人気ブログランキング | 話題のタグを見る
【言論改革立法】三大新聞潰しに本腰を入れるウリ党
 韓国の与党「ヨルリン・ウリ党」が先頃発表した「新聞等の機能保障及び読者の権益保護等に関する法律」案をめぐって ひと騒動持ち上がっているようです.15日に各紙が一斉に報道し,三大新聞については日本語版のweb記事も上がって来ていましたので,お読みになった方も多いかと思います.

大手新聞が標的か 与党が「メディア関連法案」確定 ─朝鮮日報
「ウリ党」、新聞社シェアを制限 ─中央日報
与党が「新聞法」制定案確定、野党は「政権批判紙狙った悪法」と批判 ─東亜日報

 様々な条項があるらしく,私もまだ全容を把握し切れていないのですが,この中でひときわ目を引いたのが
新聞社1社あたりの市場占有率が30%,または3社合わせて60%を超えた場合,公正取引法により処罰する
という条項.これが 現在の盧武鉉政権に批判的な保守三大新聞を標的にしたものであることは明らかでしょう.
 各紙は一斉に同法案についての社説を同15日付で掲載しています.当然ながら,三大新聞側は口を揃えて同法案を糾弾しています(今回は東亜日報も日本語版を載せるのがえらく早い).
批判新聞への仕返しなのか ─朝鮮日報
 新聞の影響力と世論形成の機能も、根本的に読者の新聞選択の自由から生まれる。シェアを規制することは、政府が読者にどの新聞は読み、どの新聞は読むなと命令するのと同じだ。国民を愚弄する人格権侵害だ。
新聞も自由に読めない世の中? ─中央日報
(原題は「言論市場規制は言論の自由の侵害だ」)
 よい新聞だから読者が読むというものだが、「その新聞は発行部数が多いから、別の新聞を読め」と法で定めるのは話にならない。国民はこれから新聞も自由に読めない国に住むことになる。独裁政権時でもこういう発想はなかった。
「批判的マスコミ」に対する本格的な弾圧だ ─東亜日報
 違憲的、反市場経済的新聞法を通じて批判を抑え、マスコミを掌握しようとする政権は、決して成功しないことを歴史が物語っている。「史上初の議会多数を占めた民主改革勢力」という政党が、このように非民主的な法案を出した事実が残念である。批判マスコミにも傾聴し、相生の政治を行なうことがそんなに難しいのだろうか。
 三大新聞以外だと(以下,全てmore欄に全訳を載せておきます),まず文化日報は三大新聞と概ね同じ立場.政権によるマスコミ市場への恣意的な介入を警戒する論調です.
● 言論の自由の本質毀損を憂慮する ─文化日報 (原文
もしもこの条項が親与党的な論調を示して来た放送や一部インターネットメディアにも適用されるなら,このような指摘や分析はこじつけとも言えよう.しかし,放送とインターネットメディアは除外されている.有毒批判新聞にのみこの条項が適用されるということが火を見るより明らかだという点に於いて,これは民主主義が目指す公平性の原則に背いている.
 一方で,上のシェア制限で恩恵を受ける側である京郷新聞などは,同法案がまだ物足りないと言う.
● 与党の言論改革法案,問題あり ─京郷新聞 (原文
…しかし 現在わが国には市場占有率が30%を超える新聞が無いという点で,この条項は実効性の面でどうしても限界がある.実際,民主労働党は新聞社1社の市場占有率の上限を20%としており,ウリ党も論議の過程でこれを積極的に検討していたことが明らかになっている.…
 同法案の支持派の中でも,ソウル新聞(ここだけ社説の掲載が1日遅れて16日だった)などは,各論では政権による言論市場の恣意的操作には一応警戒感を示す一方で,総論としては同法案を後押ししており,《物足りながっている》点では京郷新聞と同じ.シェア制限についても「緩すぎる」という意見.
● 期待外れの与党の言論改革法案 ─ソウル新聞 (原文
「懲罰的損害賠償制度を撤回したのは良かった」
「新設される韓国言論振興院が引き受けることとなった基金支援対象の選定作業などは,政府の影響力を遮断する仕組みを備えるべきだろう.さもなければ,選別支援を通じた 別の言論統制の疑いから脱することは出来ない」
「事実上 巨大新聞の言論独占を放置するものではないかと憂慮される」
「新聞市場の正常化と与論の多様性確保の為には,言論改革立法はこれ以上引き延ばしには出来ない」
 意外に思われる向きもあるかも知れませんが,「物足りない派」の筆頭であるはずのハンギョレが 社説でこの件を採り上げていません(コラムと「討論板」はあった).こういうとき,ハンギョレはまず読者に討論させ,自分は矢面に立ちたがらない変な習癖があるようですが,それはさておき.

