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【外国人参政権】最高裁判決を読んでみよう
 永住外国人の地方選挙権付与法案が いよいよ明日(11/16)から審議入りします.「採決には至らずに継続審議となる見通し」とのことなので 今すぐどうこうというわけではないのですが,日本国民であれば何人たりとも看過できない重大事には違いないわけで,当blogでも微力ながらご来訪の皆様の注意を多少なりとも喚起しようと努めるのは あながち無駄でもないでしょう.
(というか,最近すっかり「潜水艦萌え♪」な日々を送っていたせいで その他の重要事項を全然書いていなかったな.イカン)
 本日ご紹介するのは,外国人参政権付与を求める訴訟についての 95年2月28日の最高裁判決です.こちらで見つけました.(判決文なるものの御多分に漏れず長ったらしいも文章ですが,資料として重要なので more欄に全文控えを取ってあります.御入り用の方はご参照あれ.)
 これがまた分かったような分からぬような珍妙なる文章なのですが,ともあれ論旨を順に見て行きます.このままだと あまりにも読みにくいので,意味のまとまりごとに改行やらインデントやら付けることにします.
憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、
権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、
我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものである。
そこで、
憲法一五条一項にいう公務員を選定罷免する権利の保障が
我が国に在留する外国人に対しても及ぶものと解すべきか否か
について考えると、
憲法の右規定は、国民主権の原理に基づき、
公務員の終局的任免権が国民に存することを表明したものにほかならないところ、
主権が「日本国民」に存するものとする憲法前文及び一条の規定に照らせば、
憲法の国民主権の原理における国民とは、
日本国民すなわち我が国の国籍を有する者
を意味することは明らかである。
そうとすれば、
公務員を選定罷免する権利を保障した憲法一五条一項の規定は、
権利の性質上日本国民のみをその対象とし、
右規定による権利の保障は、
我が国に在留する外国人には及ばないもの
と解するのが相当である。
 ここまで.
 まずは「基本的人権」と「国民固有の権利」との違いを押えなくては.ちなみに上に出て来る憲法15条1項というのは
公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
という条文のことでしたね.
 それから上の文章で言うところの「公務員の終局的任免権が国民に存すること」の箇所は,「国民主権の原理」を根拠としているのですね.
 ではその「国民」とは何者を指すかと言えば,要は「我が国の国籍を有する者」だと.

 つまり,参政権が欲しいなら,日本国籍さえ取れば万事解決,ということになる.言い換えれば
「国民固有の権利は欲しがるくせに,何で国民になりたがらないの?」
ということ.

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 次に「地方参政権くらいいいじゃない」論への考察.
そして、
地方自治について定める憲法第八章は、九三条二項において、
地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、
その地方公共団体の住民が直接これを選挙するもの
と規定しているのであるが、
前記の国民主権の原理及びこれに基づく憲法一五条一項の規定の趣旨に鑑み、
地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることをも
併せ考えると、
憲法九三条二項にいう「住民」とは、
地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するもの
と解するのが相当であり、
右規定は、
我が国に在留する外国人に対して、
地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したもの
ということはできない。
 ここ,重要.
「永住外国人は日本国民ではないにしても,その居住地域の住民なんだから地方参政権くらいは与えられて然るべき」
という主張を,ここではっきり突っぱねているわけです.その根拠として挙げているのが
  • 国民主権の原理」
  • 「憲法15条1項の規定」
  • 「地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を成すものであること」
の3種類.「住民」の定義に「日本国民であること」がハッキリ含められている意義は大きい.

