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【韓国核開発疑惑】IAEA理事会開幕後の韓国各紙の論調
 昨日掲載した京郷新聞の社説に続き,現在までに上がって来ている韓国各紙の核疑惑関連社説 5本追加.
 朝鮮日報と中央日報のは 既に日本語版が出ていましたが,東亜日報はいつも日本語版が上がって来るのが遅いので 自分で訳出してしまいました.

孤立無援の韓国「核」外交 ──朝鮮日報 2004/09/14 19:43
 国際原子力機関(IAEA)は13日、事務局長の非公開報告書を通じ韓国の核物質実験問題について「深刻な憂慮」を表明した。IAEAは韓国が1980年代に150キログラムの極少数のウランを生産したという新たな事実も指摘している。
 「大したことではない」という韓国政府の説明とは異なり、問題がかなりこじれている。韓国政府が疑惑の尾を明確に切り取ることができずにいるためだ。ウラン濃縮実験とプルトニウム抽出の事実が確認されて以降、韓国政府の説明は外国メディアが提起する疑惑を後追いすることに汲々としている。何かひとつ釈明すれば外国メディアはすぐにどこかで韓国政府の説明を覆す情報を探し出し新たな疑惑を提起する状況となっている。
 今回提起された「金属ウラン150キログラム」問題も同様だ。韓国政府はこれが既に明らかにされている核物質実験と連関した事案であるのに加え、IAEAの報告内容は対外秘であるため政府が先に公開しなかったと釈明している。しかしこうした消極的な姿勢では疑惑をさらに大きくしてしまうだけだ。外国メディアと関連諸国にずるずる引きずられるような政府の中途半端な対応姿勢が事態をここまで悪化させたと言っても過言ではないはずだ。
 核と関連した問題は高度の国際政治的性格を帯びるのが常だ。しかし今の大韓民国にはきわどい状況の中で韓国の言葉を信じてくれ、韓国の言葉を土台に他人まで納得させてくれる同盟と友邦がいないのである。孤立無援とは、まさにこの場合に使う言葉だ。韓国がなぜ、いつからこうした状況になってしまったのだろうか。
 韓国が国際社会で核兵器開発疑惑がある国家というイメージで覆われた場合、外交、経済、安保的損失は計り知れない。4年前あるいは22年前にあった極少数の核物質実験が今になって突然問題となり、日を追うごとに拡大している。政府がこの事態に適確に対応しなければならないのはもちろんだが、今回の事態の間接的背景と言える「どうして韓国が国際社会の孤児になってしまったのか」という根本的な問いに対する答えも探し出さなければならない。
ウラン濃縮実験をめぐる議論なぜ広がるのか ──中央日報 2004/09/14 18:29
0.2グラムの濃縮ウランを抽出した事実をめぐる波紋が、ますます深刻な局面に進みつつある。一昨日行われた国際原子力機関(IAEA)の定例理事会で、IAEA・エルバラダイ事務局長が「韓国政府が金属ウラン150キロを保有したにもかかわらず、申告していなかったのは重大だ」と強い懸念を表明したからだ。
当初、この懸案が初めて浮上した当時、科学技術部は「それほど問題でない」との姿勢で対処した。だが、懸案の深刻性を懸念した外交通商部が予測していた通りに、状況が展開されたのだ。政府は「韓国の核抽出のレベルは微々たるもので、核兵器製造の意向がないとの点を、IAEAも認知しており、それほど問題にならないだろう」との立場だ。しかし、政府側は黙っているのに1日が過ぎれば新たな事実が分かり、国民は「いったい事件の真相は何か」と疑念を抱かざるを得ない。
今後、IAEAが韓国にどんな措置を取るかは予測できない。最も望ましいのは「安全措置を履行しようとする韓国政府の努力は評価できるが、手続き上に問題があった」とし「注意」呼びかけるくらいのものだ。しかし「安全措置不履行による国連安保理への付託」などの決議も排除できない。
政府は、IAEAへの報告内容が対外秘であるため、あらかじめ公開するのが不如意だ、と釈明している。だとしても、今回の事件は、国民に混線と不安を与えたとの点から、遺憾に思える。とりわけ、初期に「なんの問題もない」という断定的な言い方で、余地を残さなかったのは失策だ。
何よりも、今回の事件は疑惑だらけだ。およそ20年前のことが、なぜ、この時点に浮上したのか、強い疑念を抱かせる。政府がIAEAに報告した6項目の問題点が、数日後に外信を通じてそのまま報じられた点も釈然としない。国民が知りたがっているのは、現在、展開されつつある過程が韓国の国益と、どんなかかわりがあるか、との点だ。
韓国側のささいなミス、または誤解によって、予期せぬ被害を受けるのではないか、と懸念されるからだ。こうした点から、国民も今回の懸案の真相を知る必要があるだろう。何でもない、とし適当に済ませた後、外信が報じれば、その時になってこそ、もう一つの釈明をする、などといった具合では信頼を得られない。
● IAEA 「深刻な憂慮」,心配しなくてよいのか ──東亜日報 2004/09/14 19:10 (原文)
 モハメッド=エルバラダイ国際原子力機構(IAEA)事務総長が,先頃始まったIAEA理事会で 韓国の核物質実験を「深刻な憂慮事案」と規定した.外信はIAEAが扱っている韓国の違反事例が6件に及ぶと伝えている.ウラン分離実験とプルトニウム抽出実験しか知らなかった国民にとっては驚くべき知らせだ.問題解決はおろか,ますます深刻化しているではないか.
