新潟での天皇の姿に韓国人は何を思う
 韓国の核実験についてのIAEAの報告書が上がって来るのは来週になりそうだとのことなので,少し寄り道を.先ほど「rx178の最近気になる朝鮮半島」さんのところで読ませていただいた記事に 面白いのがありました.
被災地の陛下を見る韓国人 ─rx178の最近気になる朝鮮半島 11/09

元ネタは これ:
※「地震被害 たいへんでしょう」 跪く日王 ─朝鮮日報 11/07 (原文
(註:朝鮮日報とは謂っても,ここはフォトニュースを専門に扱うBBS形式のサイトで,新聞からの転載記事を中心とした本サイトとは 一応別のサイトになっているようです)
 記事そのものは これといって目新しいものでも 変わったものでもありません.
 明仁・日本王と美智子王妃が6日,先月23日の強い地震により大きな被害を受けた新潟県を訪ね,避難民らを慰労している.明仁王一行は長岡市など各地の避難民宿所を訪れ「希望を持ってください」などと避難民らを慰労した.王と王妃が災害地域を直接訪れたのは1995年に神戸で起きた阪神大地震以後初めて. / 東京=ロイターニューシス
というだけのもの(記事中の「王」「王妃」については脚註1を参照).それはともかく.

 たったこれだけの記事を,朝鮮日報がわざわざフォトニュースとして(それも よりによって天皇の写真入りで,だ)載せているのには 相応の理由があるでしょう.
「日本では天皇までがこうして災害時には親しく国民を見舞うなど,国の指導者(脚註2を参照)が心から国民を思っているというのに,それに引き換え 我が韓国では…」
という方向に読者を誘導しようとする意図が ありありと見て取れます.金大中政権以来 政権批判の一方の旗頭になってしまった朝鮮日報の,いつものやり方と言ってしまえば それまでの話.もっとも,実際「台風で大きな被害が出ている時に盧武鉉はオペラ見物をしていた」だとかいった,つい先日日本でも聞いたような政権批判もあるようですが….

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 それはともかく,新潟地震と天皇という,韓国人には直接何の関係も無い話題を扱った この記事に,僅か20時間余りの間に50本を超えるコメントが付いているのは やはり異例の事でしょう.
 その大きな原因の一つは,やはり この写真が韓国人たちに与えたインパクトの大きさにあると思います.この写真では天皇が体育館らしき建物の床に正座していますが,韓国人にとっては これは 例えば罪人が裁きを受ける時とか,あるいは謝罪の時とかにしかしない座り方です.
 韓国人にとって「軍国主義の象徴」である天皇は,彼らの頭の中では もっと威張りくさり,ふんぞり返っていなくてはならない人物なわけです.その彼が 被災地を親しく訪ね,被災者らの前に跪き,床に座って言葉を交わしている図というのは,彼ら韓国人から見れば 私たちの想像する以上に衝撃的な光景だったようです.おそらくは この記事を載せた記者は その辺の効果を計算に入れていたことでしょう.
 11/09 16:30現在,この記事に付けられたコメントは 全部で55件あります.長すぎて訳出していられませんので(機械翻訳でよろしければこちらをどうぞ),話の流れだけ概観してみますと─

 まず「跪く天皇」の姿に「感動した」「羨ましい」などとする意見が12件(うち8つが冒頭1/4に集中).
 その他に,「それに引き換え韓国の指導者は」というのが 6件 (これも全て前半に集中).朝鮮日報としては,このあたりが思惑通りの反応でしょう.

 それが,13件目 (11/07 21:22:19) で上述の「座り方」の話が最初に出て来たあたりから 話が脱線し始めます.曰く「あれは日本ではごく普通の座り方なのだ」「あれを見て感動している奴は無知」等々.それへの同意が 20件目 (11/07 22:40:29).曰く「他国を羨んだり自国の指導者を憎んだりしてばかりいないで 自らも真に国民の為を思う指導者を選ぶことを学んでもらいたいものだ」.
 それらへの反論が25件目あたりから出始め,そこから 話が今度は「明仁天皇個人の印象」に脱線して行くのが分かります.全般に随分とウケが良いようです(笑).

 その一方で,朝鮮日報批判らしきものが最初に登場するのが 18件目 (11/07 22:31:33).曰く「盧武鉉大統領より天皇が好きか」.44件目 (11/08 08:55:48) などは朝鮮日報を指して「かつての主人(天皇のこと)が恋しいか」などと言い出す始末. この類の韓国人から見れば朝鮮日報ですら親日に見えるらしい.
 この一団が 自国の政治家たちの不甲斐なさに憤る上述の人々に噛み付き始めます.あとはもう,盧武鉉政権を支持する(ということは当然ながら朝鮮日報を嫌っている)左派と 同政権に批判的な右派との間での,お決まりの罵詈雑言の応酬となって 幕が下ります(笑).ここまで来ると もはや天皇は単なるダシにされている.

