【韓国核開発疑惑】そもそも本当に申告漏れだったのか?
 昨日の続きです.本当は昨日のうちに続けて掲載しておきたかったのですが,所用のため遅れてしまいました.予めお詫びしておきます.
 昨日のentryに対するコメント中で,「アク」さんから
国際政治を力と力の対決、交渉、取引という観点からとらえるなら、〈責めてみせねばならぬ〉という考えも出てくるでしょう。それは私の関心事ではありません。
というご回答を既に頂いておりますので,今回の「後半」で私が考えたいことを なおも氏にぶつけるのは いささか的外れの感が否めませんが,もともと2部作の予定で書き始めてしまった手前, self-consistencyを損なわない為にも書くべきことを書き切っておこうと思います.ご了承下さい.

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 今回の一連の実験について,韓国政府は
  • 核兵器開発とは全く無関係の 純粋に学問的好奇心による
  • 1回きりの実験であり,
  • 分離・抽出されたウランやプルトニウムは極微量であって,
  • IAEAの査察にも再三応じて来た
という主張を繰り返していますが,
  1. 今までに明らかにされている2度の「純粋に学問的好奇心による」実験について,その成果が学会誌やシンポジウムなどで発表されたという話を全く聞かないのはなぜか.単なる追実験だからなのか.だとしたら なぜ秘密裡に行なったのか.
  2. 82年のプルトニウムの件の場合,97年にもIAEAの査察を受け,98年にはIAEAからの確認要請を韓国政府は受けているにも拘らず,2003年の再度の査察まで韓国政府がきちんとした報告をした形跡が一切見られない以上,政府が単なる学術レベル以上の何事かを知っていながら隠蔽しようとしていたと見なさざるを得ないのではないか.
  3. 研究現場の長たる人物が「私の一存で許可した」「政府には知らせていない」と述べているが,実際にそんなことがあり得るのか.例えば日本の原研なり高エネ研なりの場合で,国際的な取り決めに違反しかねないレベルの実験を 文科・通産なり科技庁なりに申告せずに行なおうとしたら,実験に取り掛かる以前に研究予算すら取れないのではないか.
  4. 韓国が行なった実験は この2回だけなのか.他にもIAEAから査察や確認要請を受けている事例,あるいはIAEAが未だ把握していない実験が進められているのではないか.
など,依然多くの疑念の余地を残したままです.
 もっとも,既に始まっているIAEA理事会では,おそらく韓国の件は安保理に回されるには至らないだろうと私は見ています.それでも,今まで以上に透明性の高いチェック体制,特に韓国人まかせではなく外部からの監視の強化を 韓国が要求されるのは確実でしょう.
 事ここに到った以上,問題はもはや核兵器開発の意図の有無という次元を超え,韓国という国の政治的ならびに学術的な透明性と信用の問題となったように思えます.
 同様のことは
韓国は原子力に関しては、米国に首根っこを押さえられている。原子炉も核燃料も米国からの、あるいは米国の承認のもとでの輸入、あるいは日本企業との協力などに頼っている。アメリカとの原子力協定で、ウラン濃縮も再処理もしないことを約束している。2000年に行われたと報じられているウラン濃縮実験程度、すなわち実験室規模のもの、を短期に試行するするぐらいのことはできても、核兵器開発につながるような大規模開発は、IAEAに隠れて進めることなどとうていできない。米国との政治経済的なつながりを断つくらいの覚悟がなければできないことだ。それはするまい。
についても言えるでしょう.以前ご紹介した 今回の核開発疑惑に関する韓国メディアの論調に ぜひ一通り目を通して頂きたい.中央日報などは次のように述べています.
 今回の事件は,濃縮や再処理を行なえない状況を我々がどこまで受け入れねばならないのかという重大な課題を投げ掛けている.
 特に産業面で蒙っている損害くらいは補完し得るよう外交努力を傾けるべき時が来ていると思う.
 核燃料である低濃縮ウランの輸入に 毎年4000億ウォンを費やしている現状を,いつまで放置するのか.
 この記者が言うように,「核燃料の国産化」の必要性を説く声は 韓国国内にもつとに存在します.また今回発覚した一連の実験に関しても,韓国政府自身が「核燃料国産化を狙ったもの」と弁明している由.こちらの朝鮮日報のインタビュー記事中で 原研の所長自身が
韓国は1年に数千キログラムに及ぶ原子力発電用の濃縮ウランを輸入しています。このような国に住む原子力分野の科学者なら、ウランの濃縮実験をやってみたいと思うのは当然です。
と述べているのも その一環でしょう.
 仮に実験が本当に韓国側の主張通り「核燃料の国産化」を目指したものであったとしても,国際的な監視の目を誤魔化しながら実験を続けていた事実自体に変わりはありません.このことで韓国は今後も国際社会から少なからぬ疑念を受け続けることになるのは避け難いでしょう.

