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盧武鉉が青瓦台のサイトに掲載した文章
 ごく一部で何となくリクエストのあった例の盧武鉉声明.面倒だけれど訳出しておきます.

●韓日関係関連・国民に申し上げる文 ─青瓦台 2005/03/23 (原文はこちら
尊敬する国民の皆さん,

報道を通じ,国民の皆さんの憤りを生々しく見守っています.併せて私は,沈黙している多くの方々の胸の内にわだかまっている歯痒さにも共感しています.

皆さんがお感じの怒りと歯痒さを少しでも解消しようと,本文を書いています.

国民の皆さんの歯痒さは,多くの憤りと抗議にも拘らず希望的な結末を予測し難いことにあるでしょう.これまで我が国民は,政府が微温的に対応する(訳註:生ぬるい対応をしている)時にも,また強硬な対応をしながらこれといった結果無くうやむやに終わる時にも,我々の意志を貫くだけの相応の手段が無いという状況を理解し,(訳註:政府を)強く責めること無く心を鎮めて来ました.

今回の政府の対応についても同様でしょう.それはそれで痛快ではあれ,やはり相応の結果を期待し難く歯痒くお思いのことと思います.

しかし 国民の皆さん,

今回は違います.正しく対応して行きます.勿論感情的な強硬対応はしません.戦略を持ち,慎重に対応して行きます.うやむやにもしません.長期的な視野を持ち,粘り強く対応して行きます.

尊敬する国民の皆さん,

日本はこれまで,自衛隊の海外派兵の法的根拠を作り,既に再軍備論議を活発に進めています.これら全てが,我々にとっては痛ましい過去を思い起こさせ未来を不安にさせるものです.

しかし,既に日本が謝罪し,我々がこれを受け入れ,新たなパートナーシップを宣言した中で,普通の国が一般的に斉しく持つ国家の権能を日本にだけ持たせないのでは日本国民が納得し難いでしょう.こうした判断に於いて,我々は不安な気持ちを抑え,言いたいことも差し控えて来ました.韓日関係の未来の為にです.

言ってみれば,謝罪は真の反省を前提とするものであり,またそれ相応の実践を伴うべきものであるため,小泉総理の神社参拝はこれまで日本の指導者たちが行なった反省と謝罪の真実性を毀損するものです.

しかし,これについても我が政府は直接的な外交争点としたり対応措置を取ること無く,暗に自制を促すにとどめて来ました.まさしく日本の指導者らが口癖のように繰り返し述べている未来指向的韓日関係の為です.しかしながら,今や事態はこれ以上黙過し得ないところまで至ってしまいました.

露日戦争(訳註:日露戦争のこと)は その名の通りロシアと日本の領土をめぐって戦う戦争ではなく,日本が韓半島(訳註:朝鮮半島のこと)を完全に占拠する為に起こした韓半島侵略戦争です.実際に日本はこの戦争に勝利したのち直ちに我々の外交権を強奪し,事実上の植民統治を始めました.

日本はこの戦争中に独島(訳註:竹島のこと)を自国の領土に編入しました.まさしく武力によって独島を強奪したのです.日本の島根県が「タケシマの日」を宣布した2月22日は,100年前 日本が独島を自らの領土に編入した日です.まさしく 過ぎし日の侵略を正当化し,大韓民国の光復(訳註:1945年の日本敗戦に伴って朝鮮が日本統治から分離したこと)を否認する行為です.

教科書問題も同様です.2001年,日本で歪曲された教科書が殆ど採択されなかった時,我々は日本の良心に期待を寄せ,東北アジアの未来について楽観的な見通しを持ったこともありました.しかしながら,今やその歪曲教科書が再び蘇ろうとしています.これまた侵略の歴史を正当化する行為です.

そして,こうした事が一自治体や一部の無自覚な国粋主義者らの行為にとどまらず,日本の執権勢力と中央政府の幇助のもとに為されているが故に,我々はこれを日本の行為と見做さざるを得ないのです.このことはまた,日本が今までに行なって来た謝罪を全て白紙化する行為です.

今や我が政府も断乎として対応せざるを得ません.侵略と支配の歴史を正当化し,またしても覇権主義を貫こうとする意図を,これ以上捨て置くわけには行かなくなりました.韓半島と東北アジアの未来の懸かった問題であるからです.

今のところ,まだこうした行為は大多数の日本国民の考えと異なるのが事実です.しかし,政治指導者らが歴史をあべこべに教えるようそそのかす行いが続くなら,状況は直ぐにも変化しかねません.

尊敬する国民の皆さん,

政府が積極的に乗り出します.これまで政府は日本に対し言うべきことや主張があっても,なるべく市民団体や被害者に譲り,言葉を控えて来たのが事実です.

被害者らの悲痛な絶叫にも手を差し延べず,被害者らが真相を求めて東奔西走している時も充分に助けて来ませんでした.政府間の軋轢がもたらすであろう外交上の負担や,あるいは経済に及ぼし得る影響への考慮もあったでしょうが,何よりも未来指向的な韓日関係を思っての自制であったでしょう.