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 以下,所感など.

 こうした「天皇の姿に感動した」「羨ましい」とする韓国人らの反応を以て 彼らが直ちに今までの反日感情を捨てたり,歴史認識や将来の日韓関係のあり方について見識を新たにしたりといったことまで期待できるかといえば,答えは明らかにNoでしょう.
 例えば,天皇に対して好印象を持っているという28件目 (11/08 00:18:20)ですら,
「自分の先祖が百済の王族だと正直に告白したり,一般人の妻を娶ったりといった姿を見るにつけ『アキヒトは第2次大戦の戦犯ヒロヒトとは違う』という好印象を持っていたが,(今回の写真を見ても)やはり人柄も良さそうに見える」
と言っている.
 逆に日本に対して否定的な立場であるらしい38件目 (11/08 07:17:01,これはどうやら上の「あれは日本ではごく普通の座り方だ」とする人々の一人で,自称「日本に住むおばさん」とのこと)などに至っては
「上のような『天皇の人柄に感動した』などのコメントを日本人が見たら さぞや喜ぶだろう」
かつて韓国を侵略した天皇の父(昭和天皇のこと)の罪も韓国人らはすぐに忘れるだろうと日本人は思うに違いない」
と言い切って憚らない.
 問題は,今上天皇に対して好印象を持ったであろう上述のような人々の頭の中でも,歴史教育の中で叩き込まれる「悪辣なる日帝」と現在の日本とを一応区別して考えるべきだとする認識にとどまっていることにあります.
 今までにも何度か書きましたが,昨今の韓国人が好んで口にする「未来志向」の日韓関係なるものは,戦後 韓国人らが口を揃えて主張して来た,彼らの一方的・独善的な被害者意識に基づく歴史認識を 日本人が無条件・全面的・永久的に受け入れることを前提としてのみ存立し得るものです.彼ら韓国人たちのこうした思考様式の中には,過去 日本が朝鮮に於いて行なった施政を 史実に即して功罪両面から冷静に再評価するという姿勢が 完全に欠落しており,日本人としては到底受け入れ得るものではありません.

 そもそも そうした「未来志向」を以ては,同じように日本統治を経験した台湾に於いて,こうした反日感情が何故定着しなかったのかという疑問についても 満足な回答を得ることは出来ないでしょう.
 その意味に於いて,歴史の事実に迫り これに正当な評価を与える事業の方向を誤らせている最大の要因は,他でもない 「過去の清算」を事あるごとに叫ぶ韓国人たち自身の 歴史に対する取り組み方にこそ宿っているのだということを,私たちは まず知っておく必要があります.
 その一方で,朝鮮と台湾との間に存在する日本観の大きな隔たりを「国民性・民族性の違いによるもの」として安易に切り捨ててしまう態度に陥らぬよう,私たちは常に自戒する必要があるでしょう(このことについては後日少し真面目に考えてみたい).さもなければ,韓国に於けるのと同様の反日感情が いつの日か台湾に芽生え始める可能性への備えを,日本は怠っていることになります.

◇ 脚註 ◇
  1. 上の記事中 天皇・皇后を「王・王妃」と呼んでいますが,これはもともと朝鮮に於いては「『皇』『帝』『勅』『陛下』などは中国の皇帝のみが用い得る語」だとする慣習があるからで,例えば李朝の頃の朝鮮人らは自国の国王を呼ぶときも「国王殿下」と呼んでいました.
     明治新政府が朝鮮との修交を求める使節団を送った時,日本側の送った書簡に「帝」「勅」などの文言が含まれていることに注文をつけた朝鮮側が 書簡を受け取ろうとせず,これが後に「雲揚号事件」に発展して行ったのは有名な話.
     同記事のコメントの中にも,「日王ではなく天皇と呼ぶのが正しい」とする意見がちらほら見られるようですが,こうした用語が 三大新聞に於いてすら しばしば堂々と用いられていることは,記憶しておいて損は無いでしょう.
  2. 「天皇は日本の『指導者』ではないのだから,韓国の政治家と比べてみても無意味」とする意見も一応あった (2004-11/08 10:33:42).

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by xrxkx | 2004-11-09 21:48 | 時事ネタ一般