日経 05/04
  3. 北朝鮮問題の安保理協議…米は制裁より非難決議 ─読売 05/04
  4. 対北制裁 安保理付託へ日米協調 「6カ国」困難 月末にも手続き ─産経 05/05
  5. 米政府、6か国協議=極めて難しい ─テレビユー福島 05/06
 もちろん これでもし安保理付託ということになっても すぐに経済制裁とは行かないでしょう.ロシアが安保理行きに同意したといっても,経済制裁を決議する段になって賛成するという保証は全然ないわけですし,第一 中共は間違いなく渋るでしょうから.
前にも書いたように中共は6者協議の枠組みを単に北核問題解決の為の協議の場とは見ていないでしょうし,それに経済制裁発動ともなれば大量の脱北難民が国内に流れ込むのを嫌がるでしょう.何より朝日が『北朝鮮の核 「6者」に戻るしかない』などという社説(04/29付)を載せているのが,中共が6者協議路線を諦めていないことの最も信用できる証拠(笑)です.
 もちろん非難決議に何か具体的な拘束力があるわけではありません.例えば核以外に国連人権委のほうで非難決議は既に何度かやっている.先月もありました(ちなみに中共が反対,韓国が棄権というのは去年と同じ)が,それで直ちに北朝鮮に対して何か行動を起こそうというものでもない.
 要するにアメリカの思惑としては,北朝鮮自身はむしろ脇に置いておいて,それ以前に 中共に北朝鮮を6者協議のテーブルに就かせる能力(あるいはその意思も)があるのか無いのか態度をはっきりするよう求めるというところにあるのでしょう.さっぱり埒が明かない6者協議に拘束されたままぐずぐずしてもいられないけれども,さりとて急ぎすぎても安保理決議採択までは漕ぎ着けられない.もともとイラクのこともあり 今すぐ北朝鮮をどうこうしようというわけにも行かないので,仕方が無いから差し当たり非難決議という形での一種の根回し段階にとどめておこう,というところでしょうか.
もちろん,敢えて安保理協議に持ち込んで,制裁決議案が中共の拒否権発動で潰れたという形に持って行く手も考えられなくはないですが,アメリカとしては そういう流れが今後習慣化するのは面白くないでしょう.そこまでやって 中共を明確に敵に回してみても 問題をややこしくするばかりで得にならない.いざ北に対して何かアクションを起こそうにも,北に対してはイラクのときのような「古証文」もまだ無いですし.
 一方,日本から見たらどうか.
 中共が「ホスト国のメンツ」に懸けて北朝鮮を6者協議の席に引きずり出して来るなら勿論それでよし.それが実現せず,結果的に北核問題に関する中共の発言力が低下するのもよし.
 対北非難決議についても,中共が賛成に回れば その分だけ 後に安保理制裁を決議する段になって拒否権を発動がしにくくなるという意味で 損にはならない.中共が反対に回れば「中共は東アジア地域の安全保障に責任を負う能力も意思も無い」という国際輿論づくりに繋がる.これまたどちらに転んでも日本にとって悪い話ではない.

 前々から言っていることですが,私は日本は6者協議になど早々に見切りを付けるべきだと思っています.ただ,本心はどうあれ「日本は6者協議の早期再開に積極的」というポーズを保つことは 北朝鮮という問題児を抱えた中共への 寧ろ格好の攻撃材料になります.中共のみならず韓国あたりが「日本が6者協議をぶち壊しにした」とかいった類の詰まらぬ言い逃れ・責任転嫁をし始めるのを封じる意味もあるでしょう.
 そうは言っても,現実に開かれもしない協議にいつまでも足を縛られて,例えば拉致問題への対応までが停滞してしまっては目も当てられません.その意味で,安倍晋三氏などが言うように 前回(第3回)の協議開催から1年になる6月あたりで一旦期限を切るのがよいでしょう.
昨年来 北がしばしば「6者協議から日本を外せ」という趣旨のことを言っていますが,そういうのに乗じて「あ,そう.ではそうさせていただきます」と言ってオリてしまえばよい.オリた以上は「KEDOなどへの物的・人的支援も一切しない.当然ながら核放棄の見返り論にも一切乗らない」という態度でよい.それで誰が一番困るかは明白です.
 日本抜きでの北核交渉など現実的にあり得ないことを 中共なり韓国なりに充分理解させ,日本は核と同じくらい拉致問題を重視していることをハッキリ表明したうえで,日本が率先して対北経済制裁に乗り出すべきでしょう.安保理決議はその後でも遅くないように思えます.



