「米軍再編」考: だからこそ自主国防を
 昨日(2004/10/01)付の産経の記事に,「首相、沖縄米軍の本土移転に言及 国内調整を先行」というのがありました.それによると小泉首相は次のように語った由.
「政府は自治体に事前に相談し、自治体がオーケーした場合には米国と交渉する
「沖縄以外の自治体も、自分たちが(基地を)持ってもいいという責任ある対応をしてもらいたい」
「名前が挙がるとほとんどの自治体が反対だ。これではなかなか進まない」
 同じく昨日付の読売の記事「沖縄の米軍基地、一部本土移転を検討へ…首相明言」にも,こうあります.
「沖縄の基地負担軽減は、小泉内閣の重要課題だ。ただ、(日米協議の中で)沖縄以外の移転先の名前が上がると、ほとんどの自治体は反対する。これではなかなか進まない」
「日本政府が沖縄以外の都道府県のどこに持っていくかということを考え、(移転先候補の)自治体に事前に相談し、自治体が受け入れた場合には、『日本はこういう考えを持っている』として、米国と交渉する」
「沖縄の基地負担軽減に賛成だが、沖縄以外に移転するのはいやですと言ったら、いつまでも負担は軽減されない。お互いに苦しさなり、負担を分かち合おうと(いうことだ)」
 これだけ読んで 「小泉総理は沖縄の負担軽減に前向きだ」などと早とちりするなかれ.「天木直人・マスメディアの裏を読む」というサイトでは,執筆者の天木さんが 「あなたが言うべきは「在日米軍を削減、撤退させる」ということだ 」という投稿の中で,いつもにも増して激した口調で 次のように書いていらっしゃいます.
 つくづく小泉首相はずるい男だと思う。卑怯な男だと思う。どこの自治体があらたに基地を受け入れると言うのか。困難な決断を国民に丸投げして、その決断が出来ないなら沖縄にある基地を本土に移転など出来ないではないかと恫喝し開き直るつもりなのである。そもそも未だに沖縄の米軍ヘリの墜落現場を視察もせず、沖縄県民の苦悩と怒りを共有しようとしないような人間に、在日米軍の問題を本気で解決する覚悟などあろうはずがない。
 米軍撤退については ひとまず措くとしても,小泉首相の無責任さという点に関する限り 私も全く同感です.
 読売は2004/09/29付の社説 [小泉新体制]「外交・安保の基本戦略を固めよ」 の中で 次のように述べています.
 首相は、大野防衛長官への指示で、第一の課題として、新防衛計画大綱の策定をあげた。
 冷戦時代を引きずった現在の安保戦略から、テロや大量破壊兵器という新たな脅威や、北朝鮮という現実の脅威への対応に即した新たな安保戦略への転換を迫られているからだ。
 安保戦略の変化に伴い、当然、自衛隊の編成・配置や装備体系も見直さなければならない。在日米軍の再編問題が進むことを考えればなおさらだ。
 昨今の米軍再編の動きに関連して,駐日米軍の役割が 日米安保条約の枠内での《日本の防衛》から大きく逸脱しようとしていることについては,以前当blogにもお越しいただいた「アクエリアン」さんが 自サイト「Aquarian's Memorandum」の09/27付の投稿「日本を拠点とする米軍再編の動き」の中で詳しく考察していらっしゃいますので,一読なさることをお勧めします.
 イラク戦争勃発より遥か以前から 読売は「日米同盟を基軸にしつつ、国連も活用しながら、国際社会の平和と安定を図るのは日本の基本的な方針だ」を繰り返していましたが,他でもない この文言が,国連とアメリカとの利害関係の対立を 親米保守論壇自身が認めるものに他なりません.それを承知でアメリカの世界戦略に追随するのを是とするような国が 国連安保理常任理事国入りに名乗りをあげたところで,どこの国が本気でこれを支持しますか.「ジャップは黙って金だけ出していればよいものを」と思われるのが関の山でしょう.
 独自の世界戦略というものをハナから持とうとせず,国際政治の多極化に積極的にコミットして行く決意も無く,冷戦当時から今日の自称「テロとの戦い」の時代に至るまで一貫してアメリカの将棋の駒たることを国防の要諦とし,日米地位協定にすら規定の無い「おもいやり予算」などでアメリカの歓心を繋ぐしか能の無い現在の政府が,あたかも各自治体の《Not In My Backyard主義》が沖縄の負担増の原因であるかのように言い繕い 開き直る,こうした対米盲従の徒輩には 不潔感すら覚えます.
 これは何も小泉政権に限ったことではない.右であれ左であれ,「自分たちの国は自分たちの手で守ろう」「自分たちの国の行く末は自分たちで決めよう」という覚悟もなしに「国際社会の平和と安定」や「日本の国益」を口にする人物を,私は心の底から軽蔑します.

 やはり昨日付の読売の記事「アル・カーイダのナンバー2、声明で対日攻撃呼びかけ」には
ザワヒリ容疑者は声明で、アフガニスタンやイラク、チェチェンの占領とイスラエルの「生存」に協力したとして、米英両国、オーストラリア、フランス、韓国のほか、日本を名指しして非難。これらの国の関連施設に対して攻撃を行うようイスラム教徒に呼びかけた。
とありますが,当然でしょう.中東の人々から見れば 日本はアメリカの占領統治に気前よくカネも人も供出して来た《侵略者の手先》に見えても何ら不思議ではない.タリバン政権であれフセイン政権であれ,向こうから日本に悪さを仕掛けたことが ただの一度でもありましたか.自称「テロとの戦い」を表看板に掲げる西側社会の中ですら 未だ十分な信用と尊敬を勝ち取り得ない わが日本が,いわんや十把一絡げに「テロ」呼ばわりを受け,アメリカ単独の威力外交の前に捻じ伏せられようとしている国々から不信感や反発を買うのは,むしろ日本の自業自得だと言うべきです.

----
 おまけ.
 今日(2004/10/02)付の読売の記事「 米海軍、ミサイル防衛でイージス艦を日本海に配備」には こうあります.
今回、日本海の警戒にあたるイージス艦は、北朝鮮などから弾道ミサイルが発射された場合、その情報をアラスカ州やカリフォルニア州の基地に瞬時に伝える役割。
 「あ,撃ちました.…命中しました」などと米本土に御注進してもらっても仕方ないわけです,日本国民としては.「撃たせる前に敵のミサイル発射設備を叩く」くらいのことはやってもらわないと意味が無い.その為には,如何にイージスとはいえ 駆逐艦1隻でどうなるものでもないでしょう.やるならミッドウェー級の空母1隻くらいは日本海に回して来るくらいの覚悟が無くては話にならない.いま米軍にそれだけの余力がありますか.
 「ポスト冷戦時代の 激変する世界情勢に合わせた 国防体勢の見直し」の必要性そのものについては,私もこれに大いに賛同するに吝かではありません.だからこそ,「危なくなったらアメリカが守ってくれる」という盲信やら,「だから普段からアメリカさんの言うことは出来るだけ聞いておかないと」という《長いものには巻かれろ》的な外交姿勢は 一刻も早く捨て去るべきです.
[PR]
by xrxkx | 2004-10-02 16:48 | 時事ネタ一般