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【小泉-温会談】「ODA卒業宣言」させればよかったのに
 昨日(12/01)は投稿をお休みしてしまいました.こんないい加減なblogにも 毎日定期的にチェックしに来て下さる物好きな有難い方々がそれなりにいらっしゃるわけで,申し訳ない限りです.
 そろそろ旬を過ぎて扱い易くなって来た小泉-温家宝会談ですが,両氏の遣り取りについては11/30付の産経の記事(但し共同電)が最も詳しく報じているようでしたので,双方の遣り取りの部分だけ抜粋すると
▽靖国神社参拝問題
温首相 靖国神社にはA級戦犯が祭られており、日本の指導者が参拝することを中国人民は受け入れることができない。
小泉首相 これまで参拝してきたのは心ならずも戦場で倒れた人々への慰霊の気持ちからであり、不戦の誓いを新たにするものだ。

▽東シナ海
小泉首相 最近、潜水艦による領海侵犯事件があった。東シナ海はこうした問題を乗り越え、克服して行くことで協力、協調の海にしなければならない。

▽旧日本軍遺棄化学兵器
小泉首相 現在処理を進めているが、中国側の協力を要請したい。
温首相 早急に進めることが大事だ。

▽政府開発援助(ODA)
温首相 今日、円借款で中国の経済建設は大きく進展した。適切な形で対応していくのがいい。

▽北朝鮮核問題
小泉首相 北朝鮮の問題は6カ国協議を通じての解決が重要だ。粘り強くやる必要がある。中国のこれまでの努力を評価しているし、日本も非常に重視してやっていく。
温首相 引き続き6カ国協議のプロセスの促進を働き掛けていきたい。再開のために努力して行く。日本とも引き続き協議したい。

▽訪日
小泉首相 来日を招請したい。
温首相 良い条件と環境の中で訪日できることを希望する。
といった具合.少々意外だったのはODAの問題について小泉首相から発言が無いこと.
 日本の対中ODAについての「打ち切りたかったら好きにしろ,痛くも痒くもない」というハッタリとも読める27日の李肇星発言,および29日の武大偉の「ODAの続行か廃止については、流れにまかせる」なる発言については 11/29に触れましたが,その翌日の11/30には今度は章啓月が
「日本の対中円借款は、中国の経済発展に積極的な役割を果たし、中国は評価してきた」
「円借款を主体とする援助は両国の経済発展をもたらし、日本の企業にも多くの利点をもたらした。この借款は一方的なほどこしではない」 (以上朝日
なる発言を行なっており,会談終了と同時にハッタリ風味自体は大幅にトーンダウンさせています.が,「日本にとっても悪い話じゃないだろう」と言わんばかりの態度は相変わらずで,実際対中ODA利権で肥え太る日本企業などザラにあるのは周知の事実ですが,それにしても こんなのはカネを借りる側が言うセリフではないでしょう,普通.借金を通常のビジネスと同列に置く こうした支那人の厚顔無恥には 今さらながら驚かされます.
 ちなみに,同じ産経の12/01付の記事『小泉首相 「靖国参拝」焦点に 中国反発に考慮の動きも』 (注:産経のご本家サイトにはこの記事が無いようなのだが,紙面に載ったのはこちらか? 未確認)によると
【二国間関係】
温首相 日本は中国にとって大変重要な国であり、両国関係を維持することは両国のみならずアジア太平洋地域および世界においての利益だ。両国関係の主流は良好である。
小泉首相 自分は三年前から「中国は脅威ではなくチャンスだ」と言ってきたが、今まさにそのようになっており、大変うれしく思う。相互依存関係はますます深まっている。

【靖国問題】
小泉首相 これまで参拝してきたのは、心ならずも戦場で倒れた人への慰霊の気持ちからであり、不戦の誓いを新たにするものだ。
温首相 靖国神社参拝の問題を適切に処理していただきたい。

【東シナ海問題】
小泉首相 潜水艦の領海侵犯や東シナ海の問題があるが、こうした問題を乗り越えて協力・協調の関係にしていきたい。
温首相 話し合いを続けていきたい。