しかし,返って来たのは,未来を全く考慮しないかの如き日本の行動です.今では却って政府が乗り出さなかったことが日本の放心(訳註:本来は「油断」に似た意味だが,ここでは「増長・慢心」程度の意味で用いているようである)を呼んだのではないかという疑問が提起されています.これでは行けません.今からでも政府が為し得るあらゆる事をやって行きます.

まず,外交的に断乎として対応します.外交的対応の核心は,日本政府に対し断乎として是正を求めることです.日本政府の誠意ある応答を期待するのは難しいだろうという懸念はありますが,当然行なうべき事であれば,受け身でおらずに粘り強く要求します.

次に,国際輿論を説得することです.国際秩序は力の秩序であり,国家間の関係は利益を優先するのが現実ではあります.しかしその半面,国際社会は皆が斉しく尊重すべき普遍的価値と秩序を強調する方向に一歩一歩進んでいるのも事実です.日本が普通の国家を超えて,アジアと世界の秩序を主導する国家になろうとするなら,歴史の大義に符合すべく振る舞い,確固とした平和国家として国際社会の信頼を確保すべきでしょう.

国際社会も,日本が人類の良心と国際社会の道理に沿って行動するよう促す義務があります.我々は国際社会にこの当然の道理を説得して行きます.

これら全ての事にも増して重要なのは,日本国民を説得することです.究極的に問題が解消されるには,日本国民が歴史を正しく知り,韓日両国と東北アジアの未来の為,日本が為すべき事が何であるかを正しく理解しなくてはなりません.そうしてこそ日本政府の政策が正しい方向を取り得るのです.

これらの事は決して容易な事ではないでしょう.他人の過ちを暴き指摘するのは骨の折れる事であるのみならず,気持ちのよい事でもありません.互いに顔を赤くして(訳註:興奮・激昂の意)対立することも多くなるでしょう.異なる国の人々の前で罵り争う姿に映ること(訳註:「日本人にそう見えること」を指すのか「第三国に」なのか不明)は極めて心苦しいことでもあります.

刻薄な外交戦争もあり得るでしょう.それにより経済,社会,文化その他のさまざまな分野の交流が萎縮し,それが我々の経済を困難にしないかという懸念も生じるかも知れません.

しかしこの問題に関してはさほど心配しなくてもよいでしょう.今や我々もそこそこの困難には充分に堪え得る力量を備えていると考えます.そして,国家的に必ずや解決すべき事の為にどうしても堪えるべき負担であるなら堪えなくてはならないでしょう.しかし一方では堪え難い負担が生じないよう,状況を賢く管理して行きます.

国民の皆さん,

如何なる困難があろうとも,あとに退いたりうやむやにしたりせず,我が国民が受け入れるに足る結果が出るまで粘り強く対処して行きます.今回は必ず根を抜き取ります.困難な時は国民の皆さんの助けを求めます.新たに事を行なうたびに国民の皆さんの意見を聴きます.

今やこの事を決心し,国民の皆さんに幾つかのお願いを致します.

一つは,一部の国粋主義者らの侵略的意図は決して受け入れてはなりませんが,かといって日本国民全体を疑いこれに敵対してはならないということです.日本と我々は宿命的に避け難い隣人です.両国国民の間に不信と憎悪の感情を育てては,またしても夥しい不幸を避け難くなります.

二つ目は,冷静さを失わず落ち着いて対応して行くということです.断乎たる対応をしながらも,理性を以て説得し,品位を失わないようにしなくてはなりません.ある程度の感情表現はやむを得ないでしょうが,節制を失わないようにしなくてはなりません.力で行なう戦いではありません.名分を失っては返り討ちに遭います.感情を刺戟しすぎたり侮辱を与えたりする行為は特に自制すべきでしょう.

三つ目に,粘り強さと忍耐心を以て対応して行かなくてはなりません.戦いというならこの戦いは一両日で終わる戦いではありません.持久戦です.如何なる困難をも甘受するという悲壮な覚悟で臨むとはいえ,体力消耗を最大限減らし得る智慧と余裕を持って,粘り強くやって行かなくてはなりません.

四つ目に,長期的な視野を持ち,戦略的に対応して行かなくてはなりません.慎重に判断し,慌てずに(訳註:原文では「느리다 싶게」.「ノロノロと感じるくらいに」程度の意)語り行動しなくてはなりません.一喜一憂してもならず,衆口難防してもいけません(訳註:ここでは「衆口ハ防ギ難シ」を誤用している).これまであまりに多くの言葉と行動が噴出して来たのではないかという不安が無くもありません.

尊敬する国民の皆さん,

我が国民の要求は歴史の大義に基づいたものです.我々は無理な要求はして来ませんでした.新たに謝罪を求めたりもしませんでした.(訳註:日本が自らのこれまでの)不実な謝罪までも白紙化する行いを正すよう求めているに過ぎません.そして,今なお処理されずに残っている問題に関しては,事実を認め適切な措置を取るよう求めているに過ぎません.

