【対北経済制裁】ようやく政府も重い腰を上げつつあるようだが
 まずはマクラとして,昨日(12/09)読んだ記事にあった 毎度馬鹿々々しいお笑いから─
北朝鮮、過去清算求め対日声明 常任理事国入り反対と ─産経 12/09
 北朝鮮の朝鮮中央通信によると、「日本の過去清算を求める国際連帯協議会」朝鮮委員会の黄虎男副委員長は8日、平壌で記者会見し、植民地支配の過去を清算しない日本の国連安全保障理事会常任理事国入りに反対するとの声明を、同協議会が採択したと発表した。
 黄副委員長は「過去の清算は日本が国際社会で認められる唯一の道で、一日も早く被害人民との和解、協力のため努力すべきだ」と強調した。
 同協議会には韓国や中国、日本などアジア各国の市民団体も参加しているが、北朝鮮主導の団体とみられている。
 黄副委員長は過去2回の日朝首脳会談に金正日総書記の通訳として同席、対外文化連絡協会の日本担当局長も務めている。(共同)
だそうです.何しろ「植民地支配」だ「過去の清算」だといったネタは もとより中共や韓国との共通項でもあることですので,またぞろ靖国参拝をめぐって彼らが日本に吹っ掛けているゴタゴタに便乗しようという肚でしょう.
 そもそも,北朝鮮ごときが日本の安保理常任理事国入り──その是非に対する私の見解は ともかく──に反対したところで,日本にとっては痛くも痒くもないものを.
 一連の日朝交渉に於ける北朝鮮側の最大の関心事は「日本から幾ら戦後補償をふんだくれるか」にあるのは もとより明白.日本によって近代というものを知った己が分際をも弁えず,国際的に認められた韓国併合を「強占」「植民地支配」と言い募り,ありもせぬ「日帝の収奪」をあると強弁し,「光復」後60年近くも経ちながら 未だにそうした虚構を押し立ててのタカリ行為から足を洗えずにいる 朝鮮人の哀れさよ.こんなものが拉致問題へのカウンターアタックになり得ると,彼らは本気で思っているようです.
 以下 脱線.
 日本にすれば朝鮮との「過去の清算」などは1965年の日韓基本条約締結時に「朝鮮半島唯一の合法政府」である韓国政府との間で解決済みなわけで,北朝鮮との国交など無い状態こそ正常なのです.ましてや相手は外国人拉致・旅客機爆破・麻薬密輸・偽札製造など数々の犯罪に国家ぐるみで手を染める,世界でもたぐい稀な ならず者集団です.
 それがどうも南北基本合意書(1991)あたりから雲行きが怪しくなって来て,昨今の親北政権成立後は韓国政府も日朝国交「正常」化を黙認どころかむしろ歓迎する形になってしまっているのは,「戦後補償の2重取りで北の経済を再建するニダ大作戦」的な要因も少なからずあるのでしょうが…
 ともあれ,日韓基本条約に謳われた「経済協力方式による決着」が,その後の日本の対東アジア外交の非常にまずいモデルケースになってしまっているのは,朝鮮に限らず支那に対する外交に於いても同様.

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 マクラはこの辺にして,経済制裁といえば,私が平素愛読している「Irregular Expression」の本日(12/10)付の「北朝鮮への経済制裁は議論されていない」という記事を興味深く読みました.
感情的な「経済制裁しろ!子鼠辞めろ!」論ではなく、具体的な「経済制裁するならばレベルを一番上げた状態から始める方が良い、その際の米中韓の協力体制は…」とか「レベル2だけでなく、更に3・4まで続くような要求を考えておくべきだ」とか「中韓の協力がレベル3以上は不可欠だ」とか、もっと具体的で生産的で冷静な対北経済制裁論争
をすべきだというくだりは 私から見ても至極尤もに思えます.こういう議論はもっともっとあってよい.私も経済制裁カードは一度に全部切ってしまうにはチト惜しいという立場ですし.

 ただ,同記事に次のように述べられていたのが目を引きました(太字は私が付けたもの):
更に言えば「経済制裁に消極的な小泉は何をしている!」って怒りはお門違い。遺骨捏造が判明してすぐにWFP経由で予定していた12万5千トンの人道的食糧支援の凍結を決めた。これは自民党の対北朝鮮経済制裁シミュレーション・チームが定義した5段階の経済制裁のうちレベル1と呼ばれる「食糧や医療支援など、人道支援の凍結・延期」に当たる。つまり経済制裁は発動している訳だ。(中略)北朝鮮が要求(それは新たに加えられた拉致実行犯の引渡しも含む)に応じないと今度は経済制裁のレベルを2以上に引き上げるって事だろ。どう見ても段階的経済制裁に踏み切ったように見えるんだけどな。
 このくだりを見て真っ先に思い出したのが,読売の朝刊の連載記事「政治の現場 小泉外交」の第2回 (2004/11/19)の 食糧支援に関する記述でした.次のようにあります(太字は私が付けたもの).
 小泉再訪朝の提案により,八人の帰国はほぼ固まった.最後まで対立したのは北朝鮮への食糧支援だった.日本側の十万トンの提案に対し,北朝鮮側は百万トン近い「法外な量」(外務省幹部)を要求してきた.
 田中らの報告を受けた小泉の判断は明快そのものだった.「今回は,勝った負けたという交渉にはしない」といい,八人の帰国を最優先する考えを示した.
 食糧支援は結局,二十五万トンと決まった.後日,外務省首脳は「最初から外務省に任せれば,再訪朝カードをもっと有効に使えた.食糧支援も十万トンで済んだのに」と悔しがった.
 五月七日,福田が官房長官を辞任した.自らの年金未納問題を理由に挙げたが,「首相再訪朝をめぐる小泉との対立が本当の理由だ」と語る関係者は多い.
 「Irregular Expression」の執筆者であるgori氏に限らず,この期に及んで尚も小泉擁護をやめようとしない方々は,上の外務省首脳の声を何とお聴きになるのでしょう.結局 日本側の当初の提案でもあった10万トンを上回る12万5000トンが,「今回は勝った負けたという交渉にはしない」という小泉首相の「鶴(???)の一声」により 既に北の手に渡っているわけです.残りの半分などは要するに初めから与えずに済んだ分──私自身は「北朝鮮に対する食糧支援などは粟一粒たりとも与えてはならない」と思っていますが,それは今は措くとして──だということです.
 与えずに済んだものを与えるといっておき,それを引っ込めただけの話を「経済制裁は既に発動している」と強弁するのは,私などには それこそマッチポンプにしか見えませんが,どうでしょう?