 もともと市場占有率の上限を「1紙で20%」とする案を出したのが民労党であることは間違い無さそうです.それにしても,かの国の人々は「30%では引っ掛かる新聞が無いから もっときつくせよ」という考え方に問題ありとは思わないのでしょうか.要するに「三大新聞をターゲットに出来るようにボーダーラインを決めろ」と言っているわけです.法というものが 一代の政権によってこうも恣意的に弄り回されて良いものなのか.
 もっとも,退潮著しい与党が自己に有利な小選挙区制を強引に導入するようなケースは 以前どこかの国にもありました.但し,今回の韓国の場合,「言論改革法案」を後押ししている「市民団体」というのがいるらしい.大方 かの「ノサモ」の連中でしょうけれど, そういった運動が背後にあるという点が日本の場合とは大きく異なります.
 どちらが良いとか悪いとか言ってみても始まらないでしょうが,どうも私などの眼には,先の総選挙で 吹けば飛ぶような少数与党から 一躍国会で過半数を占める大政党に躍進するに至ったウリ党が 有頂天の余り 法をオモチャにしているように見えてなりません.で,それを焚き付けているのが学生運動上がりの「市民運動」だと来ているから始末に負えない.かの国には 専制と衆愚政治だけがあって,その真ん中がすっぽり抜けているように見える.

 野党も野党で,先日もハンナラ党の某議員が「与党が四大改革法案を強行採決するなら実力行使も辞さず」といったコメントを発表していたのを読みました.また お得意の「国会議長席での乱闘騒ぎ」でもやるつもりなのかどうか知りませんが,議会制民主主義の成熟度という点で,どうも韓国は今なお日本の安保闘争の頃のレベルにあるようにしか見えない.55年体制健在なりし頃,もしも何かのはずみで社会党-総評ブロックが政権でも取ってしまっていたら,日本でも同じようなことが起きていただろうか,と考えてみると,何やら愉快でもあり薄気味悪くもあります.
 20年ばかり前に,「この程度の国民にはこの程度の政治がふさわしい」と放言して顰蹙を買った政治家が どこかの国にいましたが,お隣の国の政権党とそれを支える「市民運動」が巻き起こす こうした迷走劇を見るにつけ,彼の言わんとしていたことが多少なりとも分かる気がします.



◇ 韓国語版記事 全訳 ◇

● 言論の自由の本質毀損を憂慮する ─文化日報 (原文
 一国の民主主義がどれくらい定着しているかを量る上での2つの普遍的尺度は,政党活動の自由と言論の自由だ.政党活動が保障されなくては自由かつ公正な選挙が行なえず,言論の自由が毀損されては国民が自由に政治的見解を形成し参政権を行使することが出来ないからだ.そのため 民主主義に向かう人類の歩みは公正な選挙と言論の自由の為の闘争であった.ヨルリン・ウリ党が15日発表した「新聞等の機能保障および読者の権益保護等に関する法律」は,基本的にこれら「動かすことの出来ない」民主主義の大原則に抵れるものだ.メディア市場の形成過程を歪曲しかねず,挙句 自由かつ公正な政治参与を難しくしてしまう内容を容易に見出し得る.
 まず与党の「新聞関連法案」について憂慮せざるを得ないのは,「法」の名のもとにメディアの生命である政権批判の自由を抑え込む道具として利用される素地が多いという事実だ.第16条「市場支配的事業者」はまさしく批判メディアに対する規制,それ以上でもそれ以下でもない.単一の新聞社の市場占有率を30%以内に制限し,3社の市場占有率の合計が60%を超えた場合は公正取引法に定めた市場支配的事業者と規定し,制裁を行なうというものだ.もしもこの条項が親与党的な論調を示して来た放送や一部インターネットメディアにも適用されるなら,このような指摘や分析はこじつけとも言えよう.しかし,放送とインターネットメディアは除外されている.有毒批判新聞にのみこの条項が適用されるということが火を見るより明らかだという点に於いて,これは民主主義が目指す公平性の原則に背いている.こうした事実を政権が知らずにいる筈は無いだろう.与党の今回の法案には,多分に「政治的意図」が含まれていると見なさざるを得ない第一の理由だ.
 新聞市場だからといって「市場民主主義」から除外するわけには行かない.権力が法の名のもとに新聞市場に介入するのは反市場的だ.違憲的発想であるのは言うまでもない.新聞社間の過当競争によって新聞市場が歪曲されているのは分からないわけでもない.しかし,それを認めたとしても,読者の新聞選択権,いうなれば民主主義国家に於ける国民の知る権利を含む「思惟の自由」は如何なる場合にも侵害されてはならない.新聞市場に対する人為的調整によって与論市場が歪曲されたなら,正しい与論形成が難しくなり,民主主義そのものが重大な危機に陥りかねないということを知るべきである.
 結果的に新聞全体の批判機能が喪失し,言論に対する国民の信頼が地に墜ち,遂には新聞市場が荒廃の道を辿るに至ることを憂慮せずにはいられない.
 さらに衝撃的なのは,新聞経営に対する統制を通じて政権がメディアを掌握しようとする意図を露わにしている点だ.第15条「資料の申告」条項は,新聞社が発行部数から購読料・広告料・財務諸表をはじめ株式所有内訳および社員の個人別内訳に至るまで文化観光部長官に報告すること,とある.1980年の第5共和制時代に導入され,87年の民主化とともに削除された条項の 事実上の復活である.メディアを政権の私有物と見なした第5共和制の専制政権が伝家の宝刀として用いた,まさにその武器を参与政権が「コピー」しているのは何やら切ない思いすらする.読者を保護するという名分のもとに新聞社に「読者権益委員会」を設置し,編集権を保障するという理由を楯に「編集委員会」を置くといった構図も,実際はメディアに対する外部介入を通じて権力がメディアを思いのままに操ろうとする政治的な下心のひとつの断面であることは否み難いだろう.
 我々は現政権が民主主義の大原則という正道に立脚して言論政策を立案するよう求める.再び原則論を強調するが,言論の自由は「民主主義の生命線」である.言論の自由の本質的内容を毀損する政府は,如何なる場合であれ 民主主義政権とはいえない.理性あるアプローチに立ち戻るよう望む.