 にも拘らず,政府関係者らは「深刻な憂慮」は「通常的に用いられる用語」だとして,新たに明るみに出た疑惑についても「問題にはならない」という反応を示している.IAEAは核活動に関する国際的な審判官だ.そのIAEAが申告に憂慮しているというのに,国民には「何事もない」では説得力が無い.各関連活動をちびちびと小出しに公開し,国際的疑惑を呼び起こし,IAEAの査察対象となったという現実にそぐわない安易な対応と言わざるを得ない.
 政府はIAEA説得に全力を傾けるべきだ.政府の言うとおり mg単位のプルトニウム抽出,実験レベルのウラン分離,問題とはならない金属ウラン生産だったのなら,なぜIAEAを説得できないのか.IAEA事務総長が根拠も無く危険を誇張したと言うのであれば,国の名誉にかけて正すべきだろう.
 政府が僅かな過ちを隠したり,報告をしなかったために 事が大きくなったのであれば,正直に告白して疑惑を解くべきだ.外交部と科技部の足並みが揃わずに混線が生じてしまったのであれば,今からでも政府レベルの総合的な対応を通じて「無刑」を勝ち取らねばならない.
 こうしたやり方でIAEAに引きずられれば,核疑惑から抜け出せないのはもちろん,国家の信頼まで損なわれる.プルトニウム抽出は外信報道を通じて,150kgのウラン生産はIAEAを通じて知るに到った国民の不信も深まらざるを得ない.IAEAが政府の釈明を認めなくては,国民も政府を信じられない.
● IAEA憂慮解消に積極的に乗り出せ ──ソウル新聞 2004/09/15 10:27 (原文)
 モハメッド=エルバラダイ国際原子力機構(IAEA)事務総長が,13日開幕した第48回IAEA定期理事会報告で 韓国のウラン分離およびプルトニウム抽出実験について「深刻な憂慮事項」だと述べたのは容易ならぬ事だ.理事会開幕前までは わが(訳註:韓国の,の意)当局者らは,分離されたウランは少量であり,核兵器開発とは無関係だという点を挙げて それほど憂慮すべきことは無いという雰囲気だった.エルバラダイ総長の報告は,結果的に我々の対応の仕方に問題があったことを示している.
 エルバラダイ総長の発言は,我々が申告義務を履行しないまま核研究実験を行なって来たことに対し 相当に強硬に叱責する内容を盛り込んでいる.特に,これまでわが政府が解明しなかった新たな事案として 金属ウラン150kgを生産し,その後 変動事項(訳註:?)を申告しなかったことを指摘している.IAEAは追加査察団を送るので積極的な協力と透明性を提供してくれとの要請すら 我々に対して行なった.今後のIAEAの圧迫が容易ならざるものであることを予告する箇所だ.