◇ 報道記事 控え ◇

「6者」決裂なら安保理協議 北朝鮮の核、ロシアも同意 ─朝日 05/01
 北朝鮮の核をめぐる6者協議が決裂した場合、国連安全保障理事会で制裁を協議することについて、ロシアが米国に同調する意向を水面下で伝えていたことがわかった。米国は現時点では6者協議の再開を目指しているが、現状を「座視しない」(ライス国務長官)との立場。北朝鮮に圧力を加えるか国連での協議に応じるか、中国に二者択一を迫る構えだ。

 米政府高官を含む複数の6者協議関係者が明らかにした。同高官は「ロシア、英国、フランスは北朝鮮の核問題を安保理で協議することを認めている」と明言。「中国はまだ反対している」と述べた。安保理常任理事国5カ国のうち、中国を除く4カ国の足並みがそろった形だ。

 同高官はまた「米国は6者協議の行方を見守ろうという立場だが、最終的には(国連での協議が)避けられないと思う」との見方を示した。

 ブッシュ米大統領は28日の記者会見で、6者協議の再開を目指す姿勢を見せたが、「将来の選択肢」として国連安保理にも言及。強引に安保理での協議は求めない考えを示す一方、「日本や韓国の友人たちとの連携を継続する。プーチン・ロシア大統領も利害を理解している」と発言している。

 米国は、「北朝鮮は6者協議に戻ってくる」という中国の説明を受け、いまは北朝鮮の出方を見極めているところだ。しかし、北朝鮮でプルトニウムの抽出につながる原子炉の停止に続き、核実験の準備を思わせる動きなども伝えられている。

 米国は中国に「北朝鮮への支援の縮小」(米政府高官)などの圧力を求め、それでも北朝鮮が6者協議への復帰に応じなければ安保理へ、と中国を説得する構えだ。

北朝鮮の安保理付託に中ロが拒否権発動も・前米国務副長官 ─日経 05/04
【ワシントン3日共同】自民党の安倍晋三幹事長代理は3日午前(日本時間3日深夜)、ワシントン市内のホテルでアーミテージ前米国務副長官、ケリー前国務次官補と会談した。

 北朝鮮の核開発問題で、安倍氏が国連安全保障理事会に付託し、経済制裁協議を検討すべきだとの考えを示したのに対し、アーミテージ氏らは「中国とロシアが拒否権を発動する可能性が高い」として効果に疑問を表明した。6カ国協議再開に向けて北朝鮮側に圧力をかけるなど、引き続き関係各国が努力すべきだとの認識では一致した。

 また、アーミテージ氏は韓国で歴史問題などをめぐり反日運動が起きていることに関連し「この状況により北朝鮮への対応も難しくなっている」と述べ、日韓関係の悪化に懸念を示した。

対北制裁 安保理付託へ日米協調 「6カ国」困難 月末にも手続き ─産経 05/05
 日米両政府が、北朝鮮に対する経済制裁を国連安全保障理事会に付託する手続きを、五月末にも開始する方向で調整していることが四日、明らかになった。背景には、北朝鮮の核開発をめぐる六カ国協議の再開は難しいとの情勢認識があり、中国や韓国、ロシアと今後、安保理付託に関する協議を進め、北朝鮮を除く五カ国協議を開催する方針だ。

 日米両政府は、谷内正太郎外務事務次官とヒル国務次官補が四月二十八日に外務省で会談し、六カ国協議の早期再開の必要性を確認する一方、北朝鮮が協議復帰に前向きに対応しない場合には、国連安保理への付託に向けた手続きに着手すべきだとの認識で一致した。

 手続きを開始する時期については、六カ国協議が昨年六月以降、中断していることから、「一年が経過する六月が大きな節目となる」(日朝関係筋)。このため、協議再開を拒み続ける北朝鮮の姿勢に変化がない限り、「五月中に手続きを開始すべきだ」(外務省幹部)と判断した。

 安保理への付託をめぐっては、ブッシュ米大統領が四月二十八日の記者会見で、六カ国協議を通じた解決を望むとしながらも、「経済制裁を議論する安保理に委ねる措置もある」と述べている。日本側でも、町村信孝外相が二月に行われたライス米国務長官との会談や、三月の李肇星中国外相との電話会談で、国連安保理への付託も選択肢となるとの考えを示している。

 米国を除いた安保理常任理事国のうち「英、仏は付託に反対しない」(外務省幹部)とみられ、ロシアもロシュコフ駐日大使が四月十三日に開かれた日露友好議員連盟の総会で、六カ国協議での「問題解決は不可能だ」との認識を示している。残る中国は付託に否定的な見解を示し、六カ国協議に固執する姿勢を崩していない。しかし、二月に中国の王家瑞対外連絡部長が訪朝し金正日総書記と会談した際に、六カ国協議への復帰を求めたものの、北朝鮮側から前向きな対応を引き出せずにいるのが実情だ。

 このため、日米両政府内には「中国の影響力にも限界があることが明らかになった。いたずらに中国の説得工作を待つべきではない」(外務省幹部)との判断が強まっている。

 今月九日、モスクワで開かれる対ドイツ戦勝記念式典に際し行われる予定のブッシュ大統領と胡錦濤国家主席との米中首脳会談では、北朝鮮の核開発問題も話し合われるものとみられ、その結果は、安保理付託の動向に影響を与えそうだ。

北朝鮮問題の安保理協議…米は制裁より非難決議 ─読売 05/04
 【ワシントン=菱沼隆雄】北朝鮮が同国の核問題をめぐる6か国協議への復帰を拒否している問題で、国連安全保障理事会に議論が移った場合、米政府が当面は議題を北朝鮮に対する制裁問題に限定せず、非難決議などを念頭に置いて検討する意向であることが2日、分かった。