【対中ODA(政府開発援助)】
温首相 日本の円借款は中国の経済建設に大きく貢献してきた。この問題については適切な形で処理していくことが望ましい。

【北朝鮮】
小泉首相 六カ国協議を通じ、粘り強くやる必要がある。中国側のこれまでの努力を評価する。
温首相 六カ国協議の促進を北朝鮮に働き掛けていく。日本も引き続き協力してほしい。

【訪日招請】
小泉首相 訪日を招請したい。
温首相 よい条件と環境の中で訪日できることを希望する。
と,こちらの記事では「東シナ海問題」の件については温家宝が一応返事くらいはしたことになっていますが,ODAに関しては小泉首相の発言が無いのはこちらも同様.
 ところで,私が予想していた東シナ海ガス田に関する共同開発案が出なかった(というか,出させなかった?)代わりに,中共は今回も靖国を持ち出してきたわけですが,「靖国カード」については 小泉首相としては既に先の胡錦涛との会談で中共側に最強の切り方をさせて イナシてありますので,向こうが同じ話を蒸し返すなら こちらも原則論の繰り返しで応じておけば十分でしょう.ただ,「慰霊」や「不戦の誓い」は結構ですが,「心ならずも」云々は余計.中共に無用の借りを作らない為にも,「日本は中国に悪いことをしました」論は一切排除の方向で行くべきです.
 もっとも「靖国カード」については 朝日(12/01)のような記事もあり,
 小泉首相は30日夜、ビエンチャン市内での記者会見で、日中首脳会談について「温家宝首相から『靖国』という直接の話は出なかった」と述べた。日中外交当局は会談後、温首相は靖国問題に直接言及したと説明していた。会見で小泉首相は、温首相が「この戦争で大きな被害を受けた歴史を忘れてはいけない」などと語ったことを明かし、「暗に私の靖国参拝を指摘したことは分かった」と述べた。
 この発言について、会談に同席した外務省幹部は「靖国参拝をやめてくれ、と直接言われたわけではない、と言いたかったのではないか」と解説している。
と,温家宝がどこまであからさまに靖国の話題を切り出したのかについて 記事ごとにかなり書き方がばらついていますので,もう少し詳しい報道がされたら 改めて読んでみることにしたいと思います.
 それにしても「こうした問題を乗り越えて協力・協調の海に」とはまた随分遠慮がちな表現だこと.どこまできっちりと再発防止を要求したのか,これだけ読んだのでは定かでないのですが,本来なら関係者の処罰くらいは求めないと