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 さて,ここまでは良い.問題なのは この後の第2段.
このように、憲法九三条二項は、
我が国に在留する外国人に対して
地方公共団体における選挙の権利を保障したもの
とはいえないが、
憲法第八章の地方自治に関する規定は、
民主主義社会における地方自治の重要性に鑑み、
住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、
その地方の住民の意思に基づき
その区域の地方公共団体が処理する
という政治形態を憲法上の制度として保障しよう
とする趣旨に出たものと解されるから、
我が国に在留する外国人のうちでも
永住者等であって
その居住する区域の地方公共団体と特段に密接な関係を持つに至ったと認められるもの
について、その意思を
日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、
法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する
措置を講ずることは、
憲法上禁止されているものではない
と解するのが相当である。
 何でこうなるの??
住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づき その区域の地方公共団体が処理する
の「住民」に外国人は含まれないと さっき言ったばかりなのですが.要するに,どれだけ長い間日本に住んでいようと,どれだけ「地方公共団体と特段に密接な関係を持」っていようと,日本国民でない者は「住民」に含まれない以上,彼らの意思を「住民の意思」として「日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させる」のはおかしいはず.

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 で,この段落の最後の箇所が この判決の煮え切らないところなのですが,
しかしながら、
右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、
このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない。
と 御丁寧に断り書きが付いている.
 で,勝敗の判定.
以上検討したところによれば、
地方公共団体の長及びその議会の議員の選挙の権利を
日本国民たる住民に限るものとした
地方自治法一一条、一八条、公職選挙法九条二項の各規定が
憲法一五条一項、九三条二項に違反するもの
ということはできず、
その他本件各決定を維持すべきものとした原審の判断に
憲法の右規定の解釈の誤りがある
ということもできない。
所論は、
地方自治法一一条、一八条、公職選挙法九条二項の各規定に
憲法一四条違反があり、
そうでないとしても本件各決定を維持すべきものとした原審の判断に
憲法一四条及び右各法令の解釈の誤りがある旨の主張をもしているところ、
右主張は、いずれも実質において
憲法一五条一項、九三条二項の解釈の誤りをいうに帰するものであって、
右主張に理由がないことは既に述べたとおりである。

以上によれば、
所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができる。
論旨は採用することができない。
 上で言う憲法14条とは
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
というものでした.もともと原告側は
「外国人に参政権を認めない地方自治法や公職選挙法の条項は 基本的人権の侵害にあたり違憲だ」
と言いたかったわけですが,判決は 上で見てきたような「国民固有の権利」論を以て この主張を撥ね付けているわけですね.当然のことでしょう.何度でも言いますが,国民になろうと思えばなれるものを なろうとせずに「国民固有の権利」だけよこせと言うのは 虫が良すぎる.

 以上,上の判決の骨子をまとめると,
  • 外国人参政権を認めない現在の諸法制は違憲には当たらない
  • 但し,憲法そのものは外国人に地方参政権を付与する法律の成立を禁止するものではない
ということ.結局原告側の敗訴に終わったとは言いながら,後者は実は大変なことを言っているのが分かるでしょう.外国人地方参政権付与法案が将来国会を可決した場合,この判例に則って「違憲ではない」論が出て来るおそれが十分にある.
 まぁ,もちろん上の判決はあくまで「地方参政権付与」に限っての話ですが,これが「蟻の一穴」になる可能性を私たちは十分に考慮しておく必要があるでしょう.
 ついでに,永住外国人の大多数を占める韓国人たちには,彼ら自身の本国が外国人参政権についてどういう扱いをしているか(more欄の産経の記事参照)を 少しは考えてもらいたいものです.

◇ 参考 ◇
憲法改正なしに外国人に参政権付与はできない
外国人地方参政権問題を考える・・その1 ほか続編2本 (娘通信♪)
永住外国人地方選挙権(参政権)付与に反対するメール運動
調査委員会は完全なフィクションであり実在の金正日とは一切関係ありません。 (log)
帰還か帰化かお選びいただきたい (rx178の最近気になる朝鮮半島)

◇ こちらもどうぞ ◇
【外国人参政権】で,現行憲法をどうしたいの? (すいか 10/28)



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◇ 参考資料もろもろ ◇
裁判所平成7年2月28日付判決

 憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものである。そこで、憲法一五条一項にいう公務員を選定罷免する権利の保障が我が国に在留する外国人に対しても及ぶものと解すべきか否かについて考えると、憲法の右規定は、国民主権の原理に基づき、公務員の終局的任免権が国民に存することを表明したものにほかならないところ、主権が「日本国民」に存するものとする憲法前文及び一条の規定に照らせば、憲法の国民主権の原理における国民とは、日本国民すなわち我が国の国籍を有する者を意味することは明らかである。そうとすれば、公務員を選定罷免する権利を保障した憲法一五条一項の規定は、権利の性質上日本国民のみをその対象とし、右規定による権利の保障は、我が国に在留する外国人には及ばないものと解するのが相当である。そして、地方自治について定める憲法第八章は、九三条二項において、地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が直接これを選挙するものと規定しているのであるが、前記の国民主権の原理及びこれに基づく憲法一五条一項の規定の趣旨に鑑み、地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることをも併せ考えると、憲法九三条二項にいう「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当であり、右規定は、我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない。以上のように解すべきことは、当裁判所大法廷判決(最高裁昭和三五年(オ)第五七九号同年一二月一四日判決・民集一四巻一四号三〇三七頁、最高裁昭和五〇年(行ツ)第一二〇号同五三年一〇月四日判決・民集三二巻七号一二二三頁)の趣旨に徴して明らかである。
 このように、憲法九三条二項は、我が国に在留する外国人に対して地方公共団体における選挙の権利を保障したものとはいえないが、憲法第八章の地方自治に関する規定は、民主主義社会における地方自治の重要性に鑑み、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に密接な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。しかしながら、右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない。以上のように解すべきことは、当裁判所大法廷判決(前掲昭和三五年一二月一四日判決、最高裁昭和三七年(あ)第九〇〇号同三八年三月二七日判決・刑集一七巻二号一二一頁、最高裁昭和四九年(行ツ)第七五号同五一年四月一四日判決・民集三〇巻三号二二三頁、最高裁昭和五四年(行ツ)第六五号同五八年四月二七日判決・民集三七巻三号三四五頁)の趣旨に徴して明らかである。
 以上検討したところによれば、地方公共団体の長及びその議会の議員の選挙の権利を日本国民たる住民に限るものとした地方自治法一一条、一八条、公職選挙法九条二項の各規定が憲法一五条一項、九三条二項に違反するものということはできず、その他本件各決定を維持すべきものとした原審の判断に憲法の右規定の解釈の誤りがあるということもできない。所論は、地方自治法一一条、一八条、公職選挙法九条二項の各規定に憲法一四条違反があり、そうでないとしても本件各決定を維持すべきものとした原審の判断に憲法一四条及び右各法令の解釈の誤りがある旨の主張をもしているところ、右主張は、いずれも実質において憲法一五条一項、九三条二項の解釈の誤りをいうに帰するものであって、右主張に理由がないことは既に述べたとおりである。
 以上によれば、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
日本国憲法から
 
第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

第15条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

※第8章 地方自治
第92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

第93条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

第94条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

第95条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

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地方自治法から


第11条 日本国民たる普通地方公共団体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の選挙に参与する権利を有する。

第18条 日本国民たる年齢満20年以上の者で引き続き3箇月以上市町村の区域内に住所を有するものは、別に法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。

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公職選挙法から
第9条 日本国民で年齢満20年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する。
2 日本国民たる年齢満20年以上の者で引き続き3箇月以上市町村の区域内に住所を有する者は、その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。

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●韓国 自国では外国人参政権認めず ─産経(おそらく2002年3月1日付)
 韓国内の永住外国人に選挙権を与えるとする条項が削除された選挙法改正案が2月28日の韓国国会本会議で通過した。
 韓国での外国人参政権問題は、金大中大統領が日本政府に在日韓国人への参政権付与を求めてきたことや韓国の「国際化」を目的に推進、国会政治特別委委員会で導入に合意していた。
 だが、本会議前の審議で憲法第一条の「主権は国民にある」との規定に反するとして、満場一致で選挙法改正案から削除された。

by xrxkx | 2004-11-15 21:39 | 時事ネタ一般