【北核保有宣言】将軍様からの贈り物
 既に昨日からあちこちのサイトで採り上げている 北朝鮮の核保有宣言の話.

 最初に気になるのが「何故この時期に? 何を狙って?」という点ですが,はじめ 私は「北と中共との間に何かあったな」と思いました.つい数日前にといったニュース(どちらもmore欄に控えを取っておきました)を読んだばかりだったからです.北朝鮮が対米関係のみを中心に据えて今回の措置に踏み切ったとは どうも思えない.中共が6者協議へのアプローチの面でアメリカに一定の歩み寄りの姿勢を見せ──取引材料が何だったのかは 候補が多すぎて分かりませんが──それが北朝鮮の態度を硬化させたのではないかという気がしてならない.北朝鮮にすれば,自分の頭越しに米中間の協議によって朝鮮半島の処断が決まるというのが 最も面白くない展開でしょう.

 一方,中共の立場ですが,中共が6者協議を通じて北東アジア地域の安全保障面での主導権を握ろうとしている現状は,おそらく今後も変化は無いでしょう.従って,中共は 北核問題解決後も「北東アジア地域の安全保障に関する定例会議の場」として6者協議の枠組みを存続させようと図るでしょう.朝鮮半島情勢の現状維持の為に どこまで金正日を生かしておくことが出来,どこで切り捨てるべきかといった潮時を,中共は今も慎重に測っているに違いありません.
 が,もしも これで北を6者協議の席に引きずり戻すことが出来なければ,6者協議のホスト役としての中共の面子は丸潰れです.

 あるいは もう少し想像力を膨らませるなら,今回の件そのものが中共と北とで口裏を合わせた上での狂言である可能性まで考えておいた方がよいかも知れません.北朝鮮にすれば「核カード」の再利用で周辺国からの更なる譲歩──アメリカからは体制維持の保証,日韓からは経済援助,といった具合の──を引き出せればそれでよい.中共にすれば事前の打ち合わせ通りに北朝鮮が「中共の説得に応じて」6者協議の席に復帰した格好にすれば自国の株が上がるので やはり悪い話ではない.
 ただ,その場合 中共から見て「もしアメリカが6者協議をスキップして北朝鮮との直談判で事を決する方向に転じたら?」という懸念材料はありますので,ちょっと可能性としては薄いかも.

 いずれにせよ,中共の役回りを「6者協議の枠組み維持の頼みの綱」とするか,「金正日一人御し切れなかった子供の使い」とするかは,日米の出方ひとつに掛かっていると言ってよい.長期的な利害得失を考えるなら,北東アジア地域の安全保障に関する問題が 中共の描いた絵の通りに進展するのは 日本にとってもアメリカにとっても面白くないはずです.
 が,おそらくアメリカは「当面 中共を敢えて不利な立場に追い込んでもメリットは何も無い」と考えているでしょう.むしろ 将来アメリカにとって害にならない範囲内で 中共に任せられる部分は任せたいと思っているに違いない.そういう甘さが後々仇になる.現にクリントンはそれで失敗した.

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 各国の思惑については この辺にしておきましょう.
 日本が北朝鮮にどういう方針で臨むかは,中共だのアメリカだのの思惑を見て決めるべきことではありません.周辺国の手の内を読む努力は必要ですが,それはあくまで周辺国を日本の思惑に沿って動くよう誘導する手段に過ぎません.日本という国の立ち位置が 周辺国の思惑に一々振り回されていては 本末転倒です.

 まず,「北朝鮮の核保有宣言により,アメリカは対北武力行使を避ける口実をなくした」という事実には注目しておく必要があるでしょう.何しろアメリカは イラクに対しては大量破壊兵器を保有している証拠を掴まないまま──それどころか結局大量破壊兵器など見つからなかったのですが──国連査察を打ち切らせてまで開戦に踏み切った経緯があります.今回の北朝鮮のように自分から「持ってますよ」と言っているものを見逃しては ますます「イラク戦争の大義」なるものが怪しくなる.
 日本もそうです.小泉首相は
「大量破壊兵器を持っていないことを証明する責任はイラクにあった」
として あくまで米のイラク攻撃を支持して来た人物です.それなら今回の北朝鮮はどうするのか.いつまで「対話と圧力」を繰り返せば 北朝鮮が「核を持っていないことを証明」するというのか.
 ちなみに,10日の段階での小泉首相の発言を並べてみると
「今まで通り、各国と連携しながら働き掛けていく」(時事

「早く再開した方がよい。北朝鮮にとっても6カ国協議を活用した方が利益になる」
「(北朝鮮が自衛のために核兵器を製造したと伝えられていることについて)まさに6カ国協議でそうした話をしなければならない。核放棄をした方が北朝鮮の利益になる」
「これまで通り、対話と圧力が必要だ」(以上 ロイター

「早く撤回した方がいい。今まで通り、各国と連携して(参加を)働きかけていく」
「核兵器を放棄した方が北朝鮮の利益になることを、これからも働きかけていかなければいけない」(以上 読売

「核廃棄が北朝鮮にとって一番プラスになると説得していく。まず話し合いの場に出て来るように働き掛ける」
「(経済制裁については)どういう効果をもたらすか、各国と連携していかなければならない」(産経
と,あくまで6者協議にこだわり続けている.事此処に到った以上,もはや「6者協議を通じての北核問題解決」なるお題目は《犯罪者との取り引き》でしかなく 有害無益の存在だと,その一言が何故言えないのか.
 結局のところ,小泉首相をはじめ 日本の政界が この期に及んでなお対北制裁発動に及び腰でいるのは,6者協議参加国をはじめ国際社会がひとたび対北制裁に向けて動き出したが最後,アメリカもまたイラクに対して取ったのと同等の措置を北朝鮮に対しても取るよう迫られることになるからではないか.

 周知のように,日本が抱えているのは北核問題だけではありません.拉致問題については 北朝鮮はもちろん 中共も韓国も「日朝間協議を通じた解決を図ってもらいたい」という立場.6者協議の議題に乗せることには消極的です.つまり,北朝鮮の6者協議復帰を促してみても,そのこと自体は直ちに拉致問題解決には繋がりません.中共や韓国といった阻害要因を排除しない限り 6者協議の席での日朝交渉などが先に進むはずが無い.それでもやる価値があるか.

 日本は6者協議などという先の見えない茶番劇には 一刻も早く見切りをつけるべきです.経済制裁どころか アメリカの手首を引っ掴んででも武力制裁に持ち込ませなくてはならない.
 ひとたび日米その他による対北武力行使路線が確定すれば,北朝鮮は必ずや生存中の日本人拉致被害者を「人間の楯」として使おうとするでしょう.それが拉致被害者生存を証明する最も確実な方法です.しかも,拉致被害者生存が確認されれば 日本が為すべき事は 単なる「人質救出作戦」だけです.敢えて「単なる」という言い方をしますが,誤解の無いよう断っておくと これは決してタスクとして軽いという意味ではなく,第三国に妨害の口実を与えずに済むという意味です.
 日本がそれをやるのを阻んでいる究極の障碍は,言うまでも無く「平和」憲法です.「各国に先駆けて武力を捨てることが世界平和への近道」という幻想が,世界中に一ヶ国として賛同者を得られないまま今日に至り,結果 世界平和どころか自国民が平和に暮らす権利すら蝕まれるに任せている現実を,私たちは直視しなくてはなりません.経済制裁はあくまで対処療法に過ぎません.究極の解決策は 日本人が非武装不戦の幻想に引導を渡すことです.好んで争いを求めてはなりませんが,いたずらに争いを恐れることは もっと有害です.

 敗戦後60年という節目の年の,それも建国記念日に合わせたかのような絶妙のタイミングで,日本人は海の向こうから「日本が一人前の国らしい国に生まれ変わるきっかけ」というプレゼントを受け取ったことになります.



胡主席、9月に初訪米か=国連60周年会議に出席検討-中国 ─時事 02/06
【北京6日時事】中国の胡錦濤国家主席が国連創設60周年を記念して9月に開かれる首脳会議に出席するため、ニューヨーク訪問の検討を進めていることが分かった。中国系香港紙・大公報(電子版)が6日、消息筋の話として伝えた。実現すれば、胡氏の訪米は主席就任後初めて。
6カ国協議で米中意見調整 中国高官訪朝前に北京で ─共同 02/07
【北京7日共同】北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議再開に向け、米中がこのほど準備協議を北京で開催、意見調整を図っていたことが7日分かった。米朝関係筋が明らかにした。
 議長国中国が春節(旧正月)明けの2月中旬以降、共産党の王家瑞・対外連絡部長の訪朝を計画、北朝鮮への働き掛けを本格化させるのを前に、中国を通じ、第2期ブッシュ政権の北朝鮮政策を説明することに米国の狙いがあったという。
 同筋によると、協議は米国家安全保障会議(NSC)のグリーン・アジア上級部長が2月初めに北京を訪問した後、国務省の朝鮮部長らが訪中して行われた。
 協議では、第2期ブッシュ政権の北朝鮮政策や、第4回6カ国協議の準備状況について意見交換。

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by xrxkx | 2005-02-12 01:11 | 時事ネタ一般