 米政府高官が明らかにした。初めから制裁について議論したのでは、拒否権を持つ中国などから支持を得にくい一方、北朝鮮が核開発を着実に進める中、何らかの行動を起こす必要に迫られているという事情がある。

 6か国協議は昨年6月を最後に1年近く開催されていない。安保理付託は通常、制裁に向けた議論を意味するが、中国は制裁論議について「問題解決をさらに遠のかせる」(王光亜・国連大使)と消極的。

 同高官は、「中国が安保理協議に応じることが最優先」と述べる一方、「安保理で非難決議が採択されれば、北朝鮮は(核開発についての)正当性を失うことになり、政治的に非常に重要」と強調した。同高官はまた、米政権内には、中国が嫌う安保理協議を進める姿勢を示せば、「中国が北朝鮮の説得に向かう圧力になる」との期待感もあると述べた。

 外交筋によると、国連安保理常任理事国による北朝鮮非難声明を出す可能性もある。

米政府、6か国協議=極めて難しい ─テレビユー福島 05/06
(註:これと同一文面のニュースがTBSのサイトにも昨夜流れていたようですが,削除済)
北朝鮮の核問題についてアメリカ政府が、6か国協議での解決が極めて難しいと判断し、次の対応に向け具体的な検討に入っていることが明らかになりました。アメリカ政府は、国連安全保障理事会への付託以外の対応についても検討しています。これは、複数の日米外交筋が明らかにしたもので、アメリカ政府は北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議について、中国から北朝鮮への働きかけが実を結ばないことなどから「もはや北朝鮮が建設的な態度で協議に復帰する可能性は極めて低い」と判断した、ということです。しかし、国連安保理への付託については、中国やロシアの反対が予想され、北朝鮮が核開発を進める時間を与えることから得策ではないという意見が政府内で支配的ということです。

北朝鮮の核 「6者」に戻るしかない ─朝日 社説 04/29
 北朝鮮が2年前に再開した5千キロワットの原子炉の運転を止めた。動いていれば外に出てくるはずの水蒸気が今月初めの時点で排出されていないことが米国の衛星写真で分かった。

 北朝鮮の真意は不明だ。だが、燃やした核燃料棒を数カ月かけて冷やし、再処理すれば、核爆弾の材料であるプルトニウムを取り出すことができる。

 そうなれば、北朝鮮の核をめぐる問題はますます深刻になる。核不拡散条約からの脱退を一方的に宣言して、あとは好き勝手に核を開発するというのは通らない。北朝鮮は核燃料の再処理をしてはならない。

 この原子炉からはすでに核爆弾5~8個分のプルトニウムが抽出された可能性がある。新たに再処理すると、さらに1、2個分が手に入る計算になる。見過ごしにできる話ではない。

 危機をあおって米国などを交渉に引き出し、譲歩を迫る。北朝鮮の「瀬戸際外交」の常套(じょうとう)手段だ。今回も、そうした構図に沿った動きなのかも知れない。

 北朝鮮は2月の外務省声明で核兵器の保有を言明した。衝撃的な表明ではあったが、米国などの反応は比較的静かなものだった。

 北朝鮮がすでに1、2個の核を持っているかもしれないというのは織り込み済みだったし、脅されて動くのはうまくない。イラクや、同じく核疑惑が深刻になっているイランへの対応で手いっぱいだったという事情もあった。

 それならもうひとつ、危機の目盛りを上げよう。今回の原子炉停止には、そんな狙いも透けて見える。

 あの声明では「核兵器庫を増やす」との表現で核増強の意欲も語っていた。それが本気であることを見せるとともに、実際、核の材料を多く手にしておけば交渉力も強まると考えているのだろう。

 それは思い違いではないか。瀬戸際外交を続ける限り、遠からずこの問題は国連安保理に舞台が移り、海上封鎖といった強硬措置をも視野に入れた制裁論議につながっていく。北朝鮮自身にはねかえってくるのだ。

 北朝鮮は「制裁は宣戦布告とみなす」と繰り返す。そんな事態になる前に平和的な解決を探ろうというのが6者協議の枠組みだ。だが、北朝鮮は昨年6月を最後にこの協議に応じていない。一刻も早く協議の席に戻るべきだ。

 北朝鮮が望む経済の再建も、これを通じた国際社会の協力なしにもたらされないことは分かっているはずだ。

 鍵を握る米国も、北朝鮮が協議に戻るよう仕向ける度量を見せるべきだ。新しく米国の首席代表になったヒル国務次官補が日中韓を回っている。協議の再開に向けて知恵を絞ってほしい。

 それにつけても日本のアジア外交の行き詰まりは痛い。中国や韓国との関係がこんなに険悪では、6者協議の立て直しへ積極的にかかわっていける雰囲気ではなかろう。早く修復すべきだ。

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by xrxkx | 2005-05-06 14:35 | 時事ネタ一般