信念を持って手助けして戴きたい.そして勇気と自信を持っていただきたい.我々の要求には必ずや歴史が応えてくれるでしょう.
 あぁ疲れた.昨年12/17の首脳会談後の記者会見の時にもそうでしたが,この人の発言というのはどうしてこう冗長なのでしょう.要旨をまとめると,まず日本の内政への干渉が以下の4つ:
  1. 「自衛隊の海外派兵」「再軍備」への憂慮表明
  2. 小泉首相の靖國参拝を「これまで日本の指導者たちが行なった反省と謝罪の真実性を毀損するもの」として名指しで非難
  3. 島根県による竹島の日条例制定を「侵略を正当化し韓国の光復を否認する行為」として非難
  4. 「つくる会」の教科書が「蘇ろうとしている」ことを「侵略の歴史を正当化する行為」として非難
 で,これら一連のことが「日本の執権勢力と中央政府の幇助のもとに為されている」と断定した上で「是正を求めて行く」と言う.最初に一読したとき,「あれ? 慰安婦が出て来ないな」と少々意外に思ったのですが,そこはそれ,ちゃんと手品の種は用意してあるつもりのようです(後述).
 上の4点のうち 1と2については 昨日や今日始まった事ではなく,これ自体は昨年7月の日韓首脳会談(於 済州島)の折の「自分の任期中は歴史問題を外交争点化しない」なる発言を覆した言い訳にはなりません.第一,自衛隊云々は歴史問題とは直接関係ありませんし.
 問題は3と4です.わざわざ高野駐韓大使から「竹島は日本領」なる答弁を引き出させる質問をした記者というのが何者だったのか,あるいは内容が漏れるはずの無い検定中の教科書の内容が何故この時期に,誰の手で漏れたのか.これらの胡散臭さは既に多くのサイトで語られている事ですので繰り返すには及ばないでしょう.
 特に3については単なる歴史問題ではなく現在進行形の国家主権に関する問題なのであり,これについても当然日本には日本の言い分がありますが,そこに日露戦争を絡めて来るあたり,しかも日露戦争を「韓半島侵略戦争だった」と強弁するあたり,さる03/21にも引用した日本の某新聞の入れ知恵もしくは燃料投入の匂いがします.
 産経の03/16付記事では,島根県による竹島の日条例制定に伴う韓国報道の過熱ぶりを「一方的報道の独り相撲」と評していましたが,今回の「独り力士」は随分と有能な褌担ぎを従えているようです.

 で,盧武鉉がやると言っているのが何かというと
  1. 日本への断乎たる外交的対応
  2. 「日本が人類の良心と国際社会の道理に沿って行動するよう促す」べく国際輿論に訴えること
  3. 日本国民の説得.「正しい歴史」を知らせ,「日本が為すべき事」を理解させる
だそうです.「外交戦争もあり得る」とまで断言したにしては,その内容についての具体性に極めて乏しい.しかも,対日関係の冷却が経済に及ぼす悪影響を 盧武鉉自身が誰より恐れているのが明々白々でありながら「さほど心配しなくてよい」という.日本を相手に経済の消耗戦をやって勝てると本気で思っているのか,ごり押しすれば日本は折れると高を括っているのかは分かりませんが,こういうお気楽かつ身の程知らずな大統領が出て来るような国に韓国をしてしまった原因は,一にも二にも従来の日本の対応の甘さにあります.

 さらに,国民への「お願い」が次の4点:
  1. 日本国民全体を敵視するな
  2. 冷静さを失うな
  3. 「持久戦」を覚悟で粘り強く対応せよ
  4. 長期的視野を持ち戦略的に対応せよ
 このうち1番については,これは昨今の北朝鮮が用いているのと同じ論法です.拉致や核の問題により日本の対北制裁論が高まって以来,朝鮮中央通信や労働新聞が対日非難を行なう際には 従来のような「日本政府」ではなく「日本国内の一部極右勢力(時に安倍晋三氏などを名指し)」などの言い回しを多用するようになりました.今回の盧武鉉声明もそれと同じ手口で,その意図する所が日本政府内の所謂「国粋主義者」と世論とを乖離させることにあるのは言うまでも無いでしょう.
 2番については,本来大統領が国民向けに発すべき声明としては この2番だけあれば用は足りるかも知れません.とはいえ,それとても盧武鉉に事態の収拾を図る意図があればこその話で,今回の一連の騒動などは寧ろ盧武鉉が火をつけたようなものですから,「お前が今更それを言うか?」という感も無くはありません.
 3番と4番については,上述のように政府が具体的にこれから何をやろうとしているのかについて国民に具体的な説明を充分に行なってから言うべきことです.(続く)
by xrxkx | 2005-03-25 04:47 | 時事ネタ一般