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 さて,同会談が終わったのを受けて 人民日報日本語版某紙の昨12/01付の社説 対中ODA――終わらせ方が大事だ が ビーム並の強烈なデムパを放っていたのを御覧になった方も多いことでしょう.中共中央への もはや「けなげ」と呼んでよいほどの献身ぶり.支那の走狗たらんと欲する者は須く社説子を鑑とすべし.
 対中ODAが始まったのは、日中平和友好条約が締結された翌年の1979年だ。中国が改革開放を打ち出したのを受けて、その支援を目的に掲げた。
 中国は日本との国交正常化にあたって、日本の侵略戦争に対する賠償を求めなかった。対中ODAがそれに代わる性格を帯びていたことも事実である。
 「賠償を求めなかった」ことを日本人は恩に着ろ,とでも言いたげです.
 そもそも日本と「中国」との間の戦後補償の問題は「中華民国」政府との間で結ばれた日華平和条約 (1952) の折に蒋介石が対日賠償請求権を放棄したことにより解決済みなのであって,中共が「中国唯一の合法政府」たる資格を「蒋介石の代表」から継承したと称するのであれば 対日賠償請求権の問題を蒸し返す資格を中共が持たないのは当然.
 第一,蒋介石にせよ周恩来にせよ,賠償請求権を放棄せざるを得なかったのは 「賠償請求を起こせば必然的に日本側からも支那に残した官民の資産に関する賠償の問題を持ち出されることになって却って損をするから」という単なる打算であったのは 日韓基本条約のばあいと同様.もっとも,当blogにお越しの読者の皆様の中には「以徳報怨」などという美辞麗句を額面通りに受け取っていらっしゃるオメデタイ御仁は よもやいらっしゃいますまいが.
 経済援助は、相手国が自力をつけてくればやめたり、他の分野や他の国に振り向けたりするのが当たり前だ。
 ところが、日中にとって不幸なのは、その廃止問題が中国脅威論と絡んで自民党内から主張されてきたことだ。「援助は結果的に軍備増強を助ける」「援助を受けていながら他の国を援助して影響力を強めようとしている」等々である。
 中国側も反発した。円借款の金は、低利だが利子もつけて返してきた。決してもらったわけではないし、ありがたいと思ってもいる。それを、援助してやっているのだから何でも思い通りにしろと言わんばかりなのはおかしい。
 盲従的対中擁護も此処に極まれりという感がありますが,取り敢えず「中国脅威論」なるものが持ち上がって来た直接の原因がどこにあるかを先に考えたほうがよい.相手は 現実につい先月も我が国の領海を侵犯した,手癖の悪い国です.日本がもう少し普通の国だったら,借款どころか こんな相手とはとうの昔に戦争になっているのです.今度こそ賠償請求権放棄は一切無しで.
 「援助してやっているのだから何でも思い通りにしろ」などと いつ誰が言ったのか存じませんが,援助をする以上は その援助が適切に有効に使われているかどうかをチェックするのは当たり前です.3億人の国民を満足に水も飲めない状態に置いたまま軍備拡張に狂奔している国を相手に,「金は出せ,口は出すな」と言うほうが余程おかしい.
 ついでに
 借款の規模はすでに減り、日本にも影響する環境対策や、交流で日本を知る中国人を育成するような事業に重点は移っている。これらは続けるべきだろう。
と言っていますが,これもおかしい.そもそも それらはODAによって行うべきことか,という議論がすっぽり抜け落ちている.
 さらに言うなら,「日本を知る中国人を育成」することが本当に日本の国益に繋がるかどうか,それすら疑問です.朝日は09/21にも「王毅大使――厳しい時こその期待」なる社説を掲げ,
 日中が一筋縄でいかない時だからこそ、中国きっての知日派の登場と、彼を迎えた日本側の踏ん張りに期待したい。
などとヨイショしていましたが,その知日派氏が先の領海侵犯事件の際に何処で何をしていましたか.…支那人など所詮そんなものです.「日本を知る中国人」など育ててみたところで,日本語の巧い不法入国者・不法滞在者が増えるだけの話でしょう.

 社説といえば 11/30付の産経の社説 対中ODA 確かに「もう卒業の時期」
 日本などから経済援助を受けるかたわらで大規模な軍備拡張を続け、軍事的意味を持つ宇宙開発にも巨額の予算を投じ、昨年は日本もなし得ていない有人宇宙飛行も成功させた。他の途上国への経済援助も始めている。
 対中ODAを始めた第一の目的は、「中国との安定した友好関係の維持・発展」(当時の大平正芳首相)だったが、中国は長年、日本からODAを受けていることを国民に知らせず、逆に反日教育を続けた。これでは、日本国民の理解も支持も得られまい。
 中国が靖国問題を外交カードに利用している以上、日本も有効なカードを持つ必要がある。対中ODAは理屈からいっても正当なカードとなりうる。いまはまた、対中ODA停止の代償策を考えるときでもない。
と書いていましたが,対中ODA打ち切り論を日本国内で盛り上げる意義は ひとえにこの最後の一段落に尽きるでしょう.これを嫌うからこそ,中共外交部からも上のような発言が飛び出すわけですから.北朝鮮への経済制裁とはまた違った意味で,少なくとも《いつ実行に踏み切ってもおかしくない状態》くらいにはしておかないと,外交カードとして活きて来ません.
by xrxkx | 2004-12-02 21:33 | 時事ネタ一般