 実験が純粋に研究目的であり,後れてではあったが(訳註:IAEAの査察に対して,の意だろう)自発的に協力を行なっているので問題にはならないといった安易な対応を これまでわが当局が行なって来たことは否認し難いだろう.IAEAの査察義務違反にあたる行為があったことを知らなかったとしても問題だし,知っていながらうっかりしていたのなら なおさら大問題だ.今回の件は我々の原子力管理が如何に稚拙なレベルにあるかを省みる機会になったと思う.この際 核安全管理に対する画期的な認識転換と制度補完が必要だ.
 従って,エルバラダイ総長の発言に対し,わが当局者らが「20年前の出来事で 既に施設は無いのだから 問題となることは無い」とか,「こうした事が起きればごく当たり前に出て来る原則水準の発言」だとかいった反応を示したのは大変な誤りだった.「我々の意図は純粋だから信じてくれ」といった心情的な訴えを通して片付く事ではないと知るべきだ.来る11月初頭,次期IAEA理事会に追加査察の結果が報告されるとのことなので,政府は今からでも公式な免責判定を取り付けるべく外交力を結集してほしい.
● 原子力外交のレベルを上げねば ──ヘラルド経済 2004/09/15 12:12 (原文)
 韓国は,誰が何と言おうと原子力産業に関する限り先進国だ.我々の手で原発を設計・建設,安全に運転しており,주기기(訳註:「主機器」?)を自前で政策・供給はもちろん 中国およびアメリカに輸出すらしている.
 世界で4番目に多い19基の原発を稼動しており,特に原発運転技術に優れ,昨年は94%の利用率で世界最高を記録した.
 何より世界最高性能の固有モデル・韓国型標準軽水炉が自慢だ.
 国際原子力機構(IAEA)のモハメッド=エルバラダイ事務総長が,こうした韓国に対し「深刻な憂慮」を表明した.
 2000年の濃縮ウラン0.2g分離実験を含め,22年前の1982年の ごく少量の数mg抽出実験,80年代の金属ウラン生産など全6件の 安全措置協定違反の有無が問題だ.
 つい最近までIAEA模範国にして世界の原子力業界の代表的成功モデルだった韓国が,ある日突然「問題児」となってしまったわけだ.
 唐突に80年代の出来事などが同時多発的に持ち上がり,韓国をあたかも完全措置協定違反常習国であるかのようにクローズアップする意図が何なのか,釈然としない.
 4年前の濃縮ウラン分離実験の件も,我々の原子力技術水準に照らしてみれば 至極つまらぬ水準に過ぎない.
 呉明・科学技術部長官がIAEAの「深刻な憂慮表明」は「そういうことがあった時にはよく使う表現」だと釈明したが,見過ごせない事だ.
 我々の原子力技術に比べ,原子力外交のレベルが遠く及ばないのが問題だ.
 平和的目的の原子力産業のレベルを論じるなら,我々は既に 核燃料供給の為の濃縮技術と 使用済み核燃料処理の為の再処理技術を確保していなくてはならない当為性を持つ.
 いつまで過去の朴正熙政権時代の「ムクゲの花が咲きました」に象徴される核開発プログラムや 盧泰愚政権のウラン濃縮や再処理技術の自発的放棄宣言の足かせをはめられていなくてはならないのか.北核問題でわが政府が身動きがとりにくいのは理解できる.
 しかし日本を見よ.我々の原子力産業の完全な自立と発展の為,外交的努力を放棄してはならない.
 今回の件で 我々の原子力技術のマンパワーの士気低下が大いに憂慮される.

 所感.

 政府の不透明な対応を責める論調については,保守三大新聞も昨日の京郷新聞と大同小異のようです.一連の未申告が既にIAEAの俎上に乗り,安保理への付託については11月まで決定は見送り,という 大方の予想通りに事が進んでいる以上,政府に言うべきこととしては 何を措いても「洗いざらい吐いてしまって,安保理行きだけは何とか避けられるよう お目こぼしに預かる方向で努力せよ」ということでしょう.

 そうした中,最後の「ヘラルド経済」だけが異彩を放っています.
 のっけから「原子力技術先進国」自慢で始まり,居直りがひとしきり続いて,最後は「日本もやってるのに」で締めくくるという ある意味で天晴れな展開です.
 先日の「核のロマン主義」に続いて,「この辺が韓国人の本音かな」と思わせる逸品でありました.
by xrxkx | 2004-09-15 17:39 | ◆ 韓国核開発疑惑