● 与党の言論改革法案,問題あり ─京郷新聞 (原文
 ヨルリン・ウリ党の言論改革法案が確定した.この法案には,これまで市民団体レベルで論議されて来た言論改革の諸課題がずらりと網羅されている.政界初の意味のある言論改革法案を準備したという点で一応は期待感を持たせるものだ.しかし一部条項を見ると,当初の案や論議の内容から大きく後退したものも目に付く.
 ウリ党は新聞社1社の市場占有率が30%,3社で60%を超えれば公正取引法上の市場支配的事業者と規定し,様々な制裁を科すとした.しかし 現在わが国には市場占有率が30%を超える新聞が無いという点で,この条項は実効性の面でどうしても限界がある.実際,民主労働党は新聞社1社の市場占有率の上限を20%としており,ウリ党も論議の過程でこれを積極的に検討していたことが明らかになっている.にも拘らず,土壇場で新聞社の(訳註:株主の)所有持ち株率を30%に制限した条項を削除したのに続いて,市場占有率規定までも このように後退させ,新聞市場の独寡占防止という当初の趣旨を大いに色あせさせてしまった.
 法案はまた,新聞共同配達の為の流通専門法人を支援し得る根拠を作った.このほか,新聞社の購読強要を禁止し,広告物の量が全紙面の50%を越えないよう制限した.全て 多様な与論を保障し,言論市場の秩序を正すうえで役立つに足る内容だ.放送法の分野では,視聴者委員会の権限を強化し,民放の最多出資者が変わった場合は放送委員会の承認を得ることとした,意味のある題目だ.
 一部野党や守旧メディアは,言論改革について「人為的に言論に制約を加えるもの」として非難している.しかしこれは理屈に合わない.言論はたとえ私企業という形態で運営されるにせよ,その扱う分野は高度の公共的領域だ.言論が一般私企業のように「勝手に運営する」と言い出したら,そのとき発生する被害は丸ごと言論の需要者に返って行く.言論改革は何人も回避し得ない時代的課題である.

● 期待外れの与党の言論改革法案 ─ソウル新聞 16日 (原文
 ヨルリン・ウリ党の三大言論改革法案が,さんざん期待させた末に大幅後退した形で公表された.何より核心事項だった 新聞社の持ち株率制限制度が無くなり,新聞市場占有率規制が「1紙あたり20%,3紙で60%」案から「1紙あたり30%,3紙で60%」に緩和されたのには失望させられた.市場支配的事業者となっても,他社への営業妨害行為などにより営業収入の3%以内で課徴金を科すことが出来るという規制条項しか無く,事実上 巨大新聞の言論独占を放置するものではないかと憂慮される.
 懲罰的損害賠償制度を撤回したのは良かった.言論被害を救済するとは言っても,言論の核心機能である公論形成機能そのものを萎縮させてしまってはならないからだ.新聞発展基金や流通専門法人設置は,与論の多様化と 萎縮状態にある新聞社法の補充に寄与するだろう.ただ,新設される韓国言論振興院が引き受けることとなった基金支援対象の選定作業などは,政府の影響力を遮断する仕組みを備えるべきだろう.さもなければ,選別支援を通じた 別の言論統制の疑いから脱することは出来ない.
 核心内容が変質してしまった言論改革法案は,改革立法を請願した言論改革国民行動などの市民団体から直ちに反発を買っている.新聞・放送・通信に対する過度の規制と,インターネットメディアに対する相対的な特恵なども,関連業界の反発が予想される.しかし,新聞市場の正常化と与論の多様性確保の為には,言論改革立法はこれ以上引き延ばしには出来ない.途中で廃棄された定期刊行物法改正案の轍を踏まないで貰いたい.与党は十分な与論収斂を通じて法案を練り,せっかくの社会的合意の雰囲気が醸成されつつある言論改革立法を成就するよう最善を尽くすべきだろう.

by xrxkx | 2004-10-17 15:14 | ここが変ニダ韓国人