 第一,経済制裁発動をめぐっては閣内でも今なお賛否両論だという.慎重論の代表がよりによってあの南野法相なのはご愛嬌としても,本当に政府内が経済制裁発動でまとまったのであれば,今さら経済制裁推進派から
「自民党の拉致対策本部事務総長の時から、段階的に経済制裁を実施していくべきで、少なくとも実施の検討を始めることは必要だと主張してきた。今も考えは変わらない」(中山文科相)
といった発言が出て来るはずは無いわけです.(もっとも,経済制裁発動というものが その事実を閣僚にまで伏せたまま官邸だけで行えるものなのでしたら 話は別ですが.あるいは,例によって「小泉首相の深慮遠謀」論がお好きな方々には 閣僚のこういう発言も「敵を欺く為に先ず味方を欺いている」ようにでも見えるのでしょうか?)

 辛光洙ら拉致実行犯3名の身柄引き渡しを 今回新たに要求したのは これ自体は非常に良い事だと思います.北朝鮮側へのプレッシャーとしても非常に有効でしょうし,そもそも拉致に関った犯罪者が今も北朝鮮でのうのうと暮らしている(どころか辛光洙などは所謂「非転向長期囚」として英雄扱いの身分であるのは周知の事実)というのは,「一部の現場の下っ端が勝手にやったこと」式の北朝鮮の主張の欺瞞性を証明するものでもあり,これを放置しておくことは日本という国の沽券に関わる問題でもあるからです.
 が,これとても
「どうしてもっと早くそうしなかったの?」
と言われてしまえばそれまでの話でしょう.「8人の帰国を最優先」するあまり北朝鮮側のペースに振り回されて来た今までの日本側の方針が,結局は先のニセ遺骨に象徴されるように全くの空振りに終わった事実は事実.最低限,その点くらいは認める謙虚さなり虚心坦懐さは欲しい.

 また,同記事中 氏は「11月の実務者協議の後で発せられた『北朝鮮の努力のあとが認められる』だが、これは事実誤認」だとした上で こう述べておられます(以下の引用部に限り太字は原文のまま):
小泉総理に怒りを剥き出しにする方の多くがこの「北朝鮮側の努力の跡うかがえる、まだ日本側として納得できる内容ではない」を「北朝鮮側の努力の跡うかがえる」と「は」と「が」を故意かどうか知らないが入れ換え、その後に続く「が、まだ日本側として納得できる内容ではない」をブチ切って引用し、「小泉はなんて現状認識力に乏しく、北朝鮮に甘いんだ!」と非難している。この事実誤認に基くフェアでない非難もマスゴミのミスリードによって作り出されていた訳だし、現状が歪曲されて伝えられる中で建設的な議論は生まれない。なんか裏が有るのかと勘ぐりたくなるほどだ。
 この点で小泉首相を批判していらっしゃる方々にしても,何も「納得できる内容ではない」のほうを隠蔽したりトリミングしたりというわけではなく,単に「納得できないのが当たり前だ」と思っているから問題視しないだけなのでは? こういうことを仰るのは,取り敢えず「それなら小泉首相の言う『北朝鮮側の努力の跡』とは一体何を指すのか」について,首相に代わって──推測でもよいから──説明して見せてからにすべきだと思いますが,どうでしょう?

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 「Irregular Expression」を読んで こうした感想を持ったのは 今回が初めてではありませんが,何だかんだ言いつつ 私が今も同blogを毎回愛読しているのは,マスコミによる情報操作・輿論誘導に対する 氏の批判精神,更に言えば それを原則として私が読んでいるのと同じ一般の報道記事の行間を丹念に読むことのみによって実践しているという点を 高く買っているからです.
 が,それだけに,他ならぬ氏が こと小泉政権の施政方針,特に外交政策の話題となるや どうしてこう途端に矛先がカレーの王子様並に甘口になってしまうのか不思議でなりません.
 その点が,やはり日々参考にさせていただいていながら先日もこき下ろしたばかりの天木直人氏の支那・朝鮮に対する甘さと ちょうど鏡像対称の位置にあるように見えるのが 奇妙といえば奇妙なのですが.
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by xrxkx | 2004-12-10 21:43 | 時事ネタ一般