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 韓国自身の問題は この辺にして,今回の件が核拡散防止の動きに及ぼす影響の面に移りましょう.
6カ国協議で北朝鮮に核開発を断念させようとしている現在、このことが報道されたことの影響は非常に大きい。北に核を放棄させるには、大きな障害になるだろう。韓国の実験が、核拡散防止条約違反ではあったことは明白である。事実を明らかにし、それが核兵器開発を目指したものではなかったし、一回限りで中止され、今後このような実験を行うことはないと、国際社会が認定しないことには、北の核を止めろとは要求できないことになる。日本世論は、韓国に核開発意図があったなどと騒ぐのではなく、冷静に対応する必要があるのではないか。
 まず「事実を明らかにし、それが核兵器開発を目指したものではなかったし、一回限りで中止され、今後このような実験を行うことはないと、国際社会が認定しないことには、北の核を止めろとは要求できないことになる」のくだりについてですが,それは「北朝鮮に核開発放棄を迫る側の一員たるべく韓国政府が真面目に対応する」という前提のもとでのみ成立することだと私は見ます.最悪の場合──早い話が 韓国が北朝鮮とグルであった場合ですが──には この前提は当然成り立ちません.
 このことについては以前も触れました.上記のentry中で引用した「核のロマン主義」のようなコラムを, これだけの騒動のさなかに 三大新聞のひとつにポロッと載せてしまう,そうした韓国人のメンタリティ──それ以前に そうした小説や映画が好評を博するという,もはや強迫観念と呼んでよいほどの強国願望──が将来的にもたらすものを,氏はやや過小評価してはいないか.私が懸念するのは その点です.
 もっとも,記事A中で 氏も
今回の韓国の実験の意図は分からない。果たして核兵器開発の目的があったのか。そこまではないだろう。しかし、開発能力があることぐらいを誇示したかったのかもしれない。
韓国は原子力後進国であるし、米国からは、明らかに日本とは違う扱いを受けている。そのことを甘受しているが、日本と同等の技術保有国になりたいとの野望はあるのかもしれない。
と述べておいでですから,韓国国内にある そうした核大国願望の萌芽自体は 氏も十分認識しておいでの筈.それだけに「だったら 何故…」という感は拭えません.

 先般のキム・ソンイル氏殺害の折などを見ても,それまで大勢を占めていたはずの派兵反対論が一夜にして鳴りをひそめ,暫くの間 報復論へと輿論が大きく傾いたのは記憶に新しい(当時こちらで紹介しました).ああした 頭に血が上ると何を言い出すか判らぬ,自制というものの利かない社会の雰囲気についても同様です.彼らに示すべき「度量」の質・量も,そのことを考慮に入れた上で決めないといけない.
 仮に百歩譲って 原子力分野に従事する韓国の研究者ら自身には十分な思慮と自制が備わっていたとしても,左翼ノスタルジーと民族主義の奇妙な結合が生んだポピュリズムの台頭著しい昨今の韓国にあって,青瓦台を動かすのは彼ら研究者よりはむしろ「槿の花」に拍手喝采する大衆であることを,私たちは頭の隅に入れておく必要があるのではないでしょうか?

 以上,最後までお読みいただいたことに感謝の意を表して結びに代えさせていただきます.
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by xrxkx | 2004-09-13 20:14 | ◆ 韓国核開発疑惑