覚え書き:「台湾は中国の不可分の領土」という嘘
 かなり粗いですが,後日の為の叩き台として.特に,インチキ支那人やら媚中派日本人との論争が生じた場合の手間を省く意味で.

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●台湾はいつから支那のものでなくなったか
 もともと台湾は日清戦争後の下関講和条約に従って清国が日本に割譲参考文献1参照)したもの.この割譲以来,支那の如何なる政府も台湾に対する領有権を主張する歴史的根拠を持たなくなったことを まずは押さえておきたい.ついでに,これは「割譲」であって「租借」ではないのだから,誰かに「返還」しようにも出来ないという点にも注意.
 これをケシカランと言う人は,アメリカにも「建国13州以外は全てもとの持ち主に返還しなさい」と言わなくてはならなくなる筈.

●台湾はいつから日本のものでなくなったか
 台湾の領有権が その後どうなったかと言うと,大東亜戦争敗戦後のサンフランシスコ講和条約(1951)には,
第二条【領土権の放棄】
  :
(b) 日本国は、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
とあるのみ.「すべての権利」の中には当然台湾の領有権も含まれる.ここで,同条約には台湾を何処かよその国に「割譲する」とも,ましてや「返還する」とも書かれていない点に注意.

 また その後 日本が中華民国(既に共産党との内戦に敗れ,台湾に逃げ込んでいた)と結んだ「日華平和条約(1952)」に於いても,日本が既に台湾の領有権を放棄した後である以上,日本が台湾を中華民国に割譲することは不可能なので,領有権に関しては
第二条  日本国は、千九百五十一年九月八日にアメリカ合衆国のサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約(以下「サン・フランシスコ条約」という。)第二条に基き、台湾及び澎湖諸島並びに新南諸島及び西沙諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄したことが承認される。
という表現になっており,ここにもやはり日本が台湾を中華民国に「割譲」したとか「返還」したとかいう記載は無い.
 こうしたことから「台湾の法的地位は今なお未確定である」,つまり中華民国が台湾を領有する国際法的な根拠が無いとする説すら 当時からある(参考文献2,特に第三章を参照).
 蒋介石の国府軍による台湾占領そのものは,中華民国による台湾領有の国際法的根拠には なり得ない.もしそんな理屈が成り立つなら,例えば朝鮮半島などは米ソ両国が分割領有すべきものということになってしまう筈.
 日本が台湾の領有権を放棄したことにより,台湾は所謂「無主地」になったと見るのが妥当.
 もし台湾が無人島だったら,これを再占領したものが「無主地先占」の結果として領有権を主張することになるだろうが,台湾の場合は ちゃんと住民がいるわけだから,そこにどのような統治を導入するかは もっぱら住民の意思によるべき.台湾住民は台湾統治に関する自決権を持つ.
 国府軍は連合国の一員として旧日本領を占領統治したのみ.従って,戦争状態が終われば占領統治も解除し,撤兵しなくてはならなかった(日本から分離独立した『台湾国』と中華民国との間で,その後『台華安全保障条約』とか何とかが結ばれたとでもいうなら話は別だが).
 上述のように,日華平和条約が締結されたのは 中華民国が大陸を追われた後である.その中華民国が 本来領有権を持たない台湾を 講和後も占領し続けることの異常さ・不当性について,条約中では触れずに済ませているという点に注意.

●中共が台湾領有権を主張する根拠はどこにあるか
 まず,現在の日本と中共との二国間関係を規定する「日中平和友好条約」(1978)には,台湾領有権に関する記載は一切無いことに注意.
 ところで同条約の前文に
前記の共同声明が両国間の平和友好関係の基礎となるものであること及び前記の共同声明に示された諸原則が厳格に遵守されるべきことを確認し、
とあるが,ここで言及されている「日中共同声明(1972)」第3項に謂う所の
中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基く立場を堅持する。
の「理解」「尊重」については以前触れた通り.日本政府が「理解」し「尊重」しなくてはならないのは 何も中共の言い分だけではない.台湾がどのような社会であるべきかは台湾人の自決権に任されるべきだとする国際通念および台湾人の意思をも同様に理解し尊重すべきである.

 問題は,残る「ポツダム宣言第8項」だが,ここには
「カイロ」宣言ノ條項ハ履行セラルベク又日本國ノ主權ハ本州、北海道、九州及四國竝ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ
とあるだけであり,ここにも台湾を何処か特定の国に「割譲」するとか「返還」するとかいった記載は無い.台湾はあくまで「日本國ノ主權」の及ばない土地になったというだけである.

 で,今度はその中に出て来る「カイロ宣言」に遡らなくてはならないが,実際は 「カイロ宣言」なるものは公文書としては存在せず,あるのは国際法的拘束力の無い草案だけである(三者の合意に至らず採択されなかった)という点に まず注意.
 この草案のうち,特に台湾に関する箇所を見ると
右同盟國ノ目的ハ日本國ヨリ千九百十四年ノ第一次世界戰爭ノ開始以後ニ於テ日本國カ奪取シ又ハ占領シタル太平洋ニ於ケル一切ノ島嶼ヲ剥奪スルコト並ニ滿洲、臺灣及澎湖島ノ如キ日本國カ清國人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民國ニ返還スルコトニ在リ
とある.が,冒頭で触れたように台湾は下関講和条約によって日本が清国から割譲されたものであって,「日本國カ清國人ヨリ盗取」したわけではないのは明白.
 このように,もともと「カイロ宣言」に於いては 明らかな事実誤認の元に「台湾の中華民国への返還」が謳われているのであり,敗戦直後ならいざ知らず 現在の日本にはこうした過去の連合国の過ちを正す力も備わっており,また その道義的責務もあるはず.「強制連行」や「南京大虐殺」よりは遥かに争い易い争点でもある.
 そもそもカイロ宣言で謳われているのはあくまで「連合国の目的」に過ぎず,それが既に達成されたと連合国自身が判断したからこそ,サンフランシスコ講和条約は締結された.

●中共はいつ中華民国から台湾領有権を「継承した」のか
「共産党政権が国民党政権に取って代わったことにより,『中華民国』は その全ての権利を中華人民共和国に継承され消滅した」
と支那人はしばしば主張する(中華民国と国交を持とうとする国に対し,中共が断交を宣言する所以).仮にこの主張を是とするなら,
では,現在台湾を実効支配しているのは誰なのか?
と問い返せば済むだけの話である.それが中共でないことは明らかなのだから.

 この点に,台湾領有権に関する支那人の主張の重大な矛盾点の一つがある.つまり中共は,一方では国府軍による台湾占領を「台湾の中国への返還」として是認しておきながら,他方では「台湾の中国への返還」の実行犯である中華民国の存在を頑として無視しようとしているわけだ(当の国民党が今も中華民国の最大野党として健在なのに,である).

 残る問題は「では中華民国はいつ『消滅した』という立場を中共は取るのか」という点だが,これまた曖昧な点が多い.
 もしも中華人民共和国が建国を宣言した1949年10月を以て中華民国が消滅したとするなら,サンフランシスコ講和条約に従って日本が台湾の領有権を放棄したのは 上述のようにその後の1951年なのだから,改めて台湾に関する領有権が中華人民共和国に帰属すると考えるのは不自然.そのため,支那人も普通はこの考え方は取らない.

 多くの支那人が「中華人民共和国が中華民国から全ての権利を継承した」と考える最大の根拠が,中華人民共和国の国連加盟(1971年10月)にあることは言を待たないが,それを決定付けた所謂「アルバニア決議案」には
「総会は、国際連合憲章の原則を想起し、中華人民共和国の合法的権利の回復は、国際連合憲章を守り、かつ国際連合を憲章に従って活動させるためにも肝要であることを考慮し、中華人民共和国政府の代表が国連における中国の唯一の合法的代表であり、かつ中華人民共和国は安全保障理事会の五常任理事国の中の一理事国であることを認識し、中華人民共和国にそのすべての権利を回復させ、その政府の代表を国連における中国の唯一の合法的代表と認め、かつ蒋介石の代表を国連及びそのすべての関連機関において非合法に占める議席から即時追放することを決定する。」
とあるのみ.この決議案はあくまで「誰が『中国』の正当な代表であると見なすか」に関するものに過ぎず,「『中国』が台湾を領有する正当性」についてなど一言も触れられていないことに注意.
 少々脱線.ここで「中華民国」ではなく「蒋介石の代表」とある点は重要.中共としては中華民国を国連から除名したかったものの,それをやるには安保理の勧告と国連総会の2/3以上の賛成が必要なので,中共の一存でそこまで押し切るのは不可能だった.それゆえ,「蒋介石の代表を国連から追放」という表現で,いわば名を捨てて実を取ったわけ.つまり厳密には中華民国は国連から除名されたことは無い(結局は蒋介石が自発的に国連を脱退したが).
 さらに脱線.国連憲章に至っては,第23条1項に於いて今なお安保理常任理事国を「中華民国」と定めている.

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 結論すると,「台湾は中国の不可分の領土である」とする中共の主張は,
  1. 公文書としては存在しない「カイロ宣言」の日本への押し付け
  2. 国府軍による台湾不法占拠を「台湾の中国への返還」とする なし崩し的・独善的解釈
  3. 「国民党政権は共産党政権によって継承され消滅した」とする虚構
を根拠としていることが分かる.

 最後に,1のカイロ宣言のような何ら国際法上の強制力を持たない古証文を持ち出して 台湾の領有権を主張する方もする方だが,中共の狡猾・厚顔無恥を責める前に,日中国交「正常」化交渉に於いて そんな馬鹿げた条件を唯々諾々と呑んでしまった日本外交の不甲斐なさをこそ我々は顧みるべきである.その後 現在に至るまでの 日本の対中土下座外交の全ての発端が ここにある.


◇ 参考 ◇
  1. 「割譲」の意味を知らない支那 ── 「台湾問題」に見る支那の矛盾 (帝國電網省,2002/04/07)
  2. 「台湾中華民国」の法的地位 (台湾独立建国聯盟 主席・黄昭堂,2002/03/27)
  3. なぜ、台湾には新憲法が必要なのか

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by xrxkx | 2004-12-21 14:45 | 台